若返る新さっぽろ

 新さっぽろの街が若返ろうとしている。商業、宿泊、公共施設などが集積する「副都心」として栄えてきた厚別区だが、高齢化と人口減少を背景に年々その勢いを失いつつある。にぎわいを取り戻すため、医療と教育を核とする500億円の大規模再開発が本格化してきた。計画が生まれるいきさつとともに街の展望を探る。(経済産業部 武山勝宣、宮崎嵩大)

若返る新さっぽろ(上)医療・教育施設が核

2020年09月30日 12時00分

JR・地下鉄駅周辺で再開発

 JRで苫小牧方面から札幌方面に向かう道中の車窓。新札幌駅に着く直前、多くの大型クレーンが広大な敷地で稼働する光景が目に飛び込む。かつて11棟の老朽市営住宅が並んでいた厚別区の下野幌I団地跡が、病院3棟とメディカルビルから成る医療拠点へ変貌を遂げようとしている。一方、駅を挟んだ青少年科学館前のG団地跡では、大学と看護学校の新校舎が姿を現し始めた。

 「札幌副都心」として1970年代から開発が進んだ新さっぽろ地区だが、バブル崩壊後の長期景気低迷、また札幌駅地区開発や郊外型ショッピングセンターの増加などが加わり、発展の勢いは失われた。区内人口は2004年夏をピークに減少傾向が続く。かつて流入したファミリー世代も年を重ね、今の厚別区は市内で南区に次いで65歳以上の比率が高い。15年の国勢調査を基にした45年までの推計では、0-24歳の人数が市内で最少の区であり続ける。

 15年春、札幌市が「新さっぽろ駅周辺地区まちづくり計画」を策定したことで、再開発ののろしが上がった。下野幌団地の移転再編によって余剰地となったG、I団地と、札幌副都心開発公社が持つ周辺の駐車場を使って、都市機能の集積地を再構築する内容だ。

 計画策定前の13年、出店を画策していたのが、家具販売世界最大手、イケアの日本法人だった。当時の札幌市幹部は「最初は駅北側の駐車場に興味を示したが、敷地が狭いとI街区に目を向けていた」と明かす。結果、イケア側が経営戦略を見直したため道内1号店は立ち消えとなったが、G・I街区が小売業をはじめ、民間企業にとって活用ニーズがあることを関係者があらためて認識するきっかけとなった。

 敷地は合計すると5・5㏊。地下鉄付近でここまでの広さの開発を検討するケースはまれだ。17年に公募型でプロポーザルを募ったところ、数々の大手企業でつくるコンソーシアムが2者、名乗りを上げた。そして最優秀提案者に選ばれたのが、大和ハウス工業が率いるグループだ。

 I街区には新札幌整形外科病院、新さっぽろ脳神経外科病院、記念塔病院と大和ハウス工業、G街区には札幌学院大と学校法人滋慶学園の看護学校の参入が決まった。15年から5年間、札幌副都心開発公社の社長だった高橋稔氏は「既存商業店舗との将来にわたる共存共栄の可能性、産学連携、新たに核とする産業の創出などが評価されたのでは」と振り返る。

既存商業店舗と共存共栄も

 厚別区にとって、地域に活気を取り戻すことは積年の願いだ。再開発に先立つ16年には、公社とイオンモール、イオン北海道の3社が連携し、サンピアザ、デュオ、イオン新さっぽろ店、カテプリの4施設で大規模なリニューアルを実施。そのかいあって、平日夕方のフードコートは、学校帰りの高校生でにぎわうようになった。店内では、子育て世代向けの乳幼児品店、若者が利用しやすいリーズナブルな飲食店などがそろい、家族連れの客も目立つ。

 ただ、既存施設の改装効果が何年も続くわけではない。公社の川尻寿彦常務は「リニューアルから2年ほど過ぎるとテナントが少しずつ抜け始め、鮮度が落ちてきたのは否めない」と指摘する。

 再開発は個店の改装にとどまらず、街そのもののリニューアルだ。少子高齢化にあらがい、医療関係者や学生という「新顔」を受け入れ、新しい街に生まれ変われるか。

(北海道建設新聞2020年9月23日付2面より)


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