レールの彼方に 北海道新幹線開業5年

 北海道新幹線が3月26日で開業5周年を迎えた。利用者数を見れば初年度の2016年度をピークに毎年減少し、コロナ禍の20年度は前年度の3分の1に当たる1日平均1500人で推移するなど苦戦が続く。だが沿線各地域には開業をきっかけとした前向きな変化も出ている。新幹線が地域に何をもたらしたのか、現地取材から報告する。

(経済産業部・吉村慎司、武山勝宣、宮崎嵩大)

レールの彼方に 北海道新幹線開業5年(中)新幹線に依存しない

2021年04月07日 12時00分

好調続く「道の駅」 今や地域の中心「地元ブランド」

 「棚の商品がずいぶん減った。お客さんが増えてるね」。3月24日午後、北海道新幹線木古内駅に隣接する道の駅「みそぎの郷きこない」に立ち寄った納品業者のJA新はこだて木古内支店の女性職員が、吉川衆司センター長に笑顔で話し掛けた。

買い物客が絶えない道の駅「みそぎの郷きこない」

 人口3900人の町ながら、道の駅は平日の日中でも買い物客が途切れない。売店には道南産の生鮮品や加工食品、菓子、飲み物など約900アイテムが並ぶ。センター長自らがバイヤーとなって生産者を回り、毎週のように新商品を投入する。館内のパン屋やコロッケ店のリピーターも多い。新幹線開業5周年の沿線物産フェア初日だった前週土曜は、1日の来館者が2000人を超えた。

 施設出入り口にあるパン店「コッペん道土(どっと)」は、2016年12月に横浜市内に開いた2号店とともに、木古内発ブランドとして本州のファンを獲得中だ。近藤舞子社長は「新幹線利用者がファンになり、来道するたびに寄ってくれる人も増えた」と話す。自身が新幹線に乗ると、下げている袋のロゴを見た乗客から声を掛けられることもある。パン事業の売上高はコロナ禍に負けず5年間右肩上がりだ。

 「みそぎの郷」は新幹線開業に合わせて16年1月にオープン。延べ840m²と決して広くないものの、同年末までに57万人強の来館者を集めて話題を呼んだ。その後ブームが一服して3年目は48万人に減ったが、改装や商品拡大、インバウンド客の流入などでコロナ禍前の19年は51万人に盛り返した。その間、新幹線木古内駅の乗降者数は17年度の約4万9000人をピークに下がり続けた。現状では、新幹線ではなく道の駅が地域の中心と言っても過言ではない。

 みそぎの郷開業から約2年後、新函館北斗駅から車で5分弱の国道5号沿いに、新たな道の駅「なないろ・ななえ」が誕生した。特徴は地元七飯町の業者が協力し、ガラナ味のソフトクリームを筆頭にカレー、デザイン雑貨など、ここでしか買えない商品をそろえたことだ。

 駒ケ岳・大沼地区と函館の間という立地の良さも手伝い、来館者はわずか1年で100万人を超えた。19年春には隣接地で男爵倶楽部(本社・函館)が運営するレストラン付きのラウンジ施設「THE DANSHAKU LOUNGE」が開業。近隣のハンバーガー店ラッキーピエロなどと商業エリアを形作る。松金修一支配人は「当施設は地元客が6割以上で、インバウンド頼みの施設に比べればコロナ禍のダメージは小さい。5月には累計300万人を達成できそう」という。

 至近距離に新幹線駅と函館新道の七飯藤城ICがある道の駅にとって、28日に函館新外環状道路空港道路の赤川IC―函館空港IC間が開通したのは明るいニュースだ。航空と新幹線のアクセスが改善し、前を通る車が増えることも予想できる。

 七飯町議会議員でもある北海道商工会青年部連合会の中川友規会長は「利用者数が見込みを下回っているからと新幹線を否定する人もいるが、今地域で動いているさまざまな開発案件はどれも新幹線開業が大本」と指摘する。新幹線の存在を生かして地元経済人が行動してこそ、地域の発展が見えてくる。

(北海道建設新聞2021年3月31日付2面より)


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