さほどヒットはしなかったが、ロックミュージシャン忌野清志郎さんの歌に「サラリーマン」(1994年)と題する一曲があった。テレビドラマ『ボクの就職』(TBS系)の主題歌に使われていたためご存じの方もいよう
▼歌い出しはこうだった。「サラリーマンのドラマ 君に見せてあげたい 映画のように すぐには終らない 遠く 遠く 続くこのドラマ」。地道に働く人への敬意が感じられる歌詞である。第一生命保険が全国の幼児と児童を対象に毎年実施している「大人になったらなりたいもの」調査の19年版が先頃発表になった。今回は順位もさることながら他にも気になる点があった。調査が始まった30年前との違いである。順位は変われど多くの職業が今も名前を残している中、サラリーマンだけが男の子の「なりたいもの」から消えているのだ
▼89年の第1回で9位、第2回で10位、そして第3回で9位に入ったきり、後は現在までベスト10に顔を出していない。どこへ行ってしまったのか。選択項目から削除したのかもしれないが、いずれにせよ人気がなくなったことに変わりはあるまい。第3回の91年といえば、バブル経済が崩壊した年だ。同時に就職氷河期とリストラの大嵐が始まり、サラリーマンを気楽な稼業とみる人は一気に減った。そんな世情が子どもに影響を与えないわけがない
▼先の調査ではサラリーマンと入れ替わるように大工と食べ物屋さんが現れ、現在に至っている。手に職をとの思いかもしれない。さてコロナ後の来年、子どもたちはどんな仕事を選ぶのだろう。