最近乗ったJRの電車内に見たことのない広告が掲示されていた。何だろうと思い近くに寄ってよく見ると、のどかな田園風景を切り取った写真の横に「ATSUMA LOVERS(アツマラバーズ)」の文字が並んでいる
▼昨年9月6日、地震に襲われ未曽有の被害を受けた厚真町が、町に関わる全ての人をそう呼び「たがいに寄り添いながら明日の厚真町をつくっていきたい」とメッセージを伝えるものだった。厚真町を愛する人々に、写真を添えて「フェイスブック」などSNSに投稿してもらう取り組みは以前から行われていた。そこにあの胆振東部地震である。土砂崩れで36人もの方が犠牲になり、被害家屋は1000棟以上に及んだ
▼町民が現実を受け入れられず失意に沈んだのも当然だろう。しかし震災後、世界中からたくさんの励ましが寄せられ、人と人とのつながりの大切さを痛感。そこで町は「ATSUMA LOVERS」のシンボルマークを作り、あらためて発信することにしたそうだ。阪神淡路、東日本、熊本―。震災を経験した人は必ずこう訴える。「記憶を風化させてはいけない」。忘れ去られる悲しみもあろう。ただ、一番伝えたいのは「天災は忘れたころにやってくる」現実だろう。地震は今後も間違いなく起こる
▼「ATSUMA LOVERS」には現地に行った人ばかりでなく、気に掛けただけの人でも投稿できる。胆振東部に限らず、過去の震災の風化に歯止めをかける良い機会になるのでないか。このお互いを思う「LOVERS」の動きが全国に広がるといい。