▼落語では決まった時期になると、貧乏長屋の住民たちのところに必ず顔を出す招かれざる客が登場する。お分かりとは思うが、借金取りである。とはいえそんな職業があるわけもなく、時に大家だったり仕入れ先だったり、酒屋だったりする訳だが。「掛け取り漫才」という噺では、全く支払う気のない亭主が借金取りたちを趣味の話に誘導し、上機嫌にして次々と帰してしまう。なかなか才に長けている。
▼とはいえあまり来なくなると、「たまに借金取りの顔を見ないと調子が出ない」なんて、かえって気になったりもするらしい。ところで、ことしは台風の襲来も随分と少ないようだ。何せ昨年は8月末時点で既に16個も発生していたのに、今回はまだ台風7号なのである。もっともこちらは取り立てでなくいらぬ暴風雨をもたらすもの。ひとたび猛威を振るえば被害や影響が出ること必至だ。顔を見ないに越したことはないが異常気象が続く昨今、少な過ぎるのも妙に気掛かりである。
▼台風7号は温帯低気圧に変わっても、きょういっぱい厳重な警戒が必要だ。道東と道南の太平洋側が勢力の中心とはいえ、大気が不安定なため道内全域で突風や集中豪雨、落雷、土砂災害などの懸念がある。特に屋外で従事する人は、くれぐれも油断なきよう願いたい。招かれざる客だが渇水に苦しむ関東地方にとっては、水がめとなるダムへの恵みの雨と期待されていたと聞く。落語の亭主ではないがうまく調子を合わせて被害を小さく抑え、早々にお帰りいただくのが一番だろう。