走り出したSDGs~建設業が取り組む意味

 昨今、かけがえのない地球環境を守り多様性と包摂性のある社会の実現に向け、SDGs(持続可能な開発目標)への実現に取り組む企業が増えている。道のSDGs推進ネットワークの登録団体463社・団体のうち、建設業は60社近くあるが、まだ多くに認知されているとは言えない。建設業がSDGsに着手する意義について報告するとともに、道内で先進的に取り組む企業を紹介する。(6回連載します)

走り出したSDGs~建設業が取り組む意味(3)福地建装

2020年02月05日 16時00分

将来の商機獲得へ宣言 全国で実績「ファース工法」

 福地建装(本社・北斗、福地智社長)は、道内建設業の中でもいち早くSDGsに取り組み始めた企業だ。「ファースの家」と銘打つ、高気密・高断熱構造で温度や湿度、空気を快適に制御する住宅を展開する工務店。福地脩悦会長は「将来的には、SDGsを宣言していなければビジネスチャンスを逃す時代になるのでは」と提言している。

 同社は1967年の創業。ファース工法を88年に開発した。現在はフランチャイズ方式で事業化をしており、北は北海道、南は沖縄まで全国各地に189社の加盟店が存在する。これまでに全国で5230棟の施工実績がある。

福地会長とガラス複層化の実験棟。クリーンエネルギーの住宅づくりで持続可能な社会形成に貢献する

 福地会長は2015年に国連がSDGsを採択した当時にその内容をいち早く確認。「飢餓や貧困などの項目があり一見関係ないように思われたが、読み進めていくうち、健康や教育、クリーンエネルギーなど、当社の取り組みに合致する内容が目に入った」。そして何よりも、「誰一人として取り残さない社会の形成という理念が素晴らしいと思い、16年にSDGs宣言した」という。

 同社の取り組みはSDGsの17の目標のうち、「健康と福祉」「質の高い教育」「ジェンダー平等」「クリーンエネルギー」「働きがいと経済成長」「技術革新」「住み続けられるまちづくり」「つくる責任、つかう責任」「気候変動対策」「パートナーシップ」の10項目に合致している。

 福地会長は、「私たち建設業者は、〝造って終わり〟ではいけない。住む人のことを考え、建物や家を育てていく認識が必要だ」と、目標に掲げた「つくる責任」を特に強調する。その実践として、フランチャイズの加盟店各社には、住宅の着工時に施主とその家族、工事に関わる全ての関係者が一堂に会する場を設けるよう指導。顔の見える関係を築くことでその後の綿密なアフターケアにつなげている。

 そして、「質の高い教育」の重要性も指摘する。こうした着工時のイベント開催などノウハウがない加盟店もいることから、工務店研修会や着工時研修会を開催。マニュアルや案内状のひな形など、必要書類一式も提供している。「上からの目線ではなく、同じ目線に立つことが教育のポイント。これを心掛ければ、目標の一つであるパートナーシップにもつながっていく」と話している。

 現在は技術革新にも取り組み、トリプルガラスをさらに複層化することで断熱材より断熱性の高い断熱ガラス壁の研究を進めている。既にグラスウール150㍉よりも高い断熱性を発揮できることを立証している。この技術に関しては特許申請を出願済みだという。

 SDGsの浸透に課題があることについては、SDGsを公約に盛り込んで当選した北斗市長の池田達雄氏のように「行政が率先する姿勢を見せるのも必要では」との見解を示す。また、企業側も早めに宣言することで、外務省ホームページに載るなどPR効果も得られるとし、「地域に選ばれる企業になるには間違いなく必要な取り組みだ」と呼び掛ける。

(北海道建設新聞2020年1月20日付1面より)


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(この連載は、建設・行政部の大坂力、函館支社の鳴海太輔、網走支局の出崎涼、苫小牧支社の乙部真貴子が担当しました)

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