そのときに備える 自然災害の記憶と教訓

その時に備える 自然災害の記憶と教訓(5)

2017年10月10日 17時16分

避難行動へ意識底上げ
 札幌で豪雨災契機に対策改善

真駒内御料札幌線

教訓となった「9・11」。写真は56水害以来の大雨で被災した真駒内御料札幌線

 減災対策の展開で懸念されるのが、大きな災害経験の風化や自然災害の少なさからくる、地域に広がる安心感だ。仕組みが整備され、迫る危険が伝達されても、想定を上回る自然の猛威が大都市を襲う「その時」、避難行動が伴わないと命は守れない。危機と行動を結び付ける防災意識の底上げが求められている。

 災害経験少なく課題が浮き彫り

 人口190万人を抱える大都市・札幌の災害対応で、多くの教訓を残したのが2014年9月11日の集中豪雨だ。

 この時、南区を中心に1時間50㍉、場所により24時間で200㍉を超える記録的な大雨に見舞われ、市内には土砂災害や道路崩壊、河川氾濫、建物浸水の被害が発生した。

 1981年8月の「56水害」以来の豪雨に札幌市は、33年ぶりに災害対策本部を設置。道内初の大雨特別警報発令を受け、未明から明け方にかけ土砂災害、洪水警戒のため約39万世帯78万人に避難勧告を発令した。

 それまでの災害経験の少なさもあり一部で避難所開設の遅れ、情報提供不足、職員参集の遅れなど対応の課題が浮き彫りになった。

 札幌市の中塚宏隆危機管理対策室長は「9・11は大きな教訓」と振り返る。この経験は検証を経て、避難発令方法の見直しや避難所運営の改善など、災害対応を向上させる契機となった。

 町内会で防災計画 情報の発信も工夫

 「9・11」では幸いに人的被害は発生しなかったが、約1000人にとどまった避難者数は、情報伝達や避難誘導の難しさを印象付けた。

 発令判断の精度や伝達方法は改善が進められているが、「避難勧告や指示が伝わっても逃げてもらえるのか」―という懸念は残る。

 大都市を守る能力の高い治水基盤が災害を遠ざけ、経験を伴った災害の記憶や防災意識が薄れる中で、中塚室長は「どう動いてもらうか考えることが大切。行動につながる防災意識の底上げが重要」と指摘する。

 対応に向け市は連合町内会、単位町内会で防災計画を策定するモデル的な取り組みに乗り出した。住民が身近な危険を知り計画を立て、避難につながる実効性ある計画づくりと意識向上を狙う。

 来年度以降は土砂災害や浸水災害といった災害別や、ビル単位、マンション単位モデル構築を見込み、将来的なソフト施策の柱にする考えだ。

 緊急速報メール配信など多様化を図ってきた情報発信は工夫が続く。

 9月にはスマートフォンに情報を集約して発信する防災アプリ「そなえ」の提供を開始した。情報一元化で日頃から防災を意識してもらうほか、衛星と地図の活用で視覚的に避難所へ誘導する機能は、出先での災害遭遇や増加する外国人旅行客にも有効と考えている。

 北朝鮮が断行し、本道上空を通過させたミサイル発射という「危機」は、携帯電話を持たない人にどうやって緊急伝達するかという防災の難しさを再提起した。

 中塚室長は「一歩進めては課題に気付く。簡単ではないが、一つ一つ解決し積み上げていく」と先を見据える。「備え」に終わりはない。災害の記憶と経験を受け継ぎながら、こうした絶え間ない改善の蓄積が明日の減災につながるはずだ。
       (おわり)
 (この連載は、石橋明浩、小野将広、大坂力、山本浩之、本田みなみが担当しました)

2017年10月7日掲載


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