建設業の国際化深まる 岸田組は実習経験者を受け入れ
4月1日施行の改正入管法により、新たに「特定技能」外国人の受け入れ制度が始まった。建設業は型枠、鉄筋、屋根ふき、左官、内装仕上げ、コンクリート圧送、建設機械施工、トンネル推進工、土工、電気通信、鉄筋継ぎ手の11職種で雇用することができる。
本道では、岸田組(本社・旭川)の技能実習生だったベトナム人男性のグェン・チョン・ナムさん(37)とグェン・コック・クアンさん(26)が、10月末から型枠大工として同社の現場で働き始めた。2人が持つ資格は「特定技能1号」で、最長5年の在留が認められる。建設業としては道内初とみられる。
両者は実習期間を終えて昨年から今春にかけて帰国したものの、ベトナムの建設現場は日本との違いが大きく、技術を生かす機会がなかったという。岸田組は仕事を覚えた2人の再雇用を望んでいて、新制度での受け入れが実現した。
前例がないことも影響し、手続き完了までには5カ月近くを要した。同社土木部の長谷川義晃永山事業所長は、「真面目な2人が戻ってきてありがたい。技能実習の場合、やっていい作業がかなり限定されるが、特定技能なら日本人の正社員と同じように働ける。今後いろいろな経験を積んでもらいたい」と話す。
外国人が特定技能の資格を得るには、専門分野の技能試験と日本語試験に通らなければならない。現在実習生として働く人なら日本で受験し、合格すれば帰国しなくても在留資格を切り替えて滞在を続けられる。日本政府は、送り出し国で建設分野の受験ができるように各国と協議中だ。
法務省のまとめによると、建設分野で特定技能1号の在留資格を取得した外国人は11月11日までに33人。資格を取得したのは、全て技能実習や外国人建設就労者から特定技能に移行した外国人で、内訳は再入国14人、在留資格変更19人となっている。
外国人受け入れを後押しする建設技能人材機構(JAC、本部・東京)の江口大暁管理部長は、専門工事業者向けの講習会で「長く働いてほしい技能実習生がいれば会社の意向を早めに伝えて〝相思相愛〟の関係を築き、申請の所要時間を逆算して手続きを進めるとよい」と、人柄をよく知る自社の実習生の受け入れを勧めた。その上で、「日本語試験ではN4以上のレベルが求められる」と、一定の語学力が必要であることを強調する。
北海道労働局によれば、道内で外国人を雇っている建設業の事業所は10月末時点で413カ所あり、労働者数は1404人。前年同月に比べて事業所数で43%増、人数は49%増という大幅な伸びを見せている。特定技能制度が始まり、建設業の国際化はさらに深まりそうだ。
(北海道建設新聞2019年12月17日付1面より)