旅客ビル建設や就航路線増計画 官民連携し本道成長の機会に
新千歳、旭川、函館、女満別、稚内、釧路、帯広7空港の一括民営化に向けた30年間の設備投資は約4290億円。北海道エアポートが8月に公表した提案は、道内の交通ネットワークを成長させる積極的な計画だった。各種ビルの建設や就航路線の増加で観光客はさらに伸びるとみられる。一方、各空港からの2次交通、新千歳一極集中の改善は必須。関係者が連携して課題解決に望むことが求められる。
北海道エアポートは、北海道空港、三菱地所、東急、日本政策投資銀行、北洋銀行、北海道銀行、北海道電力、サンケイビル、日本航空、ANAホールディングス、三井不動産、三菱商事、岩田地崎建設、道新サービスセンター、電通、大成コンセッション、損害保険ジャパン日本興亜の17社が出資した特別目的会社(SPC)。
将来像として「マルチ・ツーリズムゲートウェイ」を掲げる。10年間で空港間を行き来できるよう道内で航空ネットワークを形成し、観光需要を喚起。7空港全てで国際線の受け入れ環境を整え、増えるインバウンドに対応する。30年後には、7空港の路線数を60路線から142路線に、旅客数を2846万人から4584万人にする目標を定めた。
投資額のうち7割に当たる約2950億円を新千歳に充て、道内空港をけん引。国内・国際線供用の旅客ビルを新設するほか、本道全域の魅力を発信する北海道ショーケースに改修。拠点機能を強化する。
残る6空港にも約13040億円を投資する。旭川では山岳・スノーリゾート、函館では北海道新幹線というように地域の特長を生かした戦略を策定。利用しやすいLCC(格安航空会社)を誘致し、観光やビジネスの両面で地方にも人を呼び込む。
10月31日に実施契約を締結した。2020年1月15日から7空港一体のビル経営を始めるほか、1月中には空港所在自治体などと地域振興に向け連携を図るパートナーシップ協定を結ぶ。
民営化で、SPCは単に空港を運営するのではなく、空港のにぎわいによってどれだけ地域を活性化できるかが求められる。豊富な食や自然にあふれる本道の魅力に気付いてもらうには、観光客にとって便利な移動手段が欠かせない。鉄道やバス、レンタカー、フェリーなど交通事業者と手を取り合い、地域の実情に見合った策を見いだす必要がある。
また、人口減少や少子高齢化が進む自治体には、現実と向き合いながら、民営化をチャンスと捉えて施策を打ち出す前向きな姿勢が期待される。
SPCの蒲生猛社長は、開発局主催の空港技術研究会議で「事業者だけでなく国や道、市町村と連合体でやっていかなければ」と連携を強調。官民が力を合わせれば、民営化が本道の成長を促す起爆剤となる可能性が広がる。
(北海道建設新聞2019年12月18日付1面より)