経済停滞も建設業は安定 民間中心に先行き不透明感
1月下旬に道内で初めて陽性者が確認されて以降、「新型コロナウイルス」という言葉を聞かない日はなかった。まさにコロナに侵された1年で、東京五輪・パラリンピックをはじめ大小さまざまなイベントが延期や中止に追い込まれ、インバウンドは落ち込み、何よりも生活自体、社会の仕組み自体が激変した。
感染拡大で2月28日には道独自の緊急事態宣言が発せられ、4月には全国の緊急事態宣言が出されたことで経済活動は停滞。4-6月期の国内総生産(GDP)は、年率換算で戦後最悪の下落幅を記録し、その後も回復の動きは鈍い。
道経済部が行った10-12月期経営者意識調査の産業別では、サービス業や運輸業で売り上げの悪化が顕著になった。しかし、その中で建設業は7.2%減に踏みとどまり〝安定〟が際立った。
北海道建設新聞社がまとめたゼネコン道内受注高ランキングで、第1四半期(4-6月)の上位50社の受注総額は2433億円を記録。第1四半期としては、集計方法を暦年から年度に変更した07年度以降で最高額になった。内訳を見ても、官庁は土木と建築がともに過去最高で、民間建築は2018年度に次ぐ2番目の金額だった。
官庁土木は、防災・減災、国土強靱化に関わる臨時・特別措置を含めた北海道開発事業費が前年度並みに確保できた点、官庁建築は、設計・建設に約390億円を投じる札幌市の駒岡清掃工場更新が発注された点が大きい。一方、民間建築はスーパーを含む道外大手ゼネコンが札幌圏の物流施設やオフィスビル、再開発事業などを受注。感染症の流行前に商談がまとまっていた物件が大半で、数字上に影響が表れることはなかった。
第2四半期末(4-9月)になっても上位50社の受注総額は3635億円と前年度同期を1割上回った。ただ、民間建築は4.5%減と若干の陰り。各社の主な受注案件を見てもホテル関係の案件を挙げる業者はほとんどなく、観光業への設備投資が見送られている状況を暗示している。
建設業の道内金融機関からの借り入れは増加傾向で、道が創設した「新型コロナウイルス感染症対応資金」など実質無利子や低利の融資制度を活用して手元資金の確保に動いている現状だ。
このように民間建築を中心に先行きは不透明感が増していて、全体の工事のパイが減少し企業間の価格競争激化に発展する懸念が渦巻いている。
政府は「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」として事業費15兆円を措置する方針を示した。感染拡大、緊急事態宣言の下であっても推進された建設工事。地域の安全や雇用を守り、経済を支える建設事業の重要性がコロナ禍において明白になった。建設業者は今後、ポストコロナも見据えた社会資本整備を着実に進めなくてはならず、引き続き大きな使命を担うことになる。
(北海道建設新聞2020年12月15日付1面より)