日高が来春、留萌でも協議 鉄道跡 地域で活用へ
JR北海道の不採算路線廃止に関わる出来事が相次いだ。まず4月、札沼線北海道医療大学-新十津川間が、コロナ禍の影響で3週間前倒しで廃止された。10月には、地元と協議を続けていた日高線の鵡川-様似間について来春廃止で正式合意。留萌線深川-留萌間でも沿線自治体との接触が始まった。
日高線は実に5年越しの決着となった。10月23日、日高管内首長7人の臨時会議が日高町で開かれた。2021年4月1日の鵡川-様似間廃止と、バス転換に向けた覚書をJRと締結。これまでの議論をリードした日高町村会長の坂下一幸様似町長は「町村会一丸となって今日に至った。真に便利な交通体系の始まり」と前向きに語った。
高波が鉄路を襲ったのは15年1月。護岸が壊れて不通となったところに、同年9月の台風が追い打ちをかけた。路線復旧に向け、町村会は17年からJRと協議を開始。「住民の足を早期に確保する」(坂下町長)現実路線から、19年11月にバス転換の姿勢を固めた。
JRは今後18年間のバス運行費、地域振興費として約25億円を拠出する。町村会は資金を一括管理する団体を設立し、沿線で活用する。
地域では今、廃線後の鉄道施設に関する議論が進む。新ひだか町の静内駅はバスターミナルとしての転用を計画。様似、浦河、日高でも交通拠点を造る構想がある。それぞれの整備にJRの拠出金が使われる見込みだ。新冠町では道の駅拡張に当たり、背後の線路撤去を視野に入れている。
留萌線の沿線自治体は調整のさなかにある。8月18日、留萌市で開かれたJR留萌本線沿線自治体会議(留萌市、深川市、秩父別町、沼田町)で、沼田-留萌間の廃線を認め、通勤・通学利用が多い深川-沼田間の存続を求める案が浮上した。
地元線区の廃止を受け入れるのが留萌市だ。背景には、廃線後を見据えた新たなまちづくり構想がある。一方で深川、沼田は全区間存続を主張。足並みがそろわないまま、まず部分存続の可能性を探ってJRと話すことを決めた。
10月1日、同会議は沼田町でJRの担当者と向き合った。だがJR側は全線廃線の姿勢を崩さない。部分存続案には「赤字補填がないと厳しい。3億円程度の地元負担が必要」と説明。自治体側は調査するとして持ち帰った。関係者間のやりとりが今も続く。
廃止方針線区で残るのは根室線富良野-新得間だが、まだ協議の入り口は見えていない。コロナ禍で過去最大の経営危機に苦しむJRから見れば、路線問題は待ったなし。島田修社長は12月9日の記者会見でことしの動きを「大きな前進」とした上で、「来年以降も問題を先送りすることなく対処したい」と付け加えた。
(北海道建設新聞2020年12月21日付1面より)