際立つヒト・モノ・カネの流入
KIECEの一角、千歳市。JR長都駅から北に1㌔ほどの住宅街、みどり台地区から、大型建築物の槌(つち)音が聞こえてくる。庭付きの新しい戸建てが連なるすぐ横で、来春の完工を待つのは小学校だ。約20年前に始まった宅地開発をきっかけに地区や周辺の人口が増え、既存の小学校だけでは児童の受け入れが難しくなったことから市が新設を決めた。
千歳市民のうち、19歳以下の割合はことし1月1日時点で18.5%。全道の14.9%、札幌の15.2%を大きく上回る。ほかのKIECE4市も17・6―16.1%と、少子高齢化が進む本道にあって札幌より高い水準を保つ。
札幌近郊については、北広島市の北海道ボールパークFビレッジ建設など特定の大型開発ばかりに話題が集まりがち。しかしデータ分析を通して地域を俯瞰(ふかん)すると、5市がそれぞれに発展し、広域の成長エリアを形作っている実態が浮かび上がる。
まず人口だ。KIECE5市を合わせた人口はことし1月1日時点で40万4200人。単独でこれを上回る道内の市は札幌しかない。石狩以外の各振興局エリアと比べても、上川管内全体の48万人強に続く規模となる。
増減は10年前を起点にすれば1000人強の減少となるが、5年前からは1100人増えた。全道に目をやれば10年で27万人、直近5年で17万人強の減少。違いは鮮明だ。
世帯数は一貫して伸び続けている。ことしの年初は前年より2300世帯多い19万9700世帯となり、20万台が目前に迫る。10年前から見ると約1万世帯の増加。世帯は住宅購入・契約の基本単位になるほか、食品や日用品の買い物といった経済活動の基盤でもある。
住宅や事業所のニーズが高まり、盛んになるのが不動産取引だ。国土交通省によると5市の2020年の土地売買件数は15年比で12%増の4805件。9月に道が発表した7月時点の基準地価調査では、住宅、商業地ともに上昇率トップ10の大半をKIECEが占めた。
現に、札幌市内で戸建て向け土地仲介などを手掛ける不動産業者の1人は、ことしに入って江別の土地を扱い始めたと明かす。「札幌は土地の出物が少ない。白石や厚別区在住の人なら、中心部との距離面で環境は大きく変わらないという意識が強い」ためという。
税収も順調だ。20年度の各市決算資料から市税収入を合算すると522億円強で、10年度より7.4%増えている。固定資産税の徴収猶予といったコロナ禍対策が影響し、19年度比では1.5%減だが、それでも千歳以外の4市はプラスだった。
税収増の背景には堅調な企業立地がある。恵庭市経済部の藤井昌人商工労働課長は「空港や港、高速道路、札幌へのアクセスの良さを魅力として、食品系企業を中心に問い合わせが増えている」と語る。恵庭や千歳は、降雪量が比較的少ないという強みもありそうだ。
道内トップクラスの成長地帯として台頭するKIECE。連載第2回以降は、企業立地、住宅など個々の分野で今何が起きているのかを探る。
(北海道建設新聞2021年10月4日付1面より)