コラム「透視図」 - 北海道建設新聞社 - e-kensin - Page 312

インフルエンザ

2016年11月23日 09時40分

 先週末の暖気にすっかり気を緩めていたためか、おとといあたりからの急激な冷え込みに体がついていかない

 ▼重ね着の枚数を増やしてはみたものの、着膨れすればするほど寒さに弱くなる気がするのはどうしてか。「終りなきものこの世にはなし寒波くる」村山砂田男。札幌管区気象台によると向こう1週間は、その寒波の影響で雪の降る日が続くらしい。道北はもう雪景色だが、いよいよ本道全域で冬本番である。寒さが一気に厳しさを増す冬のとば口は、気候の変化に心身がついていかず体調を崩しがちだ。そこで心配なのがインフルエンザである。国立感染症研究所も、早ければ今週にも全国的な流行期に入ると注意を呼び掛けていた

 ▼最新の集計で1医療機関当たりの患者数が全国で0・84人と、流行期入りの目安となる1人に迫っているからだが、この人数は例年に比べ2―3週間早いという。本道は既に1・92人で全国に先駆け注意報が出ている。こんなところまで流行に敏感でなくてもいいのだが。日本気象協会もきのう、「風邪ひき前線」を発表した。こちらも本道通過の真っ最中だ。ところでインフルエンザの予防は乾燥に注目すべきという。湿度が低いとウイルス生存率が上がるためで、うがいや飲料で喉を潤すのが有効な対策だそう。もちろん手洗いも必須である

 ▼きのうは朝早くから福島県沖を震源とする地震と津波に驚かされた。寒冷期の地震の怖さを再認識した人も多かったのではないか。もし寒波と高熱と地震が同時に来たら―。感染予防も災害への大事な備えである。


JR北海道の路線危機

2016年11月22日 09時50分

 岡山県出身の小説家で詩人の木山捷平に「旅吟」の詩があるのをご存じだろうか。60すぎの男が汽車で北海道を旅しながら、窓外の風景を眺めている

 ▼時節は5月。桜は満開なのに、みぞれのような冷たい雨が降り続く。海岸沿いの漁師の家の群落は海を向いて立ち、見えるのは裏ばかり。「もうとつくに還暦をすぎた男が乗ってゐる汽車は 雨の噴火湾を大迂回して網走へ行くのである」。目的地はまだだいぶ遠い。1966年、捷平が62歳のころ行った北海道旅行に想を得て書いたという。それから50年たった今だが、近い将来、この詩の味わいが薄れてしまう日が来るかもしれない。JR北海道が先週発表した維持困難路線に石北線新旭川―網走も含まれているからである

 ▼廃線となれば、噴火湾から網走までつながっていた鉄路は過去の記憶と記録の中にしか存在しなくなる。ところで維持困難路線は全体で10路線13区間、道内営業区間の約半分に当たる1237・2㌔もあるという。事態は相当に深刻だ。JR北海道には責められて仕方ない部分も多いが、冷静に見るべきは鉄道を必要とする利用者が減少している事実だろう。貨物はまだ鉄道に強みがあるものの、人の移動は車やバス、飛行機に多くが流れている

 ▼本道は広い。事業者間には競争もあろうが、効率的な交通網をつくるには全ての地域と手段を組み合わせて最適解を見いだす必要がある。不便を強いられるのはいつも高齢者や子どもら交通弱者だが、切り捨てでなくいかに全体として充実させるか。関係者は知恵を絞ってほしい。


新語・流行語2016

2016年11月21日 09時29分

 ことしも気が付いたら残りあと1カ月余り。どうしてこう歳を重ねるごとに1年が速くなっていくのだろう。もしかすると地球の公転が早まっているのでないか。そんな感じさえするほど

 ▼ところがことしの初めに起こった出来事は既に忘却の霧の中に没しかけているときた。おととい発表されたユーキャン「新語・流行語大賞2016」にノミネートされた30語を見ていて、そんなことを痛感させられたわけである。例えば「パナマ文書」。公平でないだなんだとあれだけ騒いだのに、正直言ってもう忘れかけていた。「新しい判断」もピンと来ず。消費税率アップ延期の理由と聞いて、ああそうだったと。片や「センテンススプリング」「文春砲」「ゲス不倫」は『週刊文春』が1年を通してスクープを切らさなかっただけに、頭を離れようがなかった

 ▼ところで広島カープの「神ってる」は記憶に新しいが、道産子としては日本一になった日ハムの〈爆ぜる〉がないのが少し寂しい。〈北海道新幹線〉もだが。「EU離脱」「トランプ現象」には「びっくりぽん」だったが東京都も負けてない。「アスリートファースト」「都民ファースト」「盛り土」「レガシー」と、小池新知事の周りで話題が絶えなかった。やや〈盛り土ファースト〉気味なところは気になったが

 ▼残り1カ月余りでもまだ流行語は生まれそうだ。来月15日には日本で安倍首相とプーチンロシア大統領の会談もある。交渉進展なら遠からず、〈北方領土返還〉で「聖地巡礼」しながら「ポケモンGO」を楽しめる日が来るかも。


叔父という存在

2016年11月18日 10時00分

 明治維新で精神的支柱の役割を果たした幕末の思想家吉田松陰は、幼少のころ叔父玉木文之進に厳しく鍛えられたという

 ▼玉木という人物は松下村塾の創設者で、幼くして山鹿流兵学師範の吉田家当主となった松陰の後見役でもあった。もともと優れた知力体力を備えていた松陰だったが、玉木の薫陶を受けて才能が花開いたそうだ。子育てでは時に叔父が実の親以上にその子の人生に影響を与えることがあるらしい。人生を左右する一大事といえば、職業選択もその一つだろう。やはり叔父の存在が建設業界に飛び込むきっかけとなった技術者たちの話を、少し前、本紙に載った「私たちの主張―未来を創造する建設業―」で読んだ。国土交通大臣賞を獲得した2作品である

 ▼佐藤工業(福島県)の吉成健さんは、幼いころ叔父とよく一緒に出掛けたそうだ。自らが施工に関わった場所に行くと誇らしげに紹介する叔父は、吉成さんにとって憧れの「ヒーロー」。いつか自分もと考えるようになっていったという。加賀建設(石川県)の寺田智子さんの叔父はゼネコンで長年現場監督を務めていた。「大勢の人が一緒に頑張ったからこそ今、地下鉄が走りよる」。目を輝かせて建設の喜びや誇りを語るのが常だったそう

 ▼二人は今建設の道を歩み、吉成さんは東日本大震災の災害復旧で人々の生活を取り戻すのに奮闘。寺田さんは現場でチームプレーの奥深さに魅せられ「この業界は本当にカッコイイ」と胸を躍らせている。きょうは「土木の日」。叔父さんはじめ多くのヒーローたちに思いをはせたい。


福島の少年の手記

2016年11月17日 10時28分

 題名は後にするが、竹中郁にこんな詩がある。「僕は眠つてゐる。誰かと一緒に、一つの寝床で。 かしてくれるやさしい手枕。僕はその手ばかりを愛撫する。それ以外には胴もない、顔もない、髪もない、 君はこの人を誰だと思ふ。当ててみたまへ。」

 ▼さて、「この人」が誰だか当てることができただろうか。答えは「絶望」。詩の題名でもある。夢や希望は失われ、絶望だけが傍らに寄り添っていたのだろう。東京電力福島第一原発の避難で福島から横浜の小学校に転校し、ひどいいじめを受けるようになった少年もやはり絶望を感じていたようだ。おととい、今は中1になった少年が弁護士を通じ手記を公表した。目にした人もいようが、胸が詰まる内容である

 ▼放射能を材料にばい菌扱いされ、蹴られ殴られ、「ばいしょう金あるだろ」と大金まで脅し取られたそうだ。学校に話したが信用してくれなかったとも記している。「いままでなんかいも死のうと思った」らしい。どれだけつらかったことか。いじめは社会の縮図という。聞くと福島産農産物を食べるのは危険、福島の人は放射能で汚染されている―そんな科学的根拠のない風評を真に受け、広める人もいるのだとか。そんな心ない言動が子どもの世界をゆがめ、いじめの温床となり、絶望を生んだのだろう

 ▼けれど少年は踏みとどまった。支えたのは意外にも死者たちだったという。手記にはこうある。「でも、しんさいでいっぱい死んだからつらいけどぼくはいきるときめた」。命を慈しむ思いと勇気が大人たちの愚かさを打つ。


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