コラム「透視図」 - 北海道建設新聞社 - e-kensin - Page 319

日ハム優勝

2016年09月30日 09時38分

 ▼きのうは朝から晴れ晴れとした気持ちで仕事に出掛けた人が多かったのでないか。われ知らず鼻歌が出たかもしれない。「進めファイターズ 勝利の男」。北海道日本ハムファイターズが28日、リーグ優勝を決めた。4年ぶり7度目の快挙である。マジックが点灯してからビールを冷やし、毎日、テレビにかじりついていた人もいただろう。少しお預けを食っただけに、祝勝のビールの味は格別だったはず。

 ▼それにしても、優勝決定試合を完封で飾った大谷翔平投手の力ときたら。9回裏西武の攻撃でフォアボールを出したときは、ついに若さが露呈したかとハラハラしたが取り越し苦労。最後の打者をきっちりレフトフライに仕留めた。二刀流といい、やはり並の選手ではない。もちろん首位ソフトバンクに11・5ゲーム差(6月)をつけられたところから大逆転できたのは、個々の選手の技術の高さとチーム力のたまものだろう。加えて決して諦めない姿勢も日ハムの大きな魅力である。

 ▼栗山英樹監督は試合後、「選手は北海道の誇り」と語っていた。その通りだ。「九つの 人九つの あらそひに ベースボールの 今日も暮れけり」(正岡子規)。野球は9人対9人で争うスポーツだが、彼らに託してわれわれも一緒に戦わせてもらっている。そのことがどれだけ勇気や元気になっているかしれない。これからクライマックスシリーズ、日本シリーズと続く。当然、狙うのは日本一である。日ハムで「今日も暮れけり」の日々がまだあると思うと、楽しみでならない。


近鉄の車掌

2016年09月29日 09時46分

 ▼自分には全く非がないにもかかわらず、「これは全部あなたの責任よ」と言葉の機関銃で妻に責められたら、俺も死にたいくらいの気持ちになるかもな―。そんなことを考えて身につまされたご仁もいるのでないか。東大阪市の近鉄東花園線で電車の遅れを乗客に責められ、思い余って高架から飛び降りてしまった車掌の話である。多勢に無勢だったようだから、追い詰められた末の衝動的行動なのだろう。

 ▼21日の出来事だが近鉄はすぐに車掌の処分を検討すると発表した。ところがここにきて、いきさつを知った人の間でその近鉄に嘆願書を出す動きが盛り上がっているという。処分を前提にするのはやめ、寛大な処遇と心のケアを求める内容である。どうやら世間の風は冷たいばかりではなさそうだ。詳細は分からぬまでも、困っている人をみすみす放ってはおけないということだろう。車掌は「もう死にたい。こんなの嫌だ」などと叫んでいたらしい。あまりに悲痛な訴えではないか。

 ▼いつからだろう、行き過ぎた顧客第一主義がまかり通るようになったのは。「おもてなし」の言葉が独り歩きを始めてからか。今回、会社は事なかれ主義をおもてなしの美名に隠し、客と長いものには巻かれろとばかり現場に無理を強いてはいなかったか。嘆願書もそうだが世間は意外と温かい。目を気にするならむしろ不当なクレーム客から毅然と社員を守る姿勢がほしかった。鉄道会社の使命は安全、安心な運行であろう。車掌が危険、不安を感じているのでは、実現など程遠い。


病院の闇

2016年09月28日 09時35分

 ▼海堂尊氏が医師経験を基に描いた医療ミステリー「チーム・バチスタ」シリーズに、『螺鈿迷宮』(角川書店)がある。読んではいないのだが、関西テレビがドラマ化したものを毎週楽しみに見ていた。終末期医療に取り組み、地域でも評判の良い病院が物語の舞台だ。ところがこの病院、あまりに人が死に過ぎるとうわさされてもいた。心療内科医田口と厚労省技官白鳥の名コンビが調査を開始するが…。

 ▼横浜市神奈川区の病院で入院患者の点滴に海面活性剤が混入され死亡した事件の報に触れ、このミステリーを思い出した。明るみ出たのは18日に1人の高齢患者が亡くなってからだが、この病院では7月を境に、亡くなる患者が急に増えていたという。しかも4階のフロアばかりだったそうだ。神奈川県警は殺人と断定したが、真相はまだ闇の中。液体を注射器で点滴に混入しても、跡はほとんど確認できないらしい。犯人は周到に準備していたのだろう。底知れぬ悪意が感じられる。

 ▼患者の命を預かる病院は信頼あってこそ成り立つ。そこに付け込まれたのだろう。突然命を奪われた方とその家族らの無念はいかばかりか。犯行もさることながら、今回の事件では死亡者の急増を見過ごした病院の態度もふに落ちない。先のドラマでは、内部の不都合な事実を外部に出さない病院の内向きな空気が調査を阻んでいた。渦中の病院もそうだったのかどうかは知らないが、犯人を助長させた責任は免れまい。憎むべきは犯人だが、病院の内部統制見直しも急務ではないか。


秋の臨時国会

2016年09月27日 12時14分

 ▼今月初めのこと。車を運転しながら何となくラジオを聞いていると、安倍晋三首相の動向を伝えるニュースが耳に入ってきた。「安倍首相は明日、羅臼を訪問する予定です」。これには驚いた。その日、首相は中国にいて、前の日はロシアでプーチン大統領と会談。それであしたが羅臼とは、何と忙しいことか―。ところがよく聞いてみると羅臼でなくラオスの勘違い。ASEAN首脳会議への出席だった。

 ▼自分のそこつさを棚に上げるつもりはないのだが、そんな聞き間違いをしてもおかしくないくらい、首相は国内外を飛び回っている。実際、14日には一連の台風被害を視察するため本道にも来ていた。第二次、三次内閣での訪問国・地域数は今月とうとう、延べにして100を超えたそうだ(外務省まとめ)。さらに、18日からは第71回国連総会出席で米国に向かい、その足で日本の首相として初めてキューバを訪問した。在任期間が長いこともあり着々と外交成果を積み上げている。

 ▼安倍首相の背中には羽でも生えているのではないか。もっとも、その羽もしばらくは封印である。きのう、秋の臨時国会が始まった。アベノミクスの加速、二次補正予算、環太平洋経済連携協定(TPP)の承認と重要課題が目白押しだ。今度は国会に腰を据え、日本経済の再生に取り組むことになる。所信表明演説では「未来」と「世界一」の言葉を何度も繰り返し、国民に、共に挑戦することを呼び掛けていた。さて、お手並み拝見である。そろそろ日本経済にも羽が生えていい。


イグ・ノーベル

2016年09月24日 10時00分

 ▼とっぴな発想に笑いたくなるが、妙に考えさせられもする研究に贈られるイグ・ノーベル賞の受賞者がことしも決まった。日本人では、東山篤規立命館大教授と足立浩平大阪大教授の2人が「知覚賞」に輝いている。上体を前に倒し、股の間から後ろを見ると視覚が変化することを証明したという。「股のぞき効果」というらしい。思わず「で、それが何か」と言いたくなるが、そこがこの賞のいいところ。

 ▼「それでも地球は回っている」と叫ぶ変わり者がいないと、世の中は進歩しない。それに、誰も目を向けないところに興味を持ち、精力的に研究するなんて素敵ではないか。股のぞきといえば京都の天橋立を眺める古くからの習慣が思い浮かぶ。長く続いてきた裏には視覚の変化という娯楽性があったわけだ。地球が回るほどのことでもないが、理由を知れば面白い。すぐ何か役立つこともなさそうだが、そのうちノーベル賞の大村智教授の微生物研究のように大化けするかもしれぬ。

 ▼このイグ・ノーベル賞、驚いたことに日本人が2007年から10年連続して受賞しているらしい。日本の研究者といえば真面目な印象だが、案外ユーモア感覚が優れているのか。多分そうではなく、真面目が高じていわゆる「オタク」になっているのだろう。それはそれで日本らしいが。ちなみに昨年は、バナナの皮がなぜあれほど滑るのかの研究で物理学賞を受賞したそうだ。最近、日本銀行の金融政策も滑りがちである。来年はこの謎の解明で経済学賞を受賞したりは、しないか。


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