▼米カリフォルニア工科大などの研究チームが11日に、これまで理論的にしか分かっていなかった重力波を初めて観測したと発表した。アインシュタインが存在を予言していたものの、実際に観測できたことはなかったらしい。歴史的快挙とのことだが、素人故の悲しさで理解は追い付かない。ただ、これで宇宙の起源に迫るデータが直接手に入るかもしれないと聞けば、宇宙少年ならずとも少々胸が高鳴る。
▼星夜の風情を楽しむのなら、「冬銀河声聴くために眼を閉じる」(涼木鞠)で十分だが、重力波を観測するには目を閉じるだけではどうにもならない。重力が時空をゆがめる性質を利用し、縦横長さ各4kmの真空パイプが伸びたり縮んだりするのをレーザー光線で検出するという。発表によると、今回観測したのは13億年前に発生した太陽3個分のエネルギーを持つ重力波だそう。これがパイプを1京分の1mm程度伸縮させたというのだから、いやはや通常の人知の及ぶところでない。
▼重力波は光速で伝わるというが、悪いニュースも光速に負けず劣らず一瞬で広がり、心を重くする。ことしは年が明けてからまだ1カ月余りだというのに、北朝鮮の水爆実験や軽井沢のスキーバス転落事故、世界中で相次ぐテロ、甘利明氏の金銭授受疑惑、円高株安と、あらゆる方面で暗い出来事が続く。いささか沈んだ気持ちになっていたところだ。そこに宇宙の謎解明の鍵をつかんだ快挙の一報が飛び込んできたのである。久々に心を軽やかにしてくれるのが重力の話になるとは。