コラム「透視図」 - 北海道建設新聞社 - e-kensin - Page 351

統計的には

2016年02月05日 10時09分

 ▼先日、札幌市内で同市主催のヒグマフォーラムがあり、知識を仕入れておこうと足を運んでみた。「市街地侵入抑制策と共存に向けて」がテーマである。そこで興味深い話を聞いた。2011年は突出して出没数の多い年だったが、実は1頭のメスが広範囲に行動していただけだったという。その後のDNA解析で分かったそうだ。当時は生息数が増えて危険だと大騒ぎにもなったが真相は違ったのである。

 ▼別の地点で目撃されたら、普通は同じクマと考えないだろう。人の目でクマの花子さんと太郎さんを見分けるのは難しい。ところが数だけは積み上がるため誤解が生まれる。統計的にはこれを因果推論の誤りというらしい。西内啓氏は『統計学が最強の学問である』(ダイヤモンド社)で面白い例を示している。次の食べ物を禁止すべきかどうか。「心筋梗塞で死亡した日本人の95%以上が生前ずっとこの食べ物を食べていた」。答えは「ごはん」だ。もちろん病気の主原因ではない。

 ▼西内氏は「十分なデータ」を基に「適切な比較」をすることが正しい答えを導くと説く。さてこちらの因果推論はどうだったか。民主党などが甘利明氏の疑惑を盾に国会審議を人質に取ろうとした件である。結果、自民党の支持率が上がり作戦は腰砕け。世論は野党が思い描いた形にはならなかった。自分たちが有権者にどう評価、比較されているかが分析から漏れていたのだろう。民主主義には政府与党に対する健全な批判勢力が欠かせないというのに、現状は何ともお寒い限りだ。


GLAYの歌

2016年02月04日 09時02分

 ▼今の時期思い出す曲の一つに、函館出身のメンバーらで構成するロックバンドGLAYが1999年2月発表した「Winter,again」がある。最大の売り上げを記録した曲だから聞き覚えのある人も多いのではないか。こんな歌詞があった。「幼い日の帰り道/凛と鳴る雪路を急ぐ/街灯の下ひらひらと/凍える頬に舞い散る雪」。きょうは暦の上で立春だが、この歌詞の方が本道の実感に近い。

 ▼ここしばらく本道は連日真冬日で、冷凍庫の中で暮らしているようなもの。天気予報によると寒さは当分の間続くらしい。あす5日開幕のさっぽろ雪まつりを楽しむ分にはいいが、屋外で仕事をする人にとっては辛抱のしどころだ。ただ春を感じさせるものがないわけではない。日は長くなった。きょうの日の入りは午後4時50分。この1カ月で40分ほど伸びている。「日脚伸ぶただそれだけで気の晴れし」(大東美子)。夕方になっても明るさが残っているのは実際うれしいものだ。

 ▼春の兆しをいち早く見つけた喜びを表す言葉に「冬萌」がある。冬のうちから芽が出ることをいうが、芽でなく歌が出るこんな「冬萌」も良いものだ。GLAYが歌う北海道新幹線開業イメージソングが1月27日に発売された。JR北海道のCMを既に見た人もいよう。「Supernova Express 2016」でGLAYは躍動感のある旋律に乗せてこう歌い掛ける。「北の街は凍えた夢を/温めてくれるよ」。新幹線開業まであと50日と少し。春は確実に近付いている。


ギネス記録

2016年02月03日 08時52分

 ▼法隆寺三代目棟梁の西岡常一は、宮大工職人の仕事をコンピューターに代えることなどできないと考えていたそうだ。相手にするヒノキは一本ずつ全部性質が違うため、癖を見抜き、それに合った使い方をしなければならないからだという。引き継がれてきた技と知恵を駆使してはじめて、創建当時の美しさを千年以上保つことができる。『木のいのち木のこころ 天・地・人』(新潮文庫)に教えられた。

 ▼法隆寺は「世界最古の木造建築物」としてギネス世界記録に認定されている。木造建築物で国内唯一だったが、最近1つ増えたことが話題になった。昨年10月に完成した山形県の南陽市文化会館である。認定は「世界最大の木造コンサートホール」。大ホールは1403人を収容できるそうだ。地元企業シェルター(山形市)が耐火性能を満たすため、木材を石こうボードで囲み、外側をさらに木材で覆う構造部材を開発して実現させたという。人の技と知恵を結集させた成果である。

 ▼ギネスといえば、道民としてはジャンプ界の「レジェンド」葛西紀明選手を忘れるわけにいかない。既に3つの世界記録を持っているが、1月31日、新たに「W杯個人最多出場488回」「ノルディックスキー世界選手権ジャンプ部門最多出場12回」の2つの認定証を受けたという。西岡棟梁は、優れた職人技には知恵が含まれていると説いていた。葛西選手も変化する雪の状態を見極めながらそんな技を磨いてきた職人だろう。ギネスは今回、そうした達人の技にも気付かせてくれた。


インフルエンザ

2016年02月02日 08時47分

 ▼風邪で寝込んでいるときに限って食べたくなる物がある、という人はきっと少なくないだろう。筆者が子どものころはミカンの缶詰だったが、人に聞くとすしだったりアイスだったりいろいろである。作家宮尾登美子にとってそれは蒸しずしだったそうだ。エッセイ「かぜひき」に書いている。「寝床でものを食べてはいけないという禁忌も、この日ばかりは大目に見て」もらえるのもうれしかったらしい。

 ▼そんなことを思い起こさせる時期がまたやってきた。インフルエンザの流行が、全国的に広がりつつある。国立感染研究所が1月29日公表した「流行レベルマップ」によると、注意報が37都府県、警報が7道府県だそう。道感染情報センターの警報はまだ根室だけだが、全道的に患者は増加傾向にあるようだ。乳幼児を持つ親御さんや高齢者を抱えた家庭は特に心配だろう。感染してもおいしいものが食べられるくらい体力があればいいが、熱が高いときは水分を取ることさえ難しい。

 ▼大切なのは感染しないことである。どうやらしっかり手洗いすることに勝る予防法はないらしい。おかしいな、と思ったらすぐに受診することだ。感染していたらすっぱり休む。宮尾登美子は「大ていの人には病臥願望というもの」があるとも書いていた。家族にいたわられ、のんびりとした時間を楽しめるからだとか。いや休むと職場に迷惑が、と気兼ねする人もいよう。サラリーマン川柳(第一生命)にこうあった。「インフルで会社休むも支障無し」。案外とそんなものである。


腐敗した政治

2016年01月30日 08時50分

 ▼政治のことを「まつりごと」というが、その本来の意味は「奉仕をする」ことであるらしい。「奉る」の言葉を思い浮かべると分かりやすいだろう。古代日本なら神への奉仕、民主主義の今は国民への奉仕ということになろうか。祭と政が等しく「まつり」と呼ばれるゆえんである。奉仕の精神を失うと政治は腐敗していく。権力は私利私欲を満たすための手段と化す。事情は世界中どこでも同じのようだ。

 ▼NGOのトランスペアレンシー・インターナショナル(本部・ベルリン)が27日、2015年の国別堕落指標を発表した。汚職や収賄など政治家、官僚らの腐敗度を順位付けしたものだ。日本は167カ国中18位。上位だが昨年より3つ順位を下げた。他に気になるところは米国16位、韓国37位、中国83位、北朝鮮167位といったところか。ちなみに1位はデンマーク。堕落した国は報道の自由がない、政府予算が隠される、権力者が横暴、司法機関の独立性がない、が特長だそう。

 ▼これも来年の順位に関係するだろうか。TPP交渉を担ってきた甘利明氏が28日、違法献金疑惑をめぐる現金授受問題の責任を取り、経済再生担当相を辞任したのである。記者会見し、現金を受け取ったことは認めたものの、違法性は否定した。ただ関係した秘書が大金を「費消」した事実はあったとした。これでは責任を免れまい。いずれにせよ今回の事件は謎が多い。国会で騒ぐより司法当局に全て任せるべきではないか。それにしても金に奉仕する政治関係者の尽きないことよ。


ヘッドライン

ヘッドライン一覧 全て読むRSS

e-kensinプラス入会のご案内
  • 古垣建設
  • 日本仮設
  • 川崎建設

お知らせ

閲覧数ランキング(直近1ヶ月)

おとなの養生訓 第245回 「乳糖不耐症」 原因を...
2023年01月11日 (1,383)
函館―青森間、車で2時間半 津軽海峡トンネル構想
2021年01月13日 (1,255)
おとなの養生訓 第43回「食事と入浴」 「風呂」が...
2014年04月11日 (1,225)
アルファコート、北見駅前にホテル新築 「JRイン」...
2024年04月16日 (1,115)
藻岩高敷地に新設校 27年春開校へ
2022年02月21日 (833)

連載・特集

英語ページスタート

construct-hokkaido

連載 おとなの養生訓

おとなの養生訓
第258回「体温上昇と発熱」。病気による発熱と熱中症のうつ熱の見分けは困難。医師の判断を仰ぎましょう。

連載 本間純子
いつもの暮らし便

本間純子 いつもの暮らし便
第34回「1日2470個のご飯粒」。食品ロスについて考えてみましょう。

連載 行政書士
池田玲菜の見た世界

行政書士池田玲菜の見た世界
第32回「読解力と認知特性」。特性に合った方法で伝えれば、コミュニケーション環境が飛躍的に向上するかもしれません。