▼展示会場に入り順路に沿って進むと絹谷幸二氏の「日月燦々北海道」がまず目に飛び込んできた。道立近代美術館で開催中の「アートで発見HOKKAIDO」である。芸術とは無縁の身故、何も楽しめないのではと思ったが杞憂(きゆう)だった。「日月」は四季折々の自然や人々の生活を色鮮やかに描いた絵画。3点組で1枚およそ縦2m、横2・6mの大作だ。絵の力なのか見ていると心が湧き立つ。
▼その横では札幌出身の日本画家片岡球子さんの「屈斜路湖」が静かに存在感を放っていた。ミュージアム新書『片岡球子』(奥岡茂雄)によると、片岡さんは「ゲテモノの絵」と評されながらも、「ひたすら真っ正直に」画業と向き合う人だったという。この絵は樹木や山が金色の太線で縁取られ、華やかだ。今回の展示会では「山と水」「人と街」「雪と氷」など7つのテーマに沿って絵や彫刻、版画が並べられているのだが、いろいろな表現の形を見ることができて飽きさせない。
▼見終えて帰ろうとしたとき「日月」が再び目に入った。同じ絵だが最初より迫力を感じる。離れた場所から眺めたため視野が広がり、3点の絵を一望できたからだ。近過ぎると見えないものもあるということか。きっと観光もそうだろう。目の前にあるのに道民には見えない本道の魅力がまだあるはず。国交省は19日、2015年訪日外国人旅行者が前年比47%増の1973万人と発表した。本道を訪れている人も多い。離れた所にいる人の方が、案外魅力を発見し易いのかもしれぬ。