世の中では今、「#KuToo」という社会運動がちょっとした盛り上がりを見せているそうだ。「くーとぅー」と読む。少し前に話題になった女性への性暴力を告発する「#MeToo」になぞらえたものらしい。就職活動や職場で女性にヒール靴を強制する規定の廃止を呼び掛けているのだとか。外反母趾(ぼし)や転倒の原因になるため危険な上、靴擦れを起こしやすいのに押し付けられているとの訴えである。もっともな話だ。靴は我慢大会の道具ではない。時と場合、場所に合わせて最適な種類のものを選べばいいだけのこと。魚市場には長靴、建設現場には安全靴である。就活にヒール靴が不向きなら強制されるいわれはない
▼5日の衆議院厚生労働委員会でも尾辻かなこ氏がこの問題を取り上げていた。これに対し根本厚労相は「業務上必要かつ相当な範囲を超えて強制する場合はパワハラに該当する」と答弁。一部メディアは大臣が強制を容認したかのように伝えていたが、実際はそうでなかった。それにしても就活でのヒール靴というのが今一つピンとこない。昔からそうだったろうか。歴史は案外と浅く、バブル崩壊後の買い手市場で横並び意識が異様に高まった結果、無難なヒール靴が標準化したとの説もある。就職支援やマナー教育の業界もこれに便乗し、規範的な風潮を後押しした
▼不幸なのは根拠も分からぬ決まりに悩まされる女性たちである。採用担当者はすぐにでも「#KuToo」に賛意を表明すべきだろう。だからといってまさか〝つっかけ〟で会社訪問に来る人もいまい。