コラム「透視図」

鉄道の魅力

2020年08月21日 09時00分

 世の中には鉄道をこよなく愛する人たちが大勢いる。英文学者で鉄道史研究家の小池滋氏もその一人である。どこに引かれるかは人それぞれだが、氏はこうだったらしい

 ▼「いま自分がどこを通っているか、車窓の外にどのような風景があり、どのような生活が展開されているかを、見るだけでなく、音で、匂いで確かめたくなる」。著書『「坊ちゃん」はなぜ市電の技術者になったか』(早川書房)で吐露していた。速さや効率とは別の価値がそこにはあるというのだろう。もちろん鉄道も速さや効率は必要だ。ただ、適度に遅く、気楽に乗り降りでき、ぼんやり景色を眺めていられるところが魅力なのも事実。いつまでも走り続けてもらいたいものだが、どうやら今、本道はそんなのんきなことを言っていられない状況らしい

 ▼JR北海道は19日、ことし4月から6月までの連結決算を発表した。純損益が126億円の赤字だったそうだ。同じ期としては連結決算の作成を始めた2003年度以降最低だという。このかつてない厳しい結果に島田修社長も会見で危機感をあらわにしていた。昨年、札幌近郊を中心に料金を大幅値上げし、経営改善の道筋が見えはじめた矢先でのコロナ禍である。不運というほかない

 ▼経費削減や設備投資の先延べくらいしか打つ手はないようだが焼け石に水。しかし良い話もある。来週始まる東急との共同事業、北海道の大地を駆け鉄道の魅力を存分に味わえる「ザ・ロイヤルエクスプレス」には定員の8倍を超える申し込みが殺到したという。決して芽がないわけではない。


経済を回復軌道に

2020年08月20日 09時00分

 先週のお盆休み、決まった予定もなかったため、家族で道の駅を巡るドライブに出た。胆振方面から洞爺を回り、中山峠に抜けるルートである

 ▼どこまでも青空が広がる絶好の天気で景色は最高。だて歴史の杜で「ハンサム焼き」をいただき、あぷたでホタテカレーを昼食にした。どちらも期待した以上にうまい。230ルスツの農産物直売所では40cmほどの大長なすを見つけ、家で調理するとこれがまた美味である。いまだに新型コロナウイルスの感染は止まっていないものの、道の駅はどこも大盛況だった。これは喜んでいいことだろう。にぎわいが戻りつつある。動かせる部分だけでも経済の歯車を回していかないと、日本はコロナと決着をつけるより先に不況で倒れてしまう

 ▼ことし4―6月期の国内総生産(GDP)速報値が実質で前期比7.8%減、年率換算で27.8%減となったそうだ。内閣府が17日発表した。リーマンショック後の2009年1―3月期を上回る戦後最大規模の落ち込みだという。パンデミックでヒトとモノの国際交流が途絶えたため輸出が激減。それは仕方ないとしても、日本経済の主要エンジン個人消費の動きを鈍らされたのは痛かった。不要不急の外出はするな、域外移動も避けろというのでは天下の回りものも身動きがとれまい

 ▼幸いこのところ本道の感染状況は落ち着いている。人々の間に安心感も広がっているのだろう。道の駅のにぎわいがそれを裏付けている。三密回避と対面時のマスク。その基本を守り、身の回りから徐々に経済を回復軌道に乗せたいものだ。


寿都町と高レベル放射性廃棄物

2020年08月19日 09時00分

 古代ギリシャの哲学者ソクラテスが「悪法も法だ」と理に反した裁判結果を受け入れ、極刑に処されたのはご存じの通り。批評家の東浩紀氏がエッセー「ソクラテスとポピュリズム」で、そのあたりの事情について分かりやすく触れていた。東氏流に言うとこうだったという

 ▼「ソクラテスにむけられた非難は要は、おまえはなんか怪しい、嫌なことをいう、みんなの空気に水を差す、だから死ねというものである」。犯罪の確たる証拠があったわけではない。うわさによる大衆感情の暴走が招いた悲劇だったのである。昔は知的水準が低かったからと笑ってはいられない。今でもこういった例は世間に幾らでもある

 ▼先週、寿都町が高レベル放射性廃棄物最終処分場の文献調査に応募を検討しているとの報が流れた時の周囲の反応もそうだった。内容を精査することもないまま、すぐに各方面から非難や反対の声が上がったのである。道も特定廃棄物に関する条例を盾に暗に撤回を要請したようだが、拙速だろう。地層処分技術は現在、国際的にほぼ確立されている。残された問題は適地だ。10万年の管理を想定しているとはいえ、毎時1500シーベルトある放射線量は1000年でおよそ1000分の1に下がる。天然のウラン鉱山の危険性と比較考量できる範囲でないか

 ▼何より既にある核廃棄物をどうにかする必要があろう。調査も許さないというのは、科学的でも論理的でもない。感情の暴走である。できるだけ多くの地で調査し確かめるのが良策だ。でないと日本に適地があるのかないのかさえ分からない。


静岡で国内最高気温

2020年08月18日 09時00分

 経験したことはないが、京都の夏はかなり暑いらしい。その地を舞台にした森見登美彦氏の幻想小説『四畳半タイムマシンブルース』(角川書店)にこんな一節があった

 ▼「京都の夏、我が四畳半はタクラマカン砂漠のごとき炎熱地獄と化す。生命さえ危ぶまれる過酷な環境のもとにあって、生活リズムは崩壊の一途をたどり、綿密な計画は机上の空論と化し、夏バテが肉体的衰弱と学問的退廃に追い打ちをかける」。四畳半に暮らし、京大で学んだ森見氏の実感だろう。日本ではここしばらく、多くの人が同じ炎熱地獄に苦しめられている。京都を含め関東から九州にかけての広い範囲で厳しい暑さが続いているのだ。コロナ禍が収まらない中でのこの暑さ。まさに「生命さえ危ぶまれる過酷な環境」でないか

 ▼きのうは静岡県浜松市で午後0時10分に、国内最高気温に並ぶ41・1度を観測した。宮崎県児湯では39・7度、長野県飯田で39・5度、くだんの京都も38・4度まで上がった。聞くだけでめまいがする。太平洋高気圧が列島を覆い、たまったままの暖かい空気を強い日差しがさらに熱するというのだから猛烈な暑さにならないわけがない。日本気象協会によると、21日ころまで高気圧の勢力は衰えないそうだ。地域によっては40度を超える日がまだあるらしい

 ▼本道もきのうは、最も暑い時期を上回る気温が続出した。道産子にはゆるくない。先の物語で主人公の「起死回生の打開策」はクーラーだった。熱中症予防に迷わず活用したい。コップ一杯の水と適度な塩分をこまめに取ることも忘れずに。


玉木雄一郎国民民主党代表

2020年08月13日 09時00分

 義理堅い人柄や数奇な運命に翻弄(ほんろう)された一生に心を動かされてのことだろう。戦国武将の一人、浅井長政の人気は今も高い。劇的な最期もまた長く記憶にとどめられる理由である

 ▼こんないきさつがあったという。美濃の斉藤道三を討ちたい織田信長が長政に同盟を持ち掛け、長政はこれを受諾。ところが協力関係は長く続かなかった。利用した揚げ句、天下取りを狙う信長があっさり裏切ったのである。信長は長政の本拠地小谷城に攻め入った。長政は豊臣秀吉の数度にわたる降伏勧告を退け、籠城して徹底抗戦。攻撃が激しさを増し家臣が次々と逃げ出す中、最後まで雄々しく戦い、城と共に散ったそうだ

 ▼それを思い出したのは、分党を発表した玉木雄一郎国民民主党代表の11日の記者会見を見たからである。立憲民主党との合流を進めるための手続きとはいえ解党はいわば負け戦。悲壮感が顔からにじみ出ていた。ただ、玉木氏自身は合流には参加せず、党と運命を共にすることにしたという。立民に野党共闘を持ち掛けられ、気付けば家臣を奪われていたといったところか。くせ者ぞろいの党をついにまとめきれなかった玉木氏らしい話である。とはいえ当初から基本政策が一致しない中での合流は野合と断じていた。一国一城の主として筋は通したのでないか

 ▼長政に一首がある。「けふもまた尋ね入りなむ山里の花に一夜の宿はなくとも」。宿はないが、きょうも花を探しに山へ向かうと歌っている。玉木氏もそのつもりだろう。首相の揚げ足取りに終始しない、骨太の野党を見たい。


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