コラム「透視図」 - 北海道建設新聞社 - e-kensin - Page 10

極端な人

2022年04月22日 09時00分

 ユーチューブやSNSといったネット空間には極端に意見の偏った人があふれている。そんな印象をお持ちの方は少なくないのでないか。実際は利用者の一部にすぎないはずだが、なぜかたくさんいるように感じる

 ▼国際大グローバル・コミュニケーション・センターの山口真一准教授が著書『正義を振りかざす「極端な人」の正体』(光文社新書)でその理由をこう説明していた。「極端な人はとにかく発信する」。いわゆる「陰謀論」がネットではびこるのも同じ仕組みである。東大大学院の鳥海不二夫教授が3月にツイッターを分析し、「ウクライナ政府はネオナチ」というロシアの主張に同調する投稿を拡散したアカウントの約9割が、新型コロナウイルスワクチンに反対する投稿も拡散していた事実を明らかにした

 ▼何のことはない。怪しげな説があちこちで大量に流布されているため、それだけ陰謀にはまる人も多いのだろうと思いきや、実は同じ人が複数の話題に飛びついているだけだったのである。〝新型コロナは存在しない〟〝ウクライナ危機は米国の策略〟。荒唐無稽だが物事の裏には必ず陰謀があると信じる人には、その方が真実に聞こえるようだ。その上メンバーがいつも同じなため、意見も先鋭化しやすい

 ▼20日に幹部ら4人が都内の医療機関に侵入して逮捕された、反ワクチン団体「神真都(やまと)Q」はその典型かもしれない。ネットの陰謀論サークルがこのコロナ禍で急発展したのだとか。ネットの中では英雄視もされる「極端な人」も、現実の世の中ではただの危ない人だ。


映画、文学界から性暴力なくそう

2022年04月21日 09時00分

 人間は欲に手足の付いたるものぞかし―。そう見抜いたのは、人情ものに定評のあった江戸時代の浮世草子作者、井原西鶴だった。自らを省みると納得するほかない

 ▼ところで欲といってもいろいろある。食欲や知識欲、生存欲といった生きるために必要なものから、支配欲、色欲といった流されると危険なものまで。欲は一概に悪い情動とはいえないものの、出し方を間違えると自分も他人も不幸にすることがある。歌人で小説家の伊藤左千夫も『独語録』に、「世の中に何が卑しいといって、人の為人の為といいつつ、自分の欲を掻く位卑しいことはあるまい」と書いていた。まさにその通りで、自分の欲望を満たすために善意を装うなど相当下劣な部類に違いない。人を不幸にする欲だろう

 ▼かねがねうわさには聞いていたが、映画界や文学界では実際そんな下劣なやからが大手を振って歩いていたようだ。それぞれの業界で活躍する女性たちが最近、性暴力や性加害をなくすため相次ぎ声を上げたのである。映画界では近頃、人気監督や俳優が女性に関係を強要する不祥事が立て続けに明るみに出た。強い立場を利用したり、仕事の世話を口実にしたり。己の性欲を満たすのに「君のため」を装う、左千夫の最も嫌う「卑しい」行為である

 ▼映画界では原作者の女性20人が性暴力撲滅の声明文を発表。文学界でも多くの女性作家が、SNSで「性暴力のない土壌を作りたい」との発信を始めた。どちらの業界にもそんな土壌があったのだろう。これで悪しき欲は手も足も出ないということになればいいが。


れいわ山本代表の衆院議員辞職

2022年04月20日 09時00分

 小説家で雑誌『文藝春秋』を創刊したジャーナリストとしても知られる菊池寛の歴史エッセイ「大衆維新史読本」に、新撰組局長近藤勇に触れた一節があった

 ▼惨敗を喫し組壊滅寸前に追い込まれた鳥羽伏見の戦いの後の様子である。「その後色々と画策したが、一度落目になると、する事なす事後手となって、甲州勝沼の戦に敗れ、下総流山で遂に官軍の手に捕へられた」。肩で風を切る往時の面影はどこにもない。官軍に抵抗する勢力として京都で活動したが、最初から時代の流れには逆行していた。負けが運命付けられていたともいえる。菊池寛はこう評した。「人間も落目になれば、考へも愚劣になる。甲陽鎮撫隊で大名格にしてもらひ、故郷へ錦を飾つた積りの穉気振りなど、往年の近藤勇とは別人の観がある」

 ▼歴史は繰り返すというが、政党名をその新撰組にあやかったからといって、落ち目になったときの行動まで同じ轍を踏むこともないと思うのだが。れいわ新選組の山本太郎代表のことである。きのう、今夏の参院選出馬のため衆院議員を辞職した。昨年10月の衆院選で議席を獲得してまだ半年。違法でないとはいえ誠実さに欠ける行為だろう。政治の暴走を止める勢力を増やすというが、自分の暴走は止められなかったようだ

 ▼結党した2019年には支持率が1.2%(NHK世論調査)あったものの、最新の調査では0.2%まで下落。少ない支持者を参院選で使い回そうとの意図が見え隠れする。山本代表も高い志を掲げて政治家に転身したのではなかったか。往時の面影はどこへ。


鳥インフルエンザ

2022年04月19日 09時00分

 今はだいぶ緩和されたものの、新型コロナウイルス感染拡大当初からしばらくは空港に異例の厳戒態勢が敷かれた。渡航者が海外からウイルスを持ち込むのを防ぐための検疫強化である

 ▼中国や欧州など入国制限対象地域から国内に入ろうとする人には症状の有無にかかわらず14日間の待機が求められた。しかも公共交通機関の利用も禁止。空港で足止めされたまま動けない「帰国難民」が生まれたのも記憶に新しい。空港で身動きが取れずにいる人への食料支援、待機者を宿泊させるホテルの借り上げなどコロナ狂想曲ともいえる騒動が繰り広げられた。とはいえ一連の措置が対策として功を奏したのも事実だろう。水際を守れば拡散を防げる

 ▼日本に飛来する渡り鳥にも越境時にそんな厳しい検疫を受けさせたいと、叶わぬ願いを抱く関係者もいることだろう。道内の養鶏場などで致死率の高い高病原性鳥インフルエンザが再び猛威を振るっている。今のところ野鳥がウイルスを運び込むのを止める方法はない。感染した白老町の養鶏場では16日から52万羽の殺処分が始まった。1カ所としては過去最大規模という。網走のエミュー農場でも陽性が確認された。感染は既に道内全域に及ぶとみられている。いわば災害に遭ったようなものだ。気の毒というほかない

 ▼施設は万全の対策を取っていたはず。それでもウイルスは人の営為をあざ笑うかのように侵入する。今やウイルスの巧妙さは多くの人の知るところとなった。感染が際限なく拡大する前に止める。残念ながら当面できるのはそれくらいしかない。


線状降水帯予報

2022年04月18日 09時00分

 雲研究者として知られる気象庁気象研究所研究官、荒木健太郎さんの『すごすぎる天気の図鑑』(KADOKAWA)が面白いというので読んでみた。発行から1年で25万部を超え、天気の本としては異例の売れ行きを記録しているらしい

 ▼一つ一つの項目に美しい写真と親しみやすい図が付けられ、分かりやすくまとめられている。見出しも目を引く。「雲とアツアツおみそ汁は同じ」に興味が湧かないわけはない。気象災害が規模、回数共に激しさを増している近年の状況も、天気への感心の高さにつながっているのだろう。そうだとするとこんなトピックに目が止まるのも自然なこと。「積乱雲には25mプール1万杯くらいの水がある」というのである。水量600万㌧だそうだ

 ▼これからは積乱雲を見ると思わず体に力が入ってしまうかもしれない。しかも集中豪雨をもたらす「線状降水帯」は、この積乱雲が同じ地域に次々と発生する現象である。プール1万杯分の水が何杯も落ちてくると想像すると…。当然、大きな災害が起こる確率は格段に高まる。ただ狭い範囲で発生するため予測が難しいのも事実。ところが最近、いい知らせを聞いた。気象庁が6月から、この線状降水帯の発生半日前に予報する取り組みを始めるというのである

 ▼民間船舶の協力で、予測に欠かせない風上側水蒸気量の正確な観測データが得られることになり、提供態勢が整ったという。線状降水帯の雨は降り始めると一気に激しさを増し、住民から避難の機会を奪う。情報と時間が運命を分ける。この半日の価値は大きい。


ヘッドライン

ヘッドライン一覧 全て読むRSS

e-kensinプラス入会のご案内
  • web企画
  • オノデラ
  • 古垣建設

お知らせ

閲覧数ランキング(直近1ヶ月)

函館―青森間、車で2時間半 津軽海峡トンネル構想
2021年01月13日 (3,078)
BP新駅で大規模開発 高層MS、商業施設、ホテルな...
2022年06月29日 (3,018)
おとなの養生訓 第43回「食事と入浴」 「風呂」が...
2014年04月11日 (2,147)
おとなの養生訓 第126回「なぜ吐くのか」 空腹時...
2017年12月22日 (1,738)
おとなの養生訓 第44回「肥満と発汗」 皮下脂肪が...
2014年04月25日 (1,547)

連載・特集

英語ページスタート

construct-hokkaido

連載 激化する若者獲得競争
地方企業が取るべき
戦略は-new

激化する若者獲得競争 地方企業が取るべき戦略は-
若者獲得に向けた工夫とは。釧路市内の団体が開いたセミナーから、各回の講演概要を紹介する。

連載 おとなの養生訓

おとなの養生訓
第234回「アセトアルデヒド」。二日酔いの原因物質で、顔の赤みや動悸、胃腸への刺激を引き起こします。

連載 本間純子
いつもの暮らし便

本間純子 いつもの暮らし便
第21回「住宅の内装/色と素材感」。質感や柄から受ける印象も大切にしてコーディネートを進めたいものです。

連載 行政書士
池田玲菜の見た世界

行政書士池田玲菜の見た世界
第20回「能力向上へ適切な指導」正しいゴールの設定やフィードバック、成功体験が大切です。