コラム「透視図」 - 北海道建設新聞社 - e-kensin - Page 10

ヒグマの知能

2023年05月17日 09時00分

 幼い子どもと静かなひとときを過ごすのに、絵本ほど役に立つ小道具はない。筆者も昔はよくお話を読んであげながら、子どもたちと一緒に絵を楽しんでいたものだ

 ▼今でも覚えている絵本の一つに、わたなべしげおさんが文、おおともやすおさんが絵を担当した『どうすればいいのかな?』(福音館書店)がある。子グマがお出掛けをするため一人で着替えをしているのだが、シャツを履いたりパンツをかぶったり。小グマがとぼけた顔で黄色いパンツをかぶっている絵などを見ると、子どもは大はしゃぎである。「違う違う」と教えてあげたりして。試行錯誤を繰り返した末、服の着方をしっかり学んだ子グマは元気よく出掛けてゆく。なかなかに賢い

 ▼見たところ絵本に登場する子グマは、3、4歳の子どもをモデルにしている。最新の研究で本道に生息するヒグマの知能も、犬と霊長類の間と推測されているそうだ。だいたい同じくらいということである。好奇心旺盛で学習能力が高く、記憶力も悪くない。幌加内町の朱鞠内湖で14日、釣りをしていた男性の行方が分からなくなった。ヒグマに襲われた可能性が高い。大半のヒグマは人の気配を察すれば逃げるが、最近はエサとして狙ってか興味を持ってか、自分から人に近付いてくる個体も増えていると聞く。人を怖がるといった過去の常識が通用しなくなっているのだ

 ▼ヒグマの生活様式は人間社会を反映して変わる。彼らも日々学び続けているのだろう。ことしも全道各地で目撃例が相次いでいる。お出掛けがかち合わないよう人も学ばなければ。


LGBT理解増進法

2023年05月16日 09時00分

 今の若者は知らないかもしれないが、昭和の時代に子どもだった人なら十返舎一九の『東海道中膝栗毛』をよくご存じだろう。弥次さんと喜多さんが東海道を徒歩旅行したときの道中記で、江戸後期の一大ベストセラーとなった物語である

 ▼二人は行く所行く所で必ずおかしな事件や騒ぎを巻き起こす。多くの人が子どものころ親しんだのは、そのドタバタ劇の面白い部分だけをまとめ、笑い話に仕立てたものである。実はただの珍道中記ではない。江戸時代の読者は本当の意味も理解して楽しんでいた。それは弥次さんと喜多さんが同性愛者だったこと。旅回りの役者だった喜多さんに弥次さんがほれ、相思相愛となって駆け落ちしたのである。性に関しておおらかな社会だったらしい

 ▼その流れは現代の日本にも残っていよう。生まれつきの性と心の性にずれがある性的少数者(LGBT)の問題が騒がれる前から、欧米のような激烈な拒否反応は少なかった。どこかおうように眺めていたようなところがある。もし嫌悪感が強ければ、タレントのマツコ・デラックスさんもこれほどの人気者にはなれなかったのでないか。欧米のキリスト教社会は、同性愛を宗教上の罪としてきた伝統がある。LGBT差別に立法が必要なゆえんだろう

 ▼日本でも今、自民党が急ピッチで「理解増進法」制定へ向け突貫工事を進めている。G7広島サミットまでに形にしたいとの思惑があると聞く。何でも欧米に合わせることもあるまい。もっと腰を据えて取り組んではどうか。ドタバタと駆け抜けても後で笑われるだけだ。


150議席未満で辞任

2023年05月13日 09時00分

 経営学者のP・F・ドラッカーは目標を設定することの重要性を説いている。著書『マネジメント 基本と原則』(ダイヤモンド社)の冒頭に、一節を設けていた

 ▼そこではアルキメデスの「立つ場所を与えてくれれば世界を持ち上げてみせる」を引き、この「立つ場所」こそが大切だと教えている。「立つ場所」とは集中すべき分野。その目標があって初めて「われわれの事業」を明確に定義できるというのである。それがないと良質の人材と資金を引き寄せられなくなるとドラッカーは言う。組織が衰退する最初の兆候は「有能でやる気のある人間に訴えるものを失う」ことらしい。党の代表といえばトップマネジメントを担う人物である。さて、立憲民主党の泉健太代表が打ち出した目標は適切だったのかどうか

 ▼10日の両院議員懇談会で、次期衆院選の獲得議席が150未満なら辞任するとの意向を表明した。現在、立民に所属する衆院議員は97人。企業なら売り上げをいきなり1・5倍にする目標である。「立つ場所」が分からず、中身の改善もないのにどうして実現しようというのだろう。NHKの最新世論調査で立民の支持率は5.3%と低迷を続けている。与党自民党への攻撃は激しいが、それで支持率が伸びる気配も、良質な人材が集まってくる様子もない

 ▼泉代表は決意と覚悟を述べたのだという。ただ、現実離れした目標は社員のやる気をそぐ。党も同じに違いない。ドラッカーの言葉はさらに続く。「目標は、実行に移さなければ目標ではない。夢にすぎない」。目を覚ました方がいい。


国民の借金?

2023年05月12日 09時00分

 統計のうそや誤りを分かりやすく伝える例えの一つに「テキサスの狙撃兵の誤謬」がある

 ▼狙撃兵が納屋のドアに向かってマシンガンを乱射し、弾痕が集中している部分に後から的を描けば、神業のごとき腕を持つ銃の名手に見えるというもの。その演出を統計に置き換えるとどうなるか。出てきた数字に本来の意味とは別の、まことしやかな物語を後付けすれば、情報を受け取る人々の印象を簡単に操作できるわけ。『ニュースの数字をどう読むか―統計にだまされないための22章』(ちくま新書)で以前仕入れた豆知識である。この時期恒例のいわゆる「国の借金」のニュースを見てそれを思い出した。過去最大を更新との話題に多くのメディアが飛びつき、報道しているが、相も変わらず間違った情報を流している

 ▼財務省がおととい明らかにしたのは、2022年度3月末現在の「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高」。それによると合計は1270兆4990億円に上ったという。そこまではいい。ところが、メディアはさらに合計を日本の総人口で割り、国民一人当たりの借金が1000万円を超えると喧伝した。これはおかしい。国債に限れば9割以上、合計でも9割弱を国内で保有している。国民一人当たりというなら、資産だって同じくらいあるのだ

 ▼もとよりそれはただの数字遊び。一人当たりを出す意味は本来どこにもない。メディアは公正に見える数字を使って借金物語を後付けし、危機感を演出できれば目を引くニュースにできるとの狙いなのだろう。正しい的はそこではない。


銀座の強盗

2023年05月11日 09時00分

 規則正しい生活を心掛け、服装は地味で少し堅苦しく見えるくらいがちょうどいい。言葉遣いはあくまで丁寧に。振る舞いにも真面目さが求められる。つまり、他人から見ると品行方正な人物というわけ

 ▼これは何かといえば、SFショートショートの名手星新一が想定する「盗賊会社」の社員の資質である。迷惑な態度をとったり、派手な姿で出歩いたりなどはもってのほか。警察に目を付けられてはいけないのだ。社員が次の計画に宝石商の襲撃や高級車の強奪を提案すると、それでは成功しても大騒ぎになり活動に支障をきたすと社長は言う。そしてこう諭すのである。「少量ずつでも数をこなし、安全第一とするのが、わが社の方針だ」。どうやら現実はそれほど穏やかではない

 ▼東京・銀座の高級腕時計店で8日、衆人環視のもと堂々と強盗が行われた。事件は午後6時過ぎというからまだ外は明るく、路面店だから人通りも多い。安全第一どころか、どうぞ見てくれといわんばかりの大胆な犯行である。実行犯4人は程なく警察に逮捕されたが、奪われた1億円相当の腕時計100点のうち見つかったのは70点ほど。どうやら残りを手にして逃走中の黒幕がいるらしい。実行犯はいずれも10代。闇バイトで集められた可能性もあると聞く

 ▼こちらの「盗賊会社」の社長は自分が労せず利を得るためなら、社員など平気で切り捨てる方針なのだろう。最初から実行犯たちを目立たせ、皆が捕物で大騒ぎしている間に逃げる算段だったのかもしれない。自分だけは目を付けられぬようひっそり街に紛れて。


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