コラム「透視図」

かんばん方式

2018年11月07日 07時00分

 優れた生産管理システムとして世界に冠たるトヨタ「かんばん方式」は、工場から下請けまで「必要なものを、必要なときに、必要なだけ」供給することで一切の無駄を省く仕組みである

 ▼「ジャスト・イン・タイム」と呼ばれるゆえんだが、最初からうまく機能したわけではない。指定された日時ぴったりの納品でないと受け入れてもらえないため、導入してしばらくは工場の前に下請けの長い行列ができたそうだ。かんばん方式で効率化に取り組んだトヨタは容赦ないコスト削減も押し進め、法外ともいえる値下げをたびたび下請けに要求。涙をのんだ業者も多かったと聞く。生殺与奪の権を握る巨大企業に逆らうなどできるわけもなかった

 ▼それを思い出したのは、時代の最先端を走り洗練されたイメージのIT業界にも同様の問題があると知ったからである。経済産業省などが設置した有識者会議が5日、グーグルやアマゾン、アップルといった巨大IT企業の規制を強化する方向で中間報告案をまとめた。「プラットフォーマー」と呼ばれるそうした巨大IT企業が圧倒的シェアからくる強い立場を利用して、個別企業の小売価格に干渉したり、一方的に手数料を値上げしたりと不当な取引を強いる例があるからだという

 ▼時代は進み業態が変わっても人の考えることは一緒のようだ。規制の内容は監視組織の創設や情報開示の義務付けが想定されているとのこと。「かんばん」は自分たちだけでなく下請けや取引先など多くの関係者の力で掲げられていることに巨大IT企業も早く気付いた方がいい。


MADE IN

2018年11月06日 07時00分

 幾つか国名を挙げる。「CHINA」「THAILAND」「VIETNAM」。若い人にとっては当たり前の表記だろう。ところがわれわれ年配の者には当初、大いに違和感があったのである。もうお分かりと思うがこれらの国名の前には「MADE IN」が付く

 ▼日本企業が安い労働力を求めてアジア地域に工場を移転し、そこでの生産品が一気に日本市場を席巻したのだった。1980年代ころからだろうか。出始めは「何だこれ、MADE IN CHINAって。中国製?大丈夫なのか」くらいのものだ。今では「JAPAN」を見つける方が難しい。アジア進出はグローバル経済の中で、コスト競争力を高める経営戦略の定石だった

 ▼そんな猛烈な勢いで広がった海外進出からまだ半世紀も経ていないのに、現在は外向きから内向きへ全く逆の流れも生じているらしい。時代の変化の速さには驚くばかりだが、昨今は外国人労働者に日本まで来てもらわねば立ち行かない産業が増えているのだという。2日、政府は国会に外国人労働者が単純労働に就労することも可能とする入管難民法改正案を提出した。今国会での成立を目指すそうだ。建設や介護、外食など人手不足が深刻な14業種を対象に門戸を開放するとのこと

 ▼結構な話である。ただ、永住もうたって受け入れ制度を整えるなら彼らの人生に重い責任を負うことも忘れてはならない。時代が変わったからといって放り出すことはできないのだ。議論を尽くし世界に誇れる「MADE IN JAPAN」の在留資格制度にしてもらいたい。


北海道遺産67件に

2018年11月05日 07時00分

 当たり前にあるものとして普段気付かずにいることも多いけれど、本当はかけがえのない宝物。ご存じの通り「北海道遺産」にはそんな意味が込められている

 ▼先週、第3回選定結果が発表になった。2004年までに52件が決まり発掘はいったん終わっていたが、ことしの北海道命名150年を機に追加することになったのである。今回15件が加わり合計67件。本道の広さを考えればこれでも足りないくらいだろう。新たに選定された15件を見ると、これまでとは趣の異なる遺産が増えたことに気付く。それは長年の風雪に耐えてきた古さを特徴とする遺産でなく、今まさにつくられている進行形の遺産である

 ▼その最たるものが「パシフィック・ミュージック・フェスティバル(PMF)」。90年に世界的指揮者の故レナード・バースタインが企画して札幌で始まった教育音楽祭だが、今やアジアを代表する一大イベントとして確固たる地位を築いている。「遺産」であると同時に「資産」でもある好例だろう。経営戦略論を専門とする米経済学者マイケル・ポーターハーバードビジネススクール教授は以前、こう語っていた。「今日のグローバル経済においても、競争上の優位性は、地域の遺産や特徴を利用することによって獲得できることが多い」

 ▼北海道遺産について分析したものではないが、本道の未来を展望する上で示唆に富む言葉でないか。北海道遺産を67件も抽出できたのは喜ばしい。ただ、集めただけで満足してはいけない。これをどう本道の未来に生かすのか。大切なのはここからである。


エサンベ鼻北小島

2018年11月02日 07時00分

 昔から楽しまれている簡単な思考実験に「無人島に一つだけ持っていけるとしたら何にする?」がある。誰でも一度は考えたことがあるのではないか

 ▼すぐに答えられるようでいてこれがなかなか悩ましい。現実的にはナイフやライターのような生存の役に立つ物を選んだ方がいいに決まっているが、退屈をまぎらすための漫画や小説の類いも捨て難い。ギターさえあればという人も中にはいよう。意外と性格が出る。それを思い出したのは、あったはずの無人島が消えてしまったとのニュースを聞いたからである。話題となっているのは猿払村沖約500mに位置する「エサンベ鼻北小島」。国土地理院の地図にも記載されているくらいだから、存在していたのは間違いない

 ▼ところが最近になって第一管区海上保安本部に、地元の住民から「見当たらない」との情報が寄せられたという。報道によると発見された31年前には海面から1・4m突き出ていたとのこと。一管は流氷や波の影響を指摘しているそうだ。島の消滅といえば沖ノ鳥島を忘れるわけにはいかない。日本最南端の無人島だが、浸食や風化を防ぐため国が1000億円以上かけて保全工事を進める。水没すると広大な排他的経済水域を失うだけに懸命にならざるを得ないのだ

 ▼「エサンベ」も消えると領海が狭まる可能性があるらしい。ロシアに接し「特攻船」の歴史があったことも踏まえれば、関係者にとっては数百mの変動も大きな違いに感じられよう。無人島「エサンベ」に一つだけ持っていけるとしたら特大の消波ブロックだろうか。


韓国徴用工問題

2018年11月01日 07時00分

 横紙破り、ちゃぶ台返し、無理が通れば道理引っ込む―。いろいろな表現ができるがつまりはそういうことである

 ▼日本統治時代に朝鮮から動員された韓国人元徴用工が新日鉄住金を相手取り損害賠償を求めていた裁判で、韓国の最高裁に当たる大法院はおととい、個人請求権を認める初の判断を下した。1965年の日韓協定で「完全かつ最終的に解決された」問題のはずだが、亡霊が墓場からよみがえったようだ。韓国の大法院も日本の一部の若者と同様、ハロウィーンで暴走してしまったか。そんな皮肉の一つも言いたくなるが冗談で済ましている場合ではない。今回の件は竹島不法占拠やいわゆる「従軍慰安婦」問題とは質が異なる

 ▼日本企業に深刻な実害が出るのだ。請求権に法的な後ろ盾ができ、強制執行で資産を差し押さえられるかもしれないのである。係争中の多くの裁判もこの判断に則った形で、これから続々と判決が出ることになろう。しかもそれは国同士の約束を無視して行われるのである。夢野久作の短編「約束」が頭に浮かんだ。橋の下で友達と会う約束をした男の話である。大雨で川が増水したのに男は約束だからと逃げず溺れて死ぬ。話を聞いた人が言う。「約束を守るのは悪い事だ」。別の人が諭した。約束は溺れ死ぬことでなく会うことだった。男は目的をはき違えていたのだ

 ▼65年のあの日、日韓も過去を清算し国交を正常化させるために約束をした。両国が憎しみに溺れ、再び泥沼に陥ることのないよう知恵を絞ったのである。韓国は約束の目的をはき違えてはいないか。


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