世界規模でインターネット関連事業を展開する「グーグル」の脅威論がひところ話題になった。あらゆる情報を手中に収めようとしているからである
▼パソコンやスマホが浸透し、今やグーグルと無縁でいる方が難しい。サービスを使うことで利用者は人物像から趣味、好み、思想、行動範囲に至るまで多くの個人情報をグーグルに渡すことになる。となれば、その情報を活用して人々を操ることもできるというわけ。この脅威論が下火になったのはグーグルも一企業にすぎないとの認識による。信頼を裏切ったり、別の企業がより便利なサービスを提供したりすれば利用者はすぐにグーグルを見限るだろう。市場原理の優れた側面である
▼ところで同じ意図をもし国が持つとなると脅威は一企業の比ではない。世界のあらゆる情報を一手にできるなら、自国に有利な方向に人々を誘導するのも容易だろう。焦点となるのが現在、米国と中国が世界市場制覇に向けしのぎを削る5G(第5世代移動通信システム)だ。中国は通信企業ファーウェイ(華為技術)を表看板にそれを進める。米国は警戒心あらわ。世界標準となればファーウェイ網が世界を覆う。そのシステムに「裏口」があり情報は中国に筒抜けというのが米国の主張である
▼真偽は不明。ただ中国はAIIBで金融、一帯一路で物流、海軍増強で軍事と自国中心の世界秩序再編を目指す。情報だけ戦略にないとは考えにくい。日本、英国と米国に倣う国も増えてきた。情報が兵器に優る時代だ。民主主義でない国がそれを握るのはやはり脅威である。