コラム「透視図」

日本の中の異国

2019年07月08日 09時00分

 札幌出身の随筆家森田たまに「夏の北海道」と題する一編がある。講演旅行で作家仲間と7月に各地を巡った思い出をとっかかりに、そこから話を広げ本道の魅力を生き生きと伝えるエッセイだった

 ▼きっと車窓からの眺めが記憶を呼び覚ましたのだろう。「かねがね私は北海道は日本の中の異国だと考へてゐた」と打ち明け、欧州を旅した際に見た風景が、本道そのままだったことに驚きを感じたと振り返っていた。何十年も前の話ではあるが、本道に異国情緒があるのは今も変わらぬ事実だろう。広大な牧草地には緑が萌え、青空は見果てることがない。道路は幅が広く、市街地も伸び伸びとして明るい。それをひときわ強く感じさせられる季節が夏である。森田さんもそうだったに違いない

 ▼本道にもようやく夏が来たようだ。「夏めきて雲間の青のときめけり」古閑純子。ぼんやりしていた青空と雲の境界もくっきりしてきた。気持ちを浮き立たせている人も多かろう。道産子にとって短い夏は特別である。現在、異国の雰囲気を漂わせるのは風景だけでない。文化もである。世界の音楽家を育てるPMF(パシフィック・ミュージック・フェスティバル札幌)や日本屈指のジャズの祭典サッポロ・シティ・ジャズ。夏の道都札幌はクラシックやジャズの音楽であふれる。PMFは6日、ジャズは7日に開幕した

 ▼これらのイベントを目指して世界中から人々が訪れ、本道の自然や風景も楽しんで帰る。垣根はどこにもない。「北海道は日本の中の異国」。森田さんは泉下で一層その思いを強めていよう。


参院選はじまる

2019年07月05日 09時00分

 鹿児島と宮崎、熊本の3県を中心とする九州南部を長らく苦しめていた強い雨も、ようやく峠を越えたようだ。先月の末からほぼ途切れることなく降り続いた雨である。地域の人も胸をなで下ろしていよう

 ▼梅雨前線の影響で不安定化した大気が雨雲を次々と発生させ、それが線状降水帯となって暴威を振るったようだ。昨年のやはりこの時期に未曽有の大災害を引き起こした、西日本豪雨と同じメカニズムだという。地球温暖化の影響で昔とは雨の降り方が大きく変わってきたといわれて久しい。ゲリラ豪雨による都市型水害、常識はずれの長雨による内水氾濫や土砂崩れ。毎年のように悲しい報道を聞く。対策は気象の変化に追い付いているだろうか

 ▼第25回参院選がきのう公示された。争点は多く与野党火花を散らしているが、災害対策も忘れてほしくない。気象に限らない。このところの地震や噴火活動の活発化も大いに気になる。長期的視点で腰を据えて議論ができる参議院にふさわしいテーマでないか。ただ、今参院選の争点とされているのは消費税率引き上げの是非や年金制度の再構築、「アベノミクス」の見直しなどで災害対策の声はあまり聞こえてこない

 ▼治山治水のようなインフラ整備は少し進めるだけで確実に効果が出る。部分的にでも堤防を強化、かさ上げすることでどれだけ人命と財産を救えるか。政府も国土強靱(きょうじん)化を重点にしてはいるが、現在のペースを大胆に早める必要はないか議論が必要だろう。地味でも本当に大切な施策に力を尽くす候補者に1票を投じたい。


韓国との貿易見直し

2019年07月04日 09時00分

 客を客とも思わない店で買い物をする気にはなれない。自然な感情だろう。売り手と買い手に立場の上下があるわけではないが、そこに「あうん」の信頼関係があってこそ取引は成り立つ

 ▼日本実業界の父と称される渋沢栄一も、かつてこう言っていた。「事業には信用が第一である。世間の信用を得るには、世間を信用することだ。個人も同じである。自分が相手を疑いながら、自分を信用せよとは虫のいい話だ」。韓国に対する輸出管理の運用を厳しくするとの政府発表を聞き、渋沢翁の言葉を思い出した。文在寅政権の発足以来、一層激しさを増す反日姿勢に政府の堪忍袋の緒もついに切れたようだ。韓国はこの見直しを批判し撤回を要求しているが、これだけ日本を足蹴(あしげ)にしておいて「付き合いは従来通りで」とはいささか虫が良すぎよう

 ▼韓国は慰安婦と徴用工の問題で正式な政府間合意を無視した上に交渉にも応じず、海上自衛隊機への火器管制レーダー照射事案もうやむやにしてしまった。政府はきょうから、半導体の製造に欠かせないフッ化水素など3品目の規制を強化した。輸出手続きを優遇するいわゆる「ホワイト国」からも削除する準備をしている。両国の信頼関係が著しく損なわれたのが理由という。もう一つ、軍事転用可能な製品が北朝鮮に流れるのを防ぐためでもあるらしい。そこまで信用は揺らいでいるのである

 ▼信用とは約束を守ること。気に入らないからといって条約や協定を勝手にほごにするのでは信用を失うだけだ。残念だが韓国が自ら呼び込んだ事態だろう。


商業捕鯨再開

2019年07月03日 09時00分

 漂泊の歌人石川啄木は、函館、札幌、小樽と職を求めて各地を転々とした。本道で最後に暮らしたのが釧路である。釧路の地を踏んだのは1908(明治41)年1月、21歳の時だった

 ▼駅に着いたのは夜。歌を残している。「さいはての駅に下り立ち雪あかりさびしき町にあゆみ入りにき」。日本の果てまで流れてきてしまったやるせなさが啄木を少々めいらせていたようだ。ここで作った歌には影のあるものが多い。とはいえ釧路ならではの風景に心を和まされ、歌にすることもなくはなかった。これもその一つ。「北の海鯨追ふ子等大いなる流氷来るを見ては喜ぶ」。子どもたちの日常の一こまを切り取った作品だろう。当時は目で追える所までクジラが来ていたのである

 ▼釧路は古くから捕鯨が盛んで、戦後しばらくは捕鯨基地として捕獲数日本一を誇った「クジラのまち」だった。その栄光再びとなるかどうか。おととい、国内で31年ぶりに商業捕鯨が再開され、釧路港にミンククジラ2頭が水揚げされた。日本は同日、捕鯨反対国が主導権を握る国際捕鯨委員会(IWC)を正式に脱退。伝統の鯨食文化と生活様式を守るため、わが道を行くことにしたのである。山に上りたい船頭ばかりが増えた船を下りて、慣れ親しんだ海に一人戻ってきたわけだ。その意気やよし

 ▼当日は出港から水揚げまで釧路港は活気にあふれたと聞く。啄木も「さいはての駅」を下り立って最初に見た光景が迫力のあるクジラの水揚げだったら、「さびしき町に歩み入りにき」とは歌わなかったろう。この勢いが続けばいい。


真ん中の日

2019年07月02日 09時00分

 好きな食べ物なら何でも構わないのだが、例えばここにざるそばがあったとする。腹が減っていれば取りあえず無我夢中で4、5口すすり上げることになろう。ふとわれに返ると既に量は半分である

 ▼さあ、そこで「腹の中に幾らか入って少し落ち着いた」とほっとするのか、「もう半分しかなくなってしまった。足りないかも」と心配するのかは人により見方の分かれるところだろう。腹のすき具合にも左右される。1年もある意味似たようなものでないか。きょう7月2日は1年365日のちょうど真ん中。きょうという日を挟んで1月1日からきのうまでが182日、あしたから12月31日までも182日である。無我夢中で半年過ごした後、ふとわれに返る頃合いに違いない

 ▼前半にしっかり仕込みをした人は「細工は流々仕上げを御覧じろ」とばかり一息ついていよう。ことしが始まったのはついこの前じゃないか―、と思った人はそろそろ目を覚ました方がいい。本腰を入れないと半分でも足りなくなる。振り返ると上半期も世の中ではいろいろなことがあった。国内では天皇の譲位と令和への改元、世界に目を向けると米中貿易戦争の激化からG20大阪の開催、板門店でのトランプ米大統領と金正恩朝鮮労働党委員長の電撃会談まで

 ▼皆さんの周りでもきっとさまざまな出来事があったはず。油断すると下半期もあっという間だ。「靴紐を結ぶべく身を屈めれば全ての場所がスタートライン」山田航。「半分」に驚いた人もこの真ん中の日に靴ひもを結び直し、気持ちも新たにスタートを切るといい。


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