コラム「透視図」 - 北海道建設新聞社 - e-kensin - Page 3

福島原発処理水は安全

2023年07月06日 09時00分

 医学的には無益不要の処置だと証明されていたハンセン病の強制隔離だが、政策の根拠となる「らい予防法」が廃止されたのは1996年のことだった。53年頃には治療薬が普及し、感染力も弱いと分かっていたのだからあまりに遅い

 ▼厚生労働省が隔離の開始から廃止までの経緯を「ハンセン病問題に関する検証会議」最終報告(2005年)にまとめている。この中には、マスメディアの責任を問う一節もあった。病気に関する報道が時に偏見や差別を生み出し、助長するケースがあると分析しているのだ。2つのケースを指摘していた。「過剰な報道が不安や恐怖心を増幅させる」「報道すべきことを十分に報道せず、社会に広く流布する誤解を訂正したり、課題の克服を促す契機を提供できずに終わる」である

 ▼東京電力福島第1原子力発電所の処理水海洋放出を巡る問題でも、同じ轍(てつ)を踏むメディアが少なくないのはどうしたわけか。科学的に安全との評価が出ているのに反対の立場を崩さない。国際原子力機関(IAEA)はおととい、多核種除去装置ALPSで処理した水を薄めて放出する東電の計画を、「国際的な安全基準に合致している」との報告書を公表した。これまで多くの科学者が示してきた見解を裏書きするものだ

 ▼ところが各種報道を見ると、ここに至ってもまだ放出に難色を示すメディアが散見される。風評被害が懸念されるというのだが、先の2つのケースそのまま、メディア自身が風評被害を拡大再生産しているのが実状だろう。不安をあおるのが仕事ではあるまい。


マイナカード

2023年07月05日 09時00分

 たくさんのファンに愛されている人気のゲームソフトでも、発売直後には小さな「バグ」(不具合)がよく見つかる。Nintendo・Switch用のソフト『ゼルダの伝説 ティアーズ・オブ・ザ・キングダム』や『スーパーマリオ』シリーズといった大ヒット作品でもそれは同じ

 ▼発売前にデバッガーと呼ばれるバグ取りのプロが一通りチェック、修正するものの、大量のデータを前に見逃しは避けられない。ゲーム進行に支障がなければリリース後にバグが報告される都度、対処していく。ゲームに限らず、大規模なシステムを構築するときにはありがちな手法だろう。「マイナンバーカード」にもデバッガー役を務める人はいたのだろうが、普及を急いだためバグが残りすぎたようだ

 ▼公金受取口座を登録する際、本人とは別の人の口座番号がひも付けられてしまう事案が相次いだのである。自治体の人為的な操作ミスだが、全国で発生しているところを見ると、運用に詰めの甘さがあったに違いない。健康保険証との一体化も、一部の医療団体からは混乱を心配する声が出ているそうだ。制度への不信からカードを返納する人も増えているとの報道があるが、針小棒大に騒ぐのはいかがなものか

 ▼既に9700万件を超える申請があり、8800万枚近くが交付されている。行政コストの削減や公金の確実な給付、医療費の適正化を考えると、新たな社会インフラとしてメリットは相当に大きい。今は準備や周知の不足を反省しバグ取りに努めるときだ。カードはまだリリースされたばかりである。


二刀流の使い手

2023年07月04日 09時00分

 天下無双の剣豪宮本武蔵の技が生まれ持っての才だけでなく、稽古に次ぐ稽古で磨かれたことはよく知られている。厳しい修行の末、ついに到達したのが「空(くう)」の境地だったという

 ▼「朝々時々におこたらず、心意二つの心をみがき、観見二つの眼をとぎ、少しもくもりなく、まよひの雲の晴れたる所こそ、実の空としるべき也」(『五輪書』)。兵法に加え広く武芸も修めよと説いた上で、そう続けていた。「空」がいかなるものか凡人には計り知れないが、はるかな高みにあることだけは確かなようだ。二刀を自在に操る二天一流を完成させた武蔵だからこその悟りだろう。最近の活躍ぶりを見ると、彼もいよいよその奥義を会得したのではないかと感心させられる

 ▼投打二刀流を実践する米大リーグ・エンゼルスの大谷翔平選手の話である。きのうのダイヤモンドバックス戦で、31号となる特大のホームランを放ち、観衆を驚かせた。アメリカン・リーグで2位に7本の差を付け、トップを独走する。6月27日のホワイトソックス戦では投手として出ながらホームランも2本打ち、チームを勝利に導いた。漫画でもこんな夢物語のようなドラマは描けまい

 ▼3年連続して投打二刀流でのオールスター戦出場が決まったのもうなずける。11日には、またファンをあっと言わせる活躍をしてくれるのでないか。ただ、大谷選手も才だけでここまできたわけではない。「朝々時々におこたらず、心意二つの心をみがき、観見二つの眼をとぎ」到達した高みだ。しかもなお鍛錬を欠かさない。真の侍である。


沈没事故の共通点

2023年07月03日 09時40分

 カナダ沖北大西洋で沈没した豪華客船タイタニック号の見学ツアーに出掛けた潜水艇タイタン行方不明事件は、海底で残骸になっているのが見つかるという最悪の結果で終わった。水圧で急激に押しつぶされ、原形をとどめていなかったという

 ▼詳細な原因究明はこれからだが、高圧に耐えられる船体状況でなかったことだけは間違いない。今まで数多く成功させているから今回も大丈夫との過信があったのでないか。報道によるとタイタンは運営会社が潜水艇に必要な検査をすり抜けるため、実験船の名目で使っていたそうだ。ところが現実には、周辺国の目の届かない公海で営利目的のツアーを繰り返していた。無責任のそしりは免れまい

 ▼安全運航に問題のある船体と無責任な運航会社。不幸にもその二つがそろうと、時に悲惨な事故が起きる。知床半島沖で昨年の4月、小型観光船「KAZU Ⅰ(カズワン)」が沈没、乗客乗員26人全員が死亡した事故もそうだった。現場も状況も違うが根は同じだろう。運輸安全委員会が29日、現在までに判明した事実を公表。事故2日前の訓練時に船首甲板のハッチが不具合で閉まらず、数センチほど浮いた状態だったと指摘した。その後修理した様子もなかったという

 ▼これまでの調査で、沈没は船内に海水が流入したためだと分かっていた。聞き取りに対し運航会社の社長は、報告がないためハッチの不具合もなかったと回答したらしい。自分の責任まで船長に丸投げしているようだ。多くの人の命を預かる者の認識とは思えない。どちらも防げた事故である。


防衛技術

2023年06月30日 09時00分

 北海道の「ラピダス」(東京)と熊本県の「TSMC」(台湾)。半導体製造大手の相次ぐ日本での大工場建設は、激しさを増す世界的な半導体競争の勢力図を大きく塗り替える可能性を秘めている。それだけに政府のてこ入れも例になく強い

 ▼今はあらゆる電子機器に内蔵され、今後はAI(人工知能)の発展を左右する半導体だが、元をただせば軍事と共に成長してきた技術であることはよく知られた事実だろう。大陸間弾道ミサイル(ICBM)の精度を上げるため、高性能で小さく軽い半導体がどうしても必要だったのである。核爆弾の搭載が前提だから、動作の安定性も絶対の条件だった。半導体に限らず軍事から民生に転用された科学技術は多い

 ▼それを考えると、このかたくなな態度には少々疑問を感じざるをえない。会員の選考などで政府ともめている日本学術会議がいまだに、「軍事目的のための科学研究を行わない」旨の声明を後生大事に抱え込んでいるのである。内閣府の特別機関なのだが。戦後間もなくだった設立時の、侵略戦争に協力する研究はしないとの理念はよく分かる。ただ、今は日本も世界も昔と同じではない。侵略と防衛を一緒にし、軍事要素があれば研究も禁止では、科学の芽を摘むことになろう

 ▼防衛省は28日、防衛力強化に資する技術をまとめた「防衛技術指針2023」を公表した。人と機械の融合や高出力エネルギー、メタバースなど先端技術が多数盛り込まれている。半導体同様、将来の生活を豊かにする技術もあろう。学術会議はこれも否定するのだろうか。


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