コラム「透視図」 - 北海道建設新聞社 - e-kensin - Page 5

軍艦島の真実

2023年06月22日 09時00分

 多くの人たちは、自分が見たいと欲する現実しか見ない―。そう言ったのは古代ローマの賢人カエサルだったろうか。自らを振り返ると深くうなずくほかない。昔から変わらぬ人間心理の機微である

 ▼現代の認知心理学的な視点では、こう言い換えられるようだ。「道徳的判断が合理的考察に基づいて下されることはめったになく、たいてい直感や感情から生じている」(『知ってるつもり 無知の科学』早川書房)。韓国の日本を見る目にも得てしてそういうところがある。「軍艦島」の異名を持つ長崎市の端島炭鉱で、朝鮮半島出身者が強制労働をさせられていたとの主張もその一つ。韓国が根拠としたのは、端島を記録した1955年制作のNHKドキュメント「緑なき島」で使われていた映像だった

 ▼戦時中、ふんどし一丁で狭い坑道を掘り進む作業員。現場の過酷さがよく分かる。反日感情の根強い韓国がこれに飛びつかないわけはない。NHKに証拠が残っていたと鬼の首を取ったような大騒ぎである。元島民らは近年その映像が話題になるとすぐ、作業状況から端島ではないと指摘。国会でも取り上げられたが、NHKは一貫して問題をはぐらかしてきた。ところがである。19日の自民党会合でNHKは、フィルムに制作年と同じ55年の刻印があったと認めたそうだ

 ▼戦時中の映像でない証拠で、番組の正当性も韓国の主張も根底から覆った。見たいものしか見ないとこうして判断を誤る。検証を長く怠ってきたNHKの姿勢は日韓の間で燃え盛る火に油を注いできただけだった。猛省を促したい。


クロネコと郵政が同盟

2023年06月21日 09時00分

 地方の有力大名が自らの支配地拡大にしのぎを削る戦国時代でも、共通の敵や利害の一致がある時にはしばしば同盟が結ばれた。中でも最もよく知られたものは、尾張の織田信長と三河の徳川家康(当時は松平)が組んだ「清洲同盟」だろう

 ▼織田と松平はもともと敵対関係にあり、積年の恨みつらみがあったものの、当面の安全と双方の領土拡大を考えると他に選択肢がなかったのである。同盟は20年続いたという。こちらも、きのうの敵はきょうの友ということらしい。「クロネコヤマト」の愛称で知られる宅配便大手のヤマトホールディングスと日本郵政が19日、メール便や小型薄物荷物で協業すると発表した。いわば「クロネコJP同盟」である

 ▼ヤマト運輸が預かるメール便の「クロネコDM便」と小型薄物荷物の「ネコポス」を、それぞれ仮称「クロネコゆうメール」、「クロネコゆうパケット」として日本郵便の配送網で届けるそうだ。クロネコが赤いバイクや軽のバンに乗ってやってくるのである。ヤマトと郵政は長らく宿敵の間柄だったといっていい。ヤマトは実質的に郵政だけが扱える信書を巡り、30年以上前から規制を見直すべきと主張してきた。ローソンでの「ゆうパック」取り扱いを独占禁止法違反と訴えた例もある

 ▼今回、ライバルだった二社が協業化に踏み切った理由はドライバー不足が深刻化するいわゆる「2024年問題」や脱炭素社会実現への貢献。ネット通販の増加やコロナ禍による運送環境の激変も影響していよう。物流業界にとっては今が戦国の世なのかもしれない。


産総研の中国人研究員

2023年06月20日 20時00分

 ほんの10年前まで、オーストラリアでは中国による実質的属国化が進んでいた。現地の作家クライブ・ハミルトン氏が調査報道『目に見えぬ侵略』(飛鳥新社)で、その実態を明らかにしている

 ▼中国の浸透工作は政治、経済、教育、メディアとあらゆる分野に及び、科学も例外ではなかったという。オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)で働く中国人研究者が、内部情報を中国に流していたのである。事件は2013年。連邦警察はスパイ容疑で中国人研究者を捕らえたものの、証拠不十分で起訴には至らなかった。氏は全ての研究成果が筒抜けになった可能性を指摘し、CSIROは「高度な産業・戦略的に価値のある研究を中国のために行っている」と嘆く

 ▼どこかで聞いたような話でないか。国立の研究機関「産業技術総合研究所」の中国籍の上級主任研究員が15日、警視庁公安部に逮捕された事件である。自身が研究するフッ素化合物に関する先端技術を中国企業に漏らしたとされている。報道によると容疑者の男は中国で大学教授の他、企業の役員も務めていた。中国政府とも深いつながりがあったそうだ。しかも漏えい先の企業はすぐに特許を申請し、認められていたというのだから開いた口がふさがらない

 ▼さらに驚くのはそんな人物を国立の機関に置いていた日本の脇の甘さである。政府は経済安全保障を重視しているが、この体たらくではその掛け声もむなしく響く。日本にも政財界はじめ各界に中国応援団が存在する。「侵略」がひっそりと進んでいるのでなければいいが。


盛り土規制

2023年06月19日 09時00分

 気象用語の一つに「テレコネクション」がある。マフィア映画の題名のようにも聞こえるが、そうではない。ただ、強いつながりを表すという点では、共通するところがあるかもしれない

 ▼地球規模で遠く離れているのに、統計をとってみると2地点に明らかな関係性が見いだされる気象現象をいう。誰もが知る分かりやすい例を挙げると「エルニーニョ」。南米チリ沖の海面水温上昇が日本の天候を大きく左右する。ことしは夏本番までに、そのエルニーニョが発生する見込みという。気象庁が先週、可能性は80%とする監視速報を発表した。かなり高い。日本は冷夏になる場合が多く、大気の不安定化によってひどい大雨に襲われたことも過去にはあった

 ▼そうなると心配なのは外水、内水氾濫に加え、土砂崩れなどの災害である。さらに昨今は危険な盛り土に起因する人為的な災害も無視できない。静岡県熱海市でおととし7月に起きた大規模な土石流では、28人もの人が亡くなっている。最悪の事例だろう。道も本年度から、盛り土規制区域の指定に向けた基礎調査に乗り出すそうだ。熱海を教訓に見直され、先月26日施行された「盛り土規制法」に伴う取り組みという。盛り土といえば聞こえはいいが、要はこれまで全国各地でいらない土が無造作に捨てられていたわけである

 ▼怖いのはことし無事だから来年以降も、とはならないこと。雨が降り、地震が来るたびに危険度は増し、限界を超えると一気に崩壊する。積んだものは崩れる。時間的に遠く離れていようとそのつながりを忘れてはいけない。


自衛官候補生

2023年06月16日 09時02分

 最近は多くの職場で開かれているのでないか。働く人の心の健康を守るためのメンタルヘルスケア研修の話である。精神の病を発症する人が増えていることを背景に、厚生労働省が近年、各職場で対策に取り組むよう指導を強めているのはご存じの通り

 ▼当社でも先日、全社員を対象にした研修会が開かれた。それによると管理監督者の果たす役割が大きいそうで、基本は「あいさつ、声掛け、聴く、つなぐ」の四つ。親しく気軽にあいさつや声掛けができる関係をつくり、相手の話には身を入れてじっくり耳を傾ける。調子が疑わしければ専門の保健スタッフなどと連携するといった具合。昨今は自衛隊もメンタルヘルスには気を遣っているというが、今回の現場ではどうだったのだろう

 ▼岐阜市の陸上自衛隊日野基本射撃場で14日、訓練中の18歳の自衛官候補生が89式小銃を発砲し、52歳の教官ら2人が死亡、1人がけがを負った。報道によると殺人未遂で逮捕された男は教官に叱られたと供述しているという。男はこの4月に入隊し、前半3カ月の教育訓練期間を終える頃合いだった。そんな区切りの時期になぜ凶行に及ばねばならなかったのか。警察の捜査とは別に、自衛隊内部での検証も避けられまい

 ▼メンタルヘルスの観点では、学生から環境が劇的に変わり、強いストレスにさらされる新入社員に不調が起きやすいとされる。職場でつらい目に遭っていたとしても断じて殺人は許されない。銃を扱う自衛隊で発生したのも重大である。ただ、心の問題はどの職場でも起こりえよう。人ごとではない。


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