コラム「透視図」

文部省の不登校調査

2019年08月21日 09時00分

 ハリウッド映画を見ているとよくこんな場面に出会う。例えばニューヨークで強盗や殺人が起こる。街では大して珍しい事件でもない。いつも通り地元の市警が捜査に乗り出すと、途中からFBI(連邦捜査局)が出てきて捜査権を奪われてしまうのである

 ▼市警の責任者が言う。「FBIがこんな所まで何の用だ」。捜査官は高飛車に答える。「事件は今からFBIが担当する。今後は私の指示に従ってもらおう」。全米を揺るがす重大事件に関係する可能性が高いため、君たちのような田舎の警察には任せておけないというわけだ。地域の実情も知らないFBIに引っかき回されるのは気分が良くないものの、地元警察としてはどうしようもない

 ▼現場の小中学校も今、この地元警察と同じ気分を味わっているのでないか。文部科学省が来年度、学校を介さずに不登校の児童生徒から聞き取り調査する方針を固めたそうだ。『読売新聞』がきのう付紙面で伝えていた。「この件は文科省が直接担当する」である。学校の取り組みを信用しないわけでなく、「不登校の原因や背景を詳細に把握するため」が一応の名目。ただ、記事によるといじめの認知件数が過去最多を記録しているのに、学校側が挙げる不登校の理由にいじめが極端に少ないのだとか

 ▼故意のごまかしでないにせよ、事なかれ主義や事態の見過ごしがないとは言い切れまい。学校のような閉じた世界ではありがちなことである。映画では最後にFBIが地元警察に鼻を明かされることが多いが、さて、こちらの頭越しはどんな結果が出るのか。


あおり男逮捕

2019年08月20日 09時00分

 京都を舞台にした異色の青春小説『鴨川ホルモー』(角川文庫)などで知られる作家万城目学は学生時代に三度、「悪」を見たことがあるという。エッセー「街角に悪」に記していた

 ▼その悪を体現する「彼」を最初に見たのはとある定食屋。彼が隣席の学生に何か話し掛けると、笑顔だった学生は急に激高し店を飛び出していったそうだ。途中からは学生に非があると詰め寄り、警察沙汰にすると脅していたらしい。彼が違う相手にも同じ嫌がらせをしているのを万城目さんは街でたまたま三度目撃した。標的を探して難癖をつけ、しつこく絡んで相手を怒らせ、軽く小突かれでもしたら「警察を呼ぶ」とどう喝する。一種の娯楽なのだろう。万城目さんはそこに闇深い悪を見た

 ▼茨城県守谷市の常磐道で後続車に「あおり運転」をした上、強引に止め、運転手を何度も殴りつけた揚げ句行方をくらませていた男が逮捕された。「路上に悪」というべきか。この人物にも万城目さんが見た彼と相通ずる悪を感じる。静岡や愛知でも同様のあおり運転を繰り返していたとの情報が寄せられているそうだ。各地で「標的」を物色していたのかもしれない。暴行の場面を映像でご覧になった人もいよう。危険極まりない

 ▼しかも運転していた高級外国車はディーラーから借りたもので、返却に応じず約20日間、2000㌔も乗り回していたという。あきれた男である。誰しも運転していれば他の車にイライラさせられることはあろう。ただそこであおるかどうかはまた別の話。自分の中の悪の暴走を許してはいけない。


慰霊

2019年08月19日 09時00分

 お盆が明けた。先週はふるさとへ墓参りに帰った人も多かったに違いない。毎年この時期は終戦記念日とも重なり、日本国中が慰霊の雰囲気に包まれる。日本人にとってはやはり特別なときだろう

 ▼15日に開かれた令和初となる全国戦没者追悼式では、ことし5月に即位した天皇陛下が「過去を顧み、深い反省の上に立って」戦争の犠牲者を追悼し、世界の平和とわが国の発展を祈られていた。皆、心は同じでないか。そんな慰霊の雰囲気が手を伸ばさせたのかもしれない。お盆中に書店で『特攻 最後のインタビュー』(文春文庫)という本を見つけ、読みはじめた。戦闘機や重爆撃機、肉迫攻撃船艇といった特攻兵器で一度は出撃したものの、故障や撃墜などで心ならずも生還した元特攻隊員に話を聞いた記録集だ

 ▼特攻といえばその無謀さや人命軽視の姿勢から、当時の帝国陸海軍の愚かさの象徴ともされる作戦である。昨今では亡くなった方々を評して「無駄死に」、「無意味な死」とする意見も目に付く。読むと隊員たちの多くは特攻の誤りに気付いていた。それでも親兄弟やふるさとのため捨て石になる覚悟で出撃したのである。これを尊いと言わず何と言おう

 ▼組織的な特攻は徹頭徹尾愚かだった。ただ自己犠牲の精神まで「無意味」とする必要はない。戦争を一面的に捉えると大切なものを見失う。元隊員の江名武彦氏は語っていた。「世界史・日本史、特に現代史です、これを、やはり複眼的な目でもって勉強して頂ければと思います」。戦後生まれが「反省の上に立つ」にはそこからだろう。


なつぞらと終戦

2019年08月14日 09時00分

 あんなにつらい幼少期を過ごしたのだから、もう不幸は味わってほしくない。そう願いながら見ている人も少なくないだろう。広瀬すずさん演じるNHK連続テレビ小説『なつぞら』の主人公「なつ」のことである

 ▼戦地で父、空襲で母を亡くしたなつら3兄妹は終戦直後の東京を子どもたちだけで生き抜いてきた。1946年、十勝にある父の戦友柴田の牧場に引き取られたものの、兄妹は生き別れになってしまう。ドラマは日本アニメ草創期にアニメーターの道を切り開いた一人の女性を描いたものだが、物語にはしばしば太平洋戦争の影が差す。先日もなつの兄を育てたおでん屋「風車」のおかみ岸川亜矢美の恋人が、学徒出陣で帰らぬ人となったとの余話が明かされていた

 ▼先の大戦では程度の差こそあれ、ほとんどの日本人がなつや亜矢美のように大切な人を失う経験をしている。「敗戦忌別れを重ね生きのびて」北さとり。戦後は悲しみや苦しみを胸の奥深くに閉じ込め必死に前へ進む毎日だったろう。あすは終戦記念日である。ことしも新聞やテレビなどは戦争の悲惨さや残酷性を訴える人や団体を数多く取り上げるに違いない。ただ、こうした定型手法が多くの日本人の心にどれだけ響いているのか、疑問を感じないでもない。戦後74年、当時を記憶する人もずいぶんと減った

 ▼そんな今、放映されているのが『なつぞら』である。そこでは戦争の悲惨さとともに日本を再び開拓しようとする人間の底力が描かれている。戦争にも加害と被害の二元論でない、いろいろな語り継ぎ方があっていい。


表現の不自由展

2019年08月10日 09時00分

 きょうは無礼講だから―。社長のその言葉を真に受けて幹事は大張り切り。この際だからと会社の不満分子に演説をさせるわ、好き放題に社長をののしらせるわと大騒ぎを演じる。似たような場に遭遇した人も少なくないのでないか

  ▼そのうち「無礼講とはいえ最低限の礼儀があるだろう」と良識ある社員が現れ、調子に乗って暴走する幹事とけんかになる。無礼講と言ってしまった手前、社長は抑えに回るしかない。そんな悲喜劇ともいえる情景をつい思い浮かべてしまった。国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展の一つ「表現の不自由展・その後」が中止になった経緯を聞いてのことである

 ▼同展には昭和天皇の写真を焼き灰を踏みつけにする映像作品や特攻隊の寄せ書きを載せた「馬鹿な日本人の墓」、在韓日本大使館前に設置されたのと同じ「慰安婦」像などが並べられ、公的芸術祭にふさわしくないとする人々から批判が殺到。脅迫まであったため安全策として中止措置を取ったという。この芸術祭は自称ジャーナリストの津田大介氏が監督を務める。同展も氏の肝入りで、表現の自由を巡る現状に思いをはせるため過去に公立美術館で展示を拒否・撤去された作品を集めたらしい。その結果、思想的に偏った作品ばかりになってしまったようだ

 ▼芸術か否かはさておきこれらもある種の表現。その自由はできるだけ守られるべきだろう。脅迫状を送った容疑者は逮捕された。大村秀章愛知県知事は再開を考えてはどうか。あとは実際に見た人が自らの良識に従って評価を下せばいい。


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