コラム「透視図」

楽天の送料無料

2020年03月04日 09時00分

 世の中には口がうまい人というのがいるものである。落語「つぼ算」に登場する兄貴のような人物がその典型だろう。子分に頼まれ一緒につぼを買いに行くのだが、この店の主人とのやり取りが面白い

 ▼子分が欲しいのは二荷入りのつぼ。ところが兄貴は3円に値切らせた上で一荷入りのつぼを買う。子分は「違う」と文句を言うものの、兄貴は「まあ見ていろ」と余裕の表情。少し歩いて慌てたふりで店に引き返す。間違えたから二荷のつぼと替えてくれというのだ。快諾した主人にまず一荷のつぼを3円で下取らせ、さっき払った3円と合わせて6円だとして清算完了。主人の「毎度あり」の言葉に見送られ意気揚々と引き揚げる。物と現金をごっちゃにして言いくるめたわけだ。端的に言って詐欺である

 ▼三木谷浩史楽天社長の最近の発言でこの噺を思い出した。運営する「楽天市場」で全店送料無料を打ち出し、利益が削られるためできないとする出店者に「価格全体で調整すればいい」と指南したそうだ。つまり送料を上乗せして商品価格とし、客には送料無料をうたえということらしい。それが嫌なら出店者が送料を負担せよ、と強制しているようなもの。詐欺ではないが誠実でもない

 ▼公正取引委員会は先週、楽天の送料無料制度に独禁法違反(優越的地位の乱用)の疑いありとして緊急停止命令を出すよう東京地検に申し立てた。当然である。それに「よそで5000円の商品が当店では6000円。ただし送料は無料」の口車に乗せられて買う客がどこにいよう。つぼ屋の主人じゃあるまいに。


報道の事実誤認

2020年03月03日 09時00分

 新型コロナウイルス拡大の危機感から鈴木知事が「緊急事態宣言」を出し、道民に外出自粛を要請した先の土日、皆さんはどう過ごされたろうか

 ▼どの地域も中心街やレジャー施設は閑散としていたようだ。一方で思わぬ混雑に見舞われていた場所も中にはあった。スーパーやドラッグストアである。紙が不足するとのデマが流れたため、その影響で多くの人が箱ティッシュやトイレットペーパーの確保に走ったのだ。紙不足ならまだかわいい方かもしれない。もっとたちが悪いのはテレビのワイドショーや一部メディアの間違った情報だ。訳知り顔の「識者」の妙な話を繰り返し伝えている。ある人は「検査を増やさないのは感染者数を少なく見せ掛けるため」と陰謀論を展開。またある人は「厚生労働省が北海道で検査の妨害をしている」と断じる始末だ

 ▼こうしたデマが大手を振って歩く状況を見過ごせなくなったのだろう。国立感染症研究所が1日、「報道の事実誤認」に反論する文書をまとめ、公表した。デマを明確に否定した上で、一部報道は「緊急事態において昼夜を問わず粉骨砕身で対応に当たっている」関係者を不当に扱い、国民に誤解を与え、対策に悪影響を与えていると批判。言葉は丁寧だが行間に怒りがにじんでいる

 ▼今のところ日本では感染者は周囲にほとんどうつしていない事実が分かっている。問題は密集空間だ。心配な人まで検査で病院へ殺到する事態になると中国の武漢同様、感染爆発が起ころう。紙はまだしも医療関係者が疲弊して消えてしまってからデマを嘆いても遅い。


野田市の虐待事件

2020年03月02日 09時00分

 明治期の日本を代表する文豪芥川龍之介は親子関係に恵まれない人だったそうだ。生後7か月のころに母親が精神に変調をきたし、伯母の家に預けられた。また父は元長州藩士で非常に短気でけんかっ早かったため養家に嫌われ、近付くことを許されなかったという

 ▼そんな複雑な事情があったせいかもしれない。警句集『侏儒の言葉』にこう書いている。「人生の悲劇の第一幕は親子となったことに始まっている」。親も子も、互いを選ぶことはできない。悲劇ばかり多いわけでないのは誰でも知っているが、時に悲劇どころか地獄になる場合があるのもまた確かである。だとしてもこれはひどすぎないか

 ▼千葉県野田市で去年1月、当時10歳の栗原心愛さんが父親の勇一郎被告(42)に虐待され死亡した事件である。裁判が始まっている。26日には既に傷害幇助(ほうじょ)の罪が確定している33歳の母親が千葉地裁で証言。被告との生活について心愛さんが生前、「毎日が地獄」と言っていた事実を明かした。それだけ虐待は続いていたのだ。事件が起こった日も被告は前夜から心愛さんを下着のまま長時間風呂場に立たせ、午後からは冷水を浴びせたり馬乗りになって暴行を加えたりしていた。1月である。逃げ場のない家庭で心愛さんはどれだけ苦しく悲しい思いをしたか

 ▼被告は裁判で反省の態度を示しながらも暴力を否定し、しつけのつもりだったと主張した。何としても子どもに非があったと認めさせたいらしい。死に追いやってなお、心愛さんをむち打つ。残虐と言うほか言葉が見つからない。


検事長の定年延長

2020年02月28日 09時00分

 信用第一とはありきたりな言葉のようで実は人間関係の根幹を成す理念だろう。『論語』の子張第十九にもこんな一文がある。「子夏が曰わく、君子、信ぜられて而して後に其の民を労す。未だ信ぜられざれば即ち以て己れをやましむと為す」

 ▼君子は信用されてはじめて人民を使う。まだ信用されてもいないのに使おうとすれば、人民は君子が自分たちを苦しめようとしているのだと考えるものだ、というのである。根拠のない批判も多いが、この件に関しては安倍首相も自らの信用について真剣に考えた方がいいのでないか。黒川弘務東京高等検察庁検事長の定年延長問題である。黒川氏を次期検事総長に据えたいがために、異例ともいえる法解釈変更までして延長実現に動いているように見えて仕方がない

 ▼検事総長任期は2年が慣例のため、稲田伸夫現総長は今夏で退任する。ところが次期有力候補黒川氏の定年は今月。これに困った政府が窮余の策として国会公務員法の特例延長制度を持ち出したわけだ。内閣に任命権があるとはいえ、検察トップの検事総長は独立性と不偏不党が命。これまでも人事に当たっては属人的になることを避け、制度に則り順当に席を埋めてきた。誰がなろうと法の執行に違いはないとの理念からだ

 ▼ただ、今回のように政府が定年延長を画策までして黒川氏を推すとなると話は怪しくなる。こうした三権分立に直接手を出すことは「モリカケ」や「桜を見る会」とは次元が違う。首相に思惑などなくとも疑いを持たれるだけで信用に傷がつく。ごり押しは控えた方がいい。


ウポポイ

2020年02月27日 09時00分

 日本最北端の地として知られる宗谷岬とノシャップ岬に挟まれた宗谷湾の東南側基部に、増幌という地区があるのをご存じだろうか。同名の川が湾に注いでいて、この川筋に沿った一帯をそう呼ぶ

 ▼ほとんどの北海道地名の例にもれず、地名の由来はアイヌ語である。山田秀三氏は著書『北海道の地名』(北海道新聞社)で松浦武四郎の日記を引き合いに出し、元は「マシ・ウポポ」だったのでないかと推測していた。「マシ」はカモメ、「ウポポ」は歌い踊るさまを意味する。海とつながった食料の豊富な川にカモメが集まり、楽しげに鳴き交わしている土地だったらしい。この「ウポポ」に場所を表す「イ」を付けたのが、白老町ポロト湖畔に誕生する民族共生象徴空間「ウポポイ」だ

 ▼愛称選考資料には「(おおぜいで)歌うこと」とある。4月24日のオープンまで2カ月を切った。先住民族とされるアイヌの歴史と文化を主題とする日本最北の国立博物館や、民族共生公園が一体的に整備された場所である。偶然だが今回の直木賞作品『熱源』(川越宗一、文藝春秋)も、激動の近代を必死に生き抜くアイヌの物語だった。印象的な一節がある。明治初めにロシア領となった樺太から本道に渡ったアイヌがこうつぶやくのだ。「人(アイヌ)は、自分のほかの誰のものでもないんだ」

 ▼どこにいてもアイヌはアイヌなんだという誇りの表れだろう。民族の違いはあれど共存していくには互いを尊重すべきと教えられた気もした。大勢で歌うには協調が不可欠である。ウポポイがそれを学ぶ場になるといい。


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