コラム「透視図」 - 北海道建設新聞社 - e-kensin - Page 231

東京五輪と札幌ドーム

2018年07月25日 07時00分

 例えばの話だがこんなことを考えてみる。猛暑著しい東京を避け、涼しい夏の札幌で各国首脳を集めた国際会議が開かれることになった。開催は8月の5日間

 ▼会場は諸般の事情で大通公園に仮設建物を建設して対応する。工事や準備作業のため6月から3か月間、大通公園は立ち入り禁止にせざるを得ない。大通ビアガーデンは中止、「YOSAKOIソーラン祭り」と北海道マラソンは会場探しを余儀なくされる。もしそんな計画が持ち上がれば、反対の声を上げる人がほとんどではないか。経済的損失も決してばかにならない。おかしな想像を、と思われるかもしれないが、2020年にそれに近い事態が現実に起こりそうなのである

 ▼ただし会場は大通でなく札幌ドーム。東京五輪で7月に5日間、サッカーが行われるため、その前後合わせ3か月以上使用できなくなるというのである。放送機材設置や安全対策など改修の必要があるかららしい。大会組織委員会が示したそうだ。北海道新聞が伝えていた。こうなると組織委から提示された五輪での使用期間「6月1日―9月11日」には、例年ならぎっしり組まれる北海道日本ハムファイターズの試合はおろか、音楽ライブや独自イベントも入れられない。5日間の五輪サッカーのためにである

 ▼国挙げて五輪を成功させる上で本道分散開催も意義ありと理解はできるものの釈然としない。札幌市は今後、組織委と協議を進める中で使用期間短縮を求めていくそうだ。当然だろう。国際イベントだからといって道民の宝をわが物扱いされてはかなわない。


IR整備法成立

2018年07月24日 07時00分

 カジノを含む統合型リゾート(IR)整備法が成立した。政府はこれによって日本の観光立国化をもう一段階引き上げる狙いだが、どうやら世間の評判はあまり芳しくないようだ

 ▼共同通信が21、22の両日実施した世論調査でIR整備法に「反対」する人は64.8%、読売新聞の同日程の調査でも「評価しない人」は62%に上ったという。これまでにない賭博施設なだけに、ギャンブル依存症など懸念を抱く人も多い。実に健全な反応ではないか。ただ競馬、競輪、競艇、パチンコと、賭け事の場は既にたくさんある。大部分の人にとっては単なる娯楽にすぎない。とするとカジノだけ問題視するのも整合性に欠ける

 ▼競馬好きだった小説家吉川英治が随筆「競馬」で社会に害ありと認めながらこう指摘していた。「競馬場の熱鬧は、そのままが、人生の一縮図だと、観るのである。あの渦の中で、自己の理性を失う者は、実際の社会面でも、いつか、その弱点を、出す者にちがいない」。氏の鋭い人間観察である。賭博で身を持ち崩す人はそれがなくてもどこかで道を誤るから、本質は賭博にはないというわけ。氏は右ポケットにその日使うお金を入れて出掛け、勝つと左に収めた。右が無くなると帰ったという。要は節度

 ▼とはいえ射幸心もばかにできない。新法ではカジノに預託金を積めば無利子で貸し付けを受けられる。右ポケットが膨らみ続ければ歯止めが効かなくなる人も出よう。国民が納得する仕組みを整備しなければカジノに市民権が得られないばかりか、政府はIRを元も子も失うことになる。


本州で猛暑続く

2018年07月23日 07時00分

 毎年この時期になると、北海道で暮らしている幸せをひしひしと感じる。本州の方々には全くお気の毒というほかない。連日の猛暑のことである

 ▼このところ毎日、トップニュースに気温と熱中症の話題が並ぶ。それもそのはず。特に関東以南では日中に30度台後半、夜になっても25度を下回らない日が続いている。「熱帯夜だつたおまへは眠れたか」佐塚半三。そんなあいさつが当たり前になっているのではないか。きょうから夏の暑さが最も強まるとされる大暑である。「念力のゆるめば死ぬる大暑かな」村上鬼城。気を抜くと負けてしまうほど厳しい暑さに見舞われるのがこの節気だ。ただし「念力」の強さに自信があっても我慢しすぎは禁物。熱中症による死亡も相次いでいる

 ▼気象庁のアメダス温度は地上1・5mの日の当たらない環境で観測するため、街中や直射日光が当たる場所での体感は発表気温より高くなりがちだ。地面に近い乳幼児や体温調節機能の弱った高齢者には特に目配りが必要である。とはいえ本道もいよいよ夏本番。真夏日の予報も出てきた。道産子にはしんどい季節である。実は暑さに慣れていないため熱中症も決して少なくない。もっとも、気温が最高で30度程度、朝晩涼しい日も多い本道は本州の人にとって天国だろう

 ▼道外ほとんどの小学校で夏休みが始まった。折よく「北海道・北東北の縄文遺跡群」が世界文化遺産の登録候補に決まったところでもある。暑さに疲れた地域の皆さん、避暑と子どもの自由研究を兼ねて家族で本道に遊びに来ませんか。一息つけますよ。


参院選挙制度改革

2018年07月20日 07時00分

 詩人のまどみちおさんは童謡の作詞も数々手掛けている。「やぎさんゆうびん」「ぞうさん」「一ねんせいになったら」。自然と笑顔になる作品ばかりである

 ▼「ふしぎなポケット」もその一つ。「ポケットのなかには/ビスケットがひとつ/ポケットをたたくと/ビスケットはふたつ―」。たたくたびに倍増していくのだからうれしくてたまらない。こう願うのは当然だろう。「そんなふしぎなポケットがほしい」。そんなことが現実にあるわけないと思いきや、案外そうでもなかったらしい。自民党が国会をたたくと、参院議員の定数が一挙に6議席も増えたのである。参院の選挙制度を改革する改正公職選挙法が18日、成立した。比例選候補者名簿の一部に、優先的に当選できる「特定枠」を設けたところが肝である

 ▼これで自民党が自然と笑顔になる作品に仕上がった。合区になったため現在それぞれ1議席の「鳥取・島根」「徳島・高知」の2選挙区で、「特定枠」を使えば各1議席追加できるのである。もちろん自民党がそんな事情を明かしているわけではない。ただそうでもないと6議席も増やす理由が分からない。一票の格差是正が目的なら埼玉選挙区を2増するだけでよかったのである

 ▼地方の声を丁寧に拾い上げるため、各都道府県から最低1人は参院議員を出すべきとの主張は理解できる。とはいえ法律で合区を定めておいて、新たな法律で抜け道を作るのではお手盛りと言われても仕方ない。議席を増やすなら国会を自分のポケットのようにたたいてでなく、国民納得の上でが望ましい。


日欧EPAに署名

2018年07月19日 07時00分

 安倍政権の経済政策「アベノミクス」を支持する米国のノーベル賞経済学者ポール・クルーグマンは、2013年の著書『そして日本経済が世界の希望になる』(PHP新書)でこう提言していた

 ▼「いまこそ世界は日本を必要としている。アメリカ、ヨーロッパ、日本という民主主義国には共通の利害があり、よくコミュニケーションをとって協力し合い、必要なときにはお互いから謙虚に学ばなければならない」。どうやら意外と早く、クルーグマン氏の待ち望んでいた「必要なとき」が訪れたらしい。ただし欧州とだけではあるが…。安倍首相と欧州連合(EU)のトゥスク欧州理事会常任議長らが17日、首相官邸で日本とEUの経済連携協定(EPA)に署名した

 ▼発効すると人・物・金を関税などの障壁なくやり取りできるようになる。その経済規模はとてつもなく大きい。世界の国内総生産(GDP)の約3割を占める自由貿易圏が新たに生まれるのである。世界経済の主導権争いは構図が一変しよう。表立っての反応はまだないが、クルーグマン氏の提言とは真逆の道を行くトランプ米大統領は不満に違いない。最近は相手国に高関税を課すなど盛んに貿易摩擦を引き起こしている。この先また何を仕掛けてくるやら

 ▼一方、国内にも不安はある。特に本道では乳製品が中心だが安い輸入品が増えることによる影響は無視できない。その辺りTPPも含め政府には万全の対策が求められる。その上で公正な貿易の実現とデフレ脱却が共に図られるのなら、欧州との連携はまさに世界の希望となろう。


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