コラム「透視図」 - 北海道建設新聞社 - e-kensin - Page 241

アナログレコード

2018年05月15日 07時00分

 年配の方はご存じだろう。SPやLPのアナログ音楽レコードは誤って引っかいたり、落として傷付けたりすると音が飛ぶようになってしまうことがよくあった

 ▼樹脂盤に音楽情報が刻まれていたため溝が破損すると一巻の終わり。例えばザ・ピーナッツの『恋のフーガ』なら、「追いかけて 追いかけて」プツッ「追いかけて 追いかけて」プツッ、と延々追い駆けてばかりでどこにもたどり着けなくなるのである。ところで国会、中でも野党の大部分もアナログなのか、このところよく音が飛ぶ。「疑惑は深まった」プツッ「疑惑は深まった」プツッ「疑惑は深まった」…。話題は替わっても出てくる言葉はいつも同じ。しかも不思議なことに、深まっても深まっても確たるものにはまるで突き当たらないらしい

 ▼きのうの衆院予算委員会集中審議も質疑の中心は学校法人「加計学園」問題だったが、質問した野党議員によると、先週の柳瀬唯夫元首相秘書官の参考人招致でもさらに「疑惑は深まった」そうだ。そもそも愛媛県職員のメモで分かる通り、柳瀬氏との面会時には「構造改革」と「国家戦略」どちらの特区を使うか入口論に終始していた。さらに獣医学部新設は文科省大学設置審議会が基準に則って審査し認可している

 ▼柳瀬氏の「官邸で会った記憶はない」との発言がいくらお粗末でも、首相が加計側に便宜を図った証拠にはならないのである。何かにつけ政権の「疑惑は深まった」として、国政の重要課題を後回しにする野党の戦略はもう限界だろう。壊れたレコードを聞くのもうんざりだ。


週刊武四郎

2018年05月14日 07時00分

 北海道の名付け親として知られる松浦武四郎は小さいころから旅に憧れていて、16歳の時ついにその思いを遂げるため、親が反対するのを見越して家出した。漂泊の思いやみ難く、というわけだろう

 ▼旅から旅への人生を歩んだ武四郎にしっくりとなじむ逸話ではある。伝記などを読み、そう信じている人も多いのでないか。ところが真相は違うらしい。実は悪事がばれて怒られそうになったため逃げ出したのだとか。その経緯はこうだ。武四郎は当時の学問の師匠平松楽斎が大切にしていた防寒頭巾を無断で道具屋に売ってしまった。師匠が兄を呼び出し事件が発覚。兄が問い詰めようと家に帰ってきたら、武四郎は置き手紙だけ残して既に姿を消していた…

 ▼「松浦武四郎記念館」が監修し、生誕の地である松阪市が発行する『週刊武四郎』で知った話である。この情報紙は歴史作家の河治和香さんが文章を担当。週1回のペースで武四郎の人となりや事績を紹介している。4月に始まったばかりで最新は5号。これがなかなか面白い。家出の話題は4号だが、例えば1号では坂本龍馬との関係を取り上げている。二人が実際に会ったかどうかは不明とした上で「龍馬関係資料の中に、蝦夷地の旅の〈用意ノ道具〉について武四郎さんに聞いた内容がメモとして残されています」

 ▼『週刊武四郎』は51週連載するそうだからこれからもたっぷり楽しめそうである。毎月第2週に本道との関わりについて語ってくれるのもうれしい。同記念館のHPにも掲載されている。興味があればのぞいてみてはどうだろう。


新潟の女児殺害事件

2018年05月11日 07時00分

 何とむごたらしく、卑劣な犯行であることか。新潟市立小針小に通う2年生の大桃珠生さんが絞殺された上、JR越後線の線路に遺棄され電車にひかれた事件のことである。7日に発生した

 ▼身近な子どもを想像して、いたたまれない気持ちになった人も多かろう。残念ながらいまだ捕まっていないが、犯人に対しては憤りを禁じ得ない。常軌を逸している。人の大切な命、尊厳をここまで徹底して踏みにじれるとは。珠生さんは下校途中に行方が分からなくなった。報道によると学校を出たのが午後3時過ぎ。途中で一緒に帰っていた友達と別れ、踏切を渡ったところまでは目撃されているがそこから先の足取りがつかめない。その間、自宅まで200m程度。線路に沿って住宅街が続く直線の通学路だったそう

 ▼犯人は珠生さんが一人になるわずかな隙を狙ってどこかに潜んでいたに違いない。関係があるかは分からないが、珠生さんはその日の登校時にも不審な男に追い掛けられたと友達に話していたという。小学生が通学途中に犯罪の犠牲となる例が後を絶たない。よこしまな人物にとって人目に付かない場所を事前に把握でき、子どもの行動時間も読める通学路は逆に狙い目なのかもしれぬ

 ▼安全なはずの通学路が犯罪者に利用されるなど考えたくもないが、子どもを守るためには厳しい現実に向き合う必要があろう。集団下校、見守り、地域の協力、防犯カメラ。既に取り組んでいるからと安心せず不断に見直したい。しかし今はまず、珠生さんを苦しめた憎むべき犯人を一刻も早く捕まえることだ。


揺れる北朝鮮

2018年05月10日 07時00分

 児童公園で定番の遊具といえば砂場、鉄棒、滑り台といろいろあるがぶらんこもその一つだろう。行きつ戻りつしながらスピード感や浮遊感を味わえる。少々危なげなところも子どもにとっては魅力なのに違いない。身の丈サイズの小さなジェットコースターのようなものか

 ▼「ぶらんこを漕いでは宙に擦れ違ふ」吉村絹子。「ぶらんこ」は春の季語である。友達幾人かと並んで思い思いにこぐのもまた楽しいものだ。こちらは決して愉快とは言えないものの、最近の北朝鮮をめぐる情勢を見ていて不規則に揺れるぶらんこが思い浮かんだ次第。北朝鮮の大胆な揺さぶりに負けぬよう、周辺・関係国も今は調子を合わせて精いっぱいこぐしかない

 ▼それにしても金正恩朝鮮労働党委員長の変節には誰もが意表を突かれたろう。それまで地面から離れずこわごわぶらんこを揺らしていた子どもが、危険を楽しむかのごとく満面の笑みを浮かべ勢いよく立ちこぎを始めたかのよう。急に皆で仲良く遊ぼうとの態度である。早速隣のぶらんこに座って見せたのは中国の習近平国家主席だった。今週含めこの短期間に2度も会談している。韓国の文在寅大統領も4月27日に板門店で金氏と共にぶらんこを楽しんだ

 ▼きのうは東京に日中韓の首脳が集まり、北朝鮮の非核化のため連携を強めることで一致。米国は米朝首脳会談の調整のため、ポンペイオ国務長官を再度北朝鮮に派遣した。さてプレーヤーはそろったがこのぶらんこ、最後は同調して揺らせるか、擦れ違うか。まさか、がき大将が引っくり返すなんてことは…。


花粉症の春

2018年05月09日 07時00分

 少しなまりのある歌い方がなぜだか妙に心地よい。歌手の千昌夫さんのことである。この時期に好きな曲は何かと問われたら、『北国の春』(いではく作詞、遠藤実作曲)と即答する人が多いのでないか。懐かしいふるさとを思い浮かべて朗々と歌う声が耳に残る

 ▼歌い出しはこんなだった。「白樺 青空 南風 こぶし咲くあの丘 北国のああ北国の春」。長野県をイメージしているらしいが本道でも違和感はない。郷愁を誘う歌ではあるが、一部の人にとってはこの冒頭の一節を聞くだけで鼻のむずがゆさが呼び覚まされてしまうかも。筆者もその一人である。日本気象協会の週間花粉情報によると、11日あたりから本道でシラカバ花粉が盛んに飛散し始めるという。ことしもとうとう花粉症の季節が来てしまった

 ▼この花粉、肉眼では見えないため始末が悪い。目が痛がゆいなと思った時にはもう後の祭り。しばらくするとくしゃみと鼻水が止まらなくなる。あまりの鼻水に脱水症状を心配するくらいである。「軽く済んでほしい」が花粉症に悩む者の毎年の切実な願いなのだが朗報はお伝えできそうにない。道立衛生研究所が昨年の気象条件や雌花の量から予測したところでは、ことしのシラカバ花粉量は全道的に多めなのだとか。中でも帯広は「とても多い」らしい

 ▼「銀行へ怪しき身なり花粉症」高崎和音。そうなるのも仕方ない。今季も眼鏡やマスクで鉄壁の防御を固めねばならぬ。晴れて気温が上がり、風の出る日は要注意。「白樺 青空 南風」の日はできるだけ外出を控えた方がよさそうだ。


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