コラム「透視図」 - 北海道建設新聞社 - e-kensin - Page 242

国民民主党設立大会

2018年05月08日 07時00分

 一年のうちで春は秋と並んで結婚式の多い季節だという。暑過ぎたり寒過ぎたりする夏や冬は、出席者に服装など余分な気を遣わせるため敬遠されるらしい。もっとも結婚する幸せな二人にとって挙式の日はどの季節でも春気分なのだろうが

 ▼詩人新川和江さんの作品「結婚」にこんな一節があった。「ひとりではわからなかったことが ふたりではわけなく解ける この不思議さ たとえば花が咲く意味について」。人生の酸いも甘いもかみ分けたベテラン夫婦が聞けばため息の一つも出そうな言葉だが、それはそれ。最初くらいは楽しい夢を見たとしても罰は当たるまい

 ▼さて、こちらは結婚して「ひとりではわからなかったことが ふたりではわけなく解ける」ようになるのかどうか。民進党と希望の党が合流してつくった新たな党「国民民主党」も春の良き日のきのう、設立大会を開いた。基本理念に「自由、共生、未来への責任」を掲げ、政権交代実現のため国民の選択肢の核となる政党を目指すそうだ。大塚耕平、玉木雄一郎両氏が共同代表に就き花を咲かせる意欲満々。ただ、滑り出しから栄養は足りていないようだ。結党前の民進、希望所属国会議員107人のうち新党に参加したのは62人。元首相ら大物議員らも参加を見送った

 ▼結婚に関してはこんな言葉もある。「結婚は雪げしきのようなものである。はじめはきれいだがやがて雪どけがしてぬかるみができる」(『夫婦喧嘩』山本有三)。最近の野党を見ていると、花を咲かせるよりぬかるみに陥る方が多いようだ。国民民主党はどうか。


良薬口に苦し

2018年05月03日 07時00分

 パソコンの直販システムで知られる米国の総合IT企業「デル」はかつて、こんな一文を添えた広告を出していたそうだ

 ▼「あら探しの好きな方、わがままな方、やっかいな質問をする方に申し上げます。ありがとうございます。これからもそのままで、よろしくご愛顧のほど」。創業者でもあるCEOマイケル・デル氏の発案によるものだったという。顧客の声に常時耳を傾け、改善していく姿勢を示したのだとか。「良薬口に苦し」の例えもある。大きな目標を達成するために、喜んで苦い薬を飲む覚悟を持つのは勇気ある態度だろう

 ▼せっかく対話の機運が高まっているのである。北朝鮮も日本を批判するばかりでなく、自ら良薬を口にする度量を見せるべきではないか。というのも北朝鮮メディアが最近米国や韓国への攻撃は抑える一方、日本に対してはひねくれて孤立していると激しい批判を繰り広げているからである。『ニューズウィーク』Web版がジャーナリスト高英起氏の報告として伝えていた。日本が拉致含め人権問題で一歩も引かないことや、諸外国に圧力を緩めないよう働き掛けていることがよほどお気に召さないとみえる。つまりそこが最も痛い部分なのだろう。北朝鮮にとっては国際社会が面倒な人権問題など忘れ、融和ムードに乗って制裁を解除してくれれば万々歳なわけだ

 ▼ただ、この好機をごまかしで無駄にすべきではない。拉致問題解決や核・ミサイル放棄。うるさく言う日本は厄介ではあろうが、その声に誠実に応えることで北朝鮮の未来は格段に明るさを増すのである。


天皇退位まで1年

2018年05月02日 07時00分

 ありきたりの表現だが「激動の1年」という言葉はまさにこの年のためにあるのだろう。今から約30年前の1989年のことである

 ▼主な出来事を振り返ってみると、6月、中国で民主化運動を武力弾圧する天安門事件が発生。11月、東西両陣営分断の象徴となってきたベルリンの壁が崩壊。そして12月、マルタで会談したジョージ・ブッシュ米大統領とミハイル・ゴルバチョフソ連最高会議議長が冷戦の終結を宣言。折しも日本経済はバブル景気が最高潮に達し、海外では共産圏を中心に人々が民主化と自由主義を求め旧体制を強く揺さぶっていた。昭和天皇が崩御し、今上天皇が即位したのも世界がそんな大きな曲がり角に立つ年の1月だった

 ▼陛下も新たな風を身に受けながらの船出だったはずである。その風に押されたのかもしれない。先の大戦の慰霊に力を注がれたこと、平和の時代における象徴の意味を行動で示されたこと、多くの仕事の中でもこの二つには常に陛下の確固たる信念を感じさせられた。この平成もあと1年で幕を閉じ、新たな時代に席を譲る。これが中高年の国民にとって感慨深いのは、天皇皇后両陛下の親しみやすいお人柄だけが理由ではあるまい。少々おこがましいが仲間意識のようなものがあるのでないか。現在60歳前後であれば、その職業生活と陛下の歩みは同時進行だったわけだからである。デフレや大きな災害も一緒に乗り越えてきた

 ▼陛下はことし8月にも本道の利尻島への訪問を検討されているという。ぜひ実現し、激動とは無縁にのんびり過ごしていただきたい。


不登校

2018年05月01日 07時00分

 女子中学生安西こころは「朝、学校に行く時間になると、仮病じゃないのに、本当におなかや、時には頭も痛くなる」。不登校の子どもによく見られる、心因性の身体症状が現れたのである

 ▼実はこの少女、ことし「本屋大賞」に選ばれた辻村深月さんの『かがみの孤城』(ポプラ社)の主人公。物語では不登校に陥ったこころら7人の児童生徒が鏡の向こうの世界にある城に集められ、何でも願いがかなう鍵を探す。意表を突く仕掛け満載のファンタジー小説でとても面白く読ませてもらったのだが、同時に不登校について相当丹念に調べているようで大いに勉強もさせられた。不登校では本人はもちろん、親も教師もかなり苦しんでいるのだとか

 ▼ここ数年、現実でも不登校は増加の一途をたどっている。文科省が昨年10月に発表した小中学校調査によると、01年度から12年度まで減少傾向にあったものの13年度に反転。16年度には前年度比6.7%増の13万4398人と減少前の00年度水準に戻ってしまった。増えた原因は不明だが、不登校の理由は小中共に「いじめを除く友人関係」が飛び抜けて多い。グループに入れなかった、気の合う友達がいない、学級で浮いている…。最初はささいなことでも一度ずれた歯車は容易に元に戻らない

 ▼入学や進級、クラス替えから1カ月。学校では人間関係もほぼ固まったころだ。皆うまく自分の居場所を見つけられただろうか。ゴールデンウィーク明けも不登校が起きがちな時期。子どもたちだけで解決できないときは、大人が温かくしっかり支える必要がある。


解散総選挙

2018年04月27日 07時00分

 少し長いがまずこの報告を読んでいただきたい。「汚職、醜聞、派閥争い、裏とりひき、選良にあるまじき下種な言動―いつまでもくりかえされるこれらの醜態が、国民に、国会議員に対するひどい幻滅と、政治に対するひどいいや気を抱かせてしまった」

 ▼SF作家小松左京の短編「公明選挙」の一節である。このため大部分の国民は投票に行かず、開票してみると候補者が自ら入れた票以外全て無効という結果に。驚くなかれこの作品、1967年というから約50年前の発表である。現在の日本の政治状況と思った人も多いのでないか。無理もない。国の浮沈が懸かる重要課題が国内外でめじろ押しというのに国会は今、主にセクハラ問題で延々と停滞が続く。国政を預かる政治家たちの進歩のなさにはあきれるばかりである

 ▼安倍政権の閣僚の脇の甘さも決して褒められたものではないが、維新を除く野党6党の国会欠席戦術も意味が分からない。国会議員が国会に信を置かずにどうして法治国家が保てよう。おとといは自民の森山裕国対委員長が野党の内閣不信任案提出を前提に解散総選挙をにおわすと、立憲民主の辻元清美国対委員長が「脅しか」と応酬。やれやれプロレスの場外乱闘じゃないんだから。いっそのことリングでも用意しようか

 ▼安倍首相はきのう、解散を明確に否定したが混迷が深まるならそれも遠い話ではあるまい。小松氏は先の短編で、既存の政治家をお払い箱にし信頼できる仲間たちで新たな政治をつくる世界を描いて見せた。さて現実世界の国民はどんな選択をするだろうか。


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