先の日曜日、東日本大震災で壊滅的な津波被害を受けた宮城県東部をコースにした「東北・みやぎ復興マラソン」が開かれた。ことし初開催の大会である
▼なぜ、あえてつらい記憶を伴う場を選んでマラソン大会を企画したのか。それは震災から6年半が過ぎた被災地を駆け抜けながら復興に取り組む現在の姿を見てもらい、未来への変化を感じてほしいとの地元の願いがあったから。その思いは十分伝わったようだ。というのもフル、親子、車いす、ファンの各マラソン合わせて1万6000人ものランナーが集まったのである。筆者もその一人なのだがその6割以上は県外からの参加者だったそうだ
▼走ってみて、こんな大会は他にないと実感した。例えば沿道の声援。「頑張れ」に加え多くの人から「ありがとう」の声が飛ぶ。復興への感謝だという。いつもならランナーが応援へのお礼に返す言葉である。住民と「ありがとう」を交わしながら走っていると次第に一体感が生まれ、胸が震えて仕方なかった。コースは仙台空港に近い岩沼海浜緑地を起点に、行政区域の約半分が浸水した岩沼市と亘理町を通り、甚大な被害を受けた名取市閖上で折り返す。所々に3・11を形にとどめた廃虚があり、慰霊碑があった。かつての集落の名残なのであろう家の基礎も度々目にした
▼地域の名産を使った給食、心のこもったスタッフやボランティアの対応。実に気持ちの良い大会だった。ただ1万6000人のランナーは厳しい現実も同時に胸に刻んだろう。それが復興の次の一歩への大きな力になると信じたい。