コラム「透視図」 - 北海道建設新聞社 - e-kensin - Page 311

恐ろしい薬物依存

2016年12月01日 09時49分

 香ばしいエビの風味にサクサクの食感、適度な塩味とくれば、まさに手が伸びるのを「やめられない、とまらない」

 ▼ご存じカルビーの「かっぱえびせん」である。酒のつまみに、おやつにと、必ず家に置いている人も少なくないのではないか。あまり多く食べるとカロリーと塩分の取り過ぎになってしまうのが少々気掛かりではあるが、だからといって脳が壊されることはない。だが、覚せい剤だとそうはいかない。同じ「やめられない」ものでも結果は雲泥の差。もちろん、覚せい剤が「泥」の方である。2014年に覚せい剤取締法違反で逮捕され、執行猶予されていた歌手のASKA(本名・宮崎重明)容疑者が、おとといまた逮捕された。やはり覚せい剤使用の疑いだという

 ▼筆者も、デュオでのデビュー当時から楽曲を好んで聴き、ソロになってからもアルバム発表を楽しみにしてきただけに、この再びの逮捕は残念を超え幻滅というほかない。加えて薬物依存の恐ろしさをあらためて認識させられた。警察庁の15年「薬物・銃器情勢」によると、覚せい剤検挙人数はここ5年ほぼ横ばいの状態。ただ39歳未満は大幅減、40歳以上が顕著な増加傾向と対照的だ

 ▼乱用者の手記を読むと、最初は「一回なら」「自分は」大丈夫と思うらしい。ところが、一度使えば金も家族も友人も全て投げ出し薬が欲しくなる。脳が意思で制御できないように改変されるのだという。販売手法も年々巧妙化しているそうだ。きょうから師走。1年の疲れもたまっていようが、くれぐれも危うきには近寄らぬよう。


ぞろぞろ

2016年11月30日 10時14分

 毎度おなじみの落語である。稲荷神社の前で茶店を営む老夫婦がひどい客足の鈍さに困り果てていた。最後の頼みと神社に参り、戻ると客がいてわらじをくれと言う。残っていた一足を売ると、不思議なことに上からもう一足出てきた

 ▼雨で道がぬかるんできたため、わらじを求める客は次々訪れる。ところがわらじはどれだけ売っても上からぞろぞろぞろぞろ。おかげで店は大繁盛。その名も「ぞろぞろ」という噺。在庫切れの心配もいらず、必要なものを多くの人に提供できるのだからこんな楽なことはない。年金もそんな具合だといいのだが、現実はそう甘くなさそうだ

 ▼きょうは「年金の日」。折も折、国会は年金制度改革法案でもめている。きのう衆院を通過したが、どちらかというと法案をもむというより議長席周りでもみ合っているという方が適切のよう。ところで法案の焦点は将来にわたって年金を維持するための支給額抑制にある。負担する現役世代の賃金が下がれば、支給額も下げる仕組みだ。民進党などはこれを「年金カット法案」と批判しているが、どこかから「ぞろぞろ」と財源が出てくる秘密でも知っているのだろうか

 ▼政府・与党の前のめり姿勢に懸念を感じたとしても、制度の永続的安定と世代間格差解消のためには早急に調整を始める必要がある。負担と支給に公平を欠く制度は持たない。一方で現役世代の賃金を下げないための雇用経済対策も両輪の一つとして重要だろう。手をこまねいていると、それこそ老後破綻が「ぞろぞろ」出てくることにもなりかねない。


認知症予防にビール

2016年11月29日 10時00分

 本道に縁の深い作家椎名誠氏の並外れたビール好きは、つとによく知られている。数あるエッセイ集のどのページを開いても、必ずと言っていいほどビールを飲んでいる場面に行き当たるくらい

 ▼試みに、手元の『焚火オペラの夜だった』(文藝春秋)を繰ってみると、すぐにこんな一文が出てきた。「一気に夜のビールに強烈に効くヒハヒハウグウグ態勢に突進していった」。実にビール愛あふれる表現ではないか。そのビールの主要な原料であるホップの苦み成分に、認知症の多くを占めるアルツハイマー病を予防する効果があると分かったそうだ。28日付読売新聞が伝えていた。飲料業大手キリンと東大、学習院大の共同研究チームがその仕組みを解明したのだという

 ▼何でもアルツハイマー病は加齢により、「アミロイドβ」という特殊なたんぱく質が脳内に蓄積されることで発症するらしい。苦み成分には脳内の免疫細胞を活性化させる働きがあり、これが「アミロイドβ」を取り除いてくれるのだとか。およそ病気の予防といえば、栄養に気を配った食事を心掛け、規則正しい生活に努め、ストレスをためずに生きることが大切とされる。正直なところ凡人にはなかなか実践できかねる習慣と言わざるを得ない

 ▼それがどうだろう、ことアルツハイマー病に限っては、ジョッキを「ヒハヒハウグウグ」と傾ければいいというのだからビール好きには幸運と言うほかない。まあ実際はそんな単純な話ではあるまいが。さて、もうすぐ忘年会シーズン。飲む口実がまた一つ増えそうな予感である。


譲位議論混迷

2016年11月28日 09時42分

 日本人が独自の文化を多く生み出せた理由について社会学者の橋爪大三郎、大澤真幸両氏が語り合う対談本『げんきな日本論』(講談社現代新書)を最近、興味深く読んだ

 ▼土器や文字、幕藩制などいろいろな話題が俎上(そじょう)に載せられるのだが、中でも目を引いたのはイエ制度の特徴が「本質的に事業体」との大澤氏の指摘である。事業体だからこそ、個人の意思を超えて存続問題が重要になるのだという。これに対しては橋爪氏も、「日本のすべての業務を、それぞれのイエに分担させる、という壮大なシステムです」と応じていた

 ▼戦後、イエ制度は民主主義に反するからと廃止されたが、現代日本にもそれはまだ伏流水のように脈々と流れている。時として「家」へのこだわりを色濃く反映した出来事が起こるのもそのことと無縁ではなかろう。天皇陛下の譲位問題もそうだ。「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」(日本国憲法第1条)の役目を担う「天皇家」の将来を左右する難問である。譲位を進めたい政府は今、頭を抱えているらしい。「天皇の公務の負担軽減に関する有識者会議」の議論が混迷しているのである

 ▼これまで2回開いたヒアリングで専門家の半数以上が、陛下存命中の譲位に慎重・反対の立場という。どうやら家の安定に重きを置いているようだ。ただ報道各社の世論調査では国民の8―9割が譲位に理解を示している。多くの国民の胸の内は、陛下をねぎらいたい気持ち一つだろう。政府はこれほど象徴的な世論も無視するわけにいかないのではないか。


サプライズ

2016年11月25日 09時50分

 米国の映画などで昔からよく見掛けるこんな場面に覚えのある人も多いだろう。一人の女性が「最近、友達が皆よそよそしい。私、何か嫌われるようなことをしたのかしら」と悩み始める

 ▼そんなある日、寂しい気持ちで家路をたどり、玄関を開けると…、飾り付けた部屋に友達が皆集まっていて「サプラーイズ!」。最近は日本でも楽しまれているようだが、誕生日を祝う「びっくりパーティー」だったというわけ。今、米国や日本には、そんな想像もしていなかった出来事にびっくりしたり喜んだり忙しい人がたくさんいるのではないか。株価の高値が続いているのである

 ▼今月8日の米大統領選の前までは、ドナルド・トランプ氏が当選すれば株価は暴落するとの予想ばかり聞こえていた。ところがダウ平均株価は22日のニューヨーク株式市場で1万9023㌦と、終値としては初めて1万9000㌦を超え、最高値を更新したという。きのうの日経平均株価も、終値が1万8333円となり、6日続伸した。さらに円も、24日午後5時現在で1㌦113円と、かなり円安に振れている。トランプ次期大統領の経済政策への期待というが、事前の評判を考えると不思議というほかない

 ▼つまり、「サプライズ」など全く知らないふりをして、裏ではこっそりパーティーの準備にいそしんでいた金融・財界関係者も大勢いたということだろう。まあ、手の内を知られないようにするのがトランプ遊びの鉄則で、円安株高は日本にとって好材料とはいえ、まんまとだまされたようで何やらふに落ちない。


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