コラム「透視図」 - 北海道建設新聞社 - e-kensin - Page 314

早すぎた大雪

2016年11月08日 09時12分

 きのうは立冬だった。とはいえまだ11月の初め。例年なら本道も、そろそろ雪に備えようかと考え出すくらいのころだろう

 ▼そんな心の隙を突いた6日未明からのこの大雪である。雪かき道具は、冬靴は、車のタイヤはと、あたふたしたお宅も多いのではないか。「立冬や白骨都市の観覧車」和田悟朗。観覧車だけならその美しさに感嘆の声も上がろうが、街を厚く埋め尽くす重たい雪を前にしてはため息しか出ない。冬型の気圧配置が強まったところに北極由来の寒気が入り込んだとのこと。寒い部屋でクーラーを最大にしたようなものだろう。自然に向かって文句を言うわけにもいかぬが、迷惑な話である

 ▼6日までの累積降雪量は、多い所で朱鞠内60cm(平年値15cm)、ぬかびら源泉郷54cm(同0cm)、西興部56cm(同3cm)もあったのだとか。札幌中心部も6日午前で23cmの降雪を記録。1953年の統計開始以来、11月上旬に20cm以上降るのは初めてというから、やや愚痴が過ぎたとしてもやむを得まい。「ふんはりと雪の田畑の起伏かな」黒川能女。雪もただ観賞するだけなら風情もあるが、生活に支障を来したり事故を招いたりするのはいただけない。実際、今回の雪が原因で死亡交通事故も起きていると聞く

 ▼あすからは急速に発達する低気圧の影響で、再び大荒れの天気になるそうだ。きのうはちょうど10年前、佐呂間の工事事務所で9人が竜巻に遭い亡くなった痛ましい災害の日でもある。このところ本道は相次ぐ台風上陸など異常気象続き。できるだけ心の隙を突かれぬよう用心を。


隣国の伏魔殿

2016年11月05日 09時50分

 東京都が移転計画を進める豊洲市場の盛り土問題で、石原慎太郎元都知事が「東京は伏魔殿だ」と言ったのはまだ記憶に新しい

 ▼「悪事・陰謀などが陰で絶えずたくらまれている所」(『広辞苑』第三版)の意味で使ったのだろうが、新施設の安全性や機能にほぼ問題がないと分かってきた今となっては、その言葉も落ち着き所を失った。と、思っていたら、何とお隣の国がその言葉を引き受けてしまったようである。韓国の朴槿恵大統領が親友の民間人女性に機密を漏らし、助言を仰いでいたことが明るみに出た件だ。それだけでも重大な事態だが、その女性は大統領との親密な関係を利用して数々の不正も働いていたという。大統領側近も深く関与していたというから、国政の中枢である大統領府がまさに伏魔殿と化していたわけである

 ▼検察の特別捜査本部は3日、職権乱用共犯と詐欺未遂の容疑で女性を逮捕。きのう、朴大統領も記者会見で疑惑について謝罪し、捜査には誠実に臨むことを表明したそうだ。理解に苦しむのは、発覚してすぐ朴大統領が秘書官ら側近8人を更迭して、問題をやり過ごそうとしたことである。これでは取り巻きが全て勝手にやったと言わんばかりではないか。しかもそれで収まらないと見ると今度は独断で野党に近い学者を新首相に指名し、当の野党から総スカンを食う始末

 ▼打つ手がことごとく責任逃れのように見える。国民も怒り心頭に発していよう。韓国ではよく政権末期に大統領絡みの醜聞が起きるが、魔がぬくぬくと育ちやすい環境でもあるのだろうか。


寂しい学校給食

2016年11月04日 09時40分

 おいしいものを食べると、ほっぺたは落ちないまでも自然と頬が緩んで笑顔になる。どなたにも経験のあることではないか。その年の新米を初めて口にするときもそうだ

 ▼先日立ち寄った北広島市内のくるるの杜に岩見沢の「情熱米ななつぼし」があり、早速購入した。わが家でことし最初の新米である。炊きたてのそれは香り高く、まずそれだけを頬張ってみたが口に新米特有の新鮮な甘みが広がり抜群においしい。新米そのものの味を堪能した後は一緒に買ってきた平飼い卵で卵かけご飯を楽しんだ。割ると黄身は色が濃くぷくりと盛り上がっている。ご飯にしょうゆを回し、かき混ぜずそのままのせた。この方が濃厚な黄身の味を感じられるのである。すぐに茶わん2杯を平らげた。食欲の秋とはよく言ったもの。新米も大いに貢献しているに違いない

 ▼いつもならこの時期、学校給食もその新米になり子どもたちの食育にも役立っているはずなのだが、札幌市内の一部の小中学校ではそうもいかないようだ。学校施設のボイラ用煙突でアスベストを含有した断熱材の落下が見つかり、給食を調理できなくなったのである。1日現在、給食の提供を受ける子学校も含め約30校、1万3000人の児童生徒が簡易給食で我慢を強いられているそうだ。パンと牛乳におやつ程度というから、育ち盛りの子どもたちには少なかろう

 ▼市教委のずさんなアスベスト調査が原因とのこと。飛散すると危険な物質ゆえ安易に処理するわけにもいかないが、一日も早くおいしい給食で子どもたちの笑顔を取り戻したい。


善良な男

2016年11月02日 09時57分

 アイヌ民話に、狩りをするたびカラスに肉を分けていた善良な男の話「カラスの恩返し」(すずさわ書店『炎の馬』)がある

 ▼その性格の良さから男は悪い女神にほれられ、山に閉じ込められてしまうのだが、世話になっていたカラスが男を救い出す。民話は教える。狩りに行っても全部を自分のものにはせず、これはカラスの分、あれはキツネの分と、「他の生き物のことも忘れないようにするといいことがある」。同じ土地に住む者同士、仲良く暮らしていくために、お互いを気遣い合おうということだろう。そう簡単でないのは重々承知しているが、北方領土問題も何とかそうできないものか。これもその一歩になればいいのだが

 ▼北方四島の元住民でつくる千島歯舞諸島居住者連盟の脇紀美夫理事長が10月31日に首相官邸を訪れた際、政府方針で交渉がまとまるならその結果を理解すると記者団に述べたそうだ。政府方針とは平和条約締結にあたり、事実上四島一括返還にはこだわらないということである。元島民の方々にすれば、故郷を分断する可能性の高い方針を認めるのは断腸の思いだったろう。道内にはこれまで分割論や二島先行論を表立って主張するのがはばかられる風潮もあった

 ▼ただ、戦後70年以上たって国際情勢は変わった。社会主義国ソ連が崩壊してからも、もう25年である。「現実を考えると」の文言が妥協を示すものでなく、前向き思考にさえ感じられる昨今だ。さて来月は日本で日露首脳会談がある。安倍首相もプーチン大統領も「善良な男」なら、いいことがあるかも。


日本ハムが日本一

2016年11月01日 09時30分

 「あまロス」なる言葉が、一時期はやったのをご存じだろうか。アイドルを目指す女性の成長と東北復興を描いて大人気を博したNHK連続テレビ小説「あまちゃん」(2013年)が終了し、寂しさで心にぽっかり穴が開いた気持ちに陥る人が続出したため生まれた造語である

 ▼ロスは「失う」の意味だ。その伝でいくと今、ほとんどの道民は「ハムロス」だろう。先の日曜以降、6時過ぎになると妙に物足りない。熱狂と興奮を味わわせてくれたSMBC日本シリーズ2016が終わってしまったからである。あれだけ面白い試合を連日見せられたら、それがもう見られないと気付いたときの反動も大きい。ただ、その心の空白を埋めてなお余りある喜びが胸を占める。何せ北海道日本ハムファイターズの優勝、日本一である

 ▼選手たちのプレー、監督の采配、チームの結束力と不屈の精神。何もかも素晴らしかった。もちろん好ゲームは好敵手あってこそ。広島東洋カープもまた熱い魂を持ったチームだった。それにしてもこの日ハムの強さはどうだ。チームとして若く、開幕前の評価もそう高くはなかったはず。ところが困難を乗り越え日本一になってみれば、誰もが同じ感想を抱いたろう。「これぞ日ハム」

 ▼ペンシルベニア大心理学教授アンジェラ・ダックワースの『やり抜く力』(ダイヤモンド社)に、「偉大な選手になるには、偉大なチームに入るしかない」と書いてあった。日ハムにも選手を偉大にする文化があるに違いない。来季も期待できる。そしてまたうれしい「ハムロス」に。


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