コラム「透視図」 - 北海道建設新聞社 - e-kensin - Page 316

京都は嫌い?

2016年10月22日 09時30分

 京都にはどんな印象をお持ちだろう。それぞれとは思うが、歴史の古さや静謐(せいひつ)さの他に、たおやかな人々、も一つ挙がるのではないか。ところが、井上章一国際日本文化研究センター教授の『京都ぎらい』(朝日新書)を読むと、その見方は一変する

 ▼京都には街中である洛中とその周縁部の洛外があり、洛中人が洛外を見下す態度が著しいというのだ。しかもそれがいんぎんで一層いやらしいとのこと。地域の姿や性格には多様な側面があり、少し触れたくらいでは分からないということだろう。その京都府に差をつけて、今回も北海道が1位を獲得した。ブランド総合研究所が19日に発表した「地域ブランド調査2016」の都道府県の魅力度ランキングである

 ▼8年連続の1位だというから道産子としてはうれしい。同時に発表された市区町村のランキングでも函館市が1位を保った。本道勢は3位札幌市、4位小樽市、6位富良野市とベスト10に4市が入る健闘ぶり。その人気は根強いようだ。北海道新幹線の開業効果で北斗市の順位も上がったらしい。認知度や観光意欲度が増している。ただ、心配な結果もあった。北海道は首位こそ維持したものの評価点は年々低下の一途をたどり、今回54・2。ピークだった11年の70・7を16・5も下回ったという。函館や札幌も同じ低落傾向にあるそうだ

 ▼観光に注ぐ力は強くなっているにもかかわらず、反比例するかのようなこの動き。はて一体どうしたことだろう。知らぬ間に「北海道ぎらい」の論が生まれていなければいいのだが。


譲位のあり方

2016年10月21日 09時40分

 言葉の使い方というのはなかなか難しい。明らかな誤りの場合は別にしても、何げない言い回しが時に人の心を深く傷つけることがある

 ▼例えば重い病気で床に伏せっている友人を見舞い、元気づけるため「大丈夫だからね」と声を掛けることがあるだろう。その言葉を聞いた友人は、「そうか自分はやっぱり大丈夫じゃないんだ」と気落ちするかもしれない。隠そうとしても、真意は伝わってしまうものなのである。皇后さまもそうだったようだ。きのう82歳の誕生日を迎えられたのを機に、報道で「生前退位」との言葉に接したときの印象を明かされた。宮内庁記者会の質問に、文書で回答されたそうだ。そこには、「一瞬驚きと共に痛みを覚えた」と記されていたとのこと

 ▼「生前」には「死」の内意が込められているのだから、繊細な言語感覚を持つ皇后さまがそれに気付かないわけがない。皇后さまでなくとも、「生前退位」の語の響きに違和感を覚え、心ない言葉と思った人も少なくないのではないか。「この年の事無く明けて大君の相撲の席に在せるうれしさ」。天皇陛下が健康で世に変事もなく、いつも通り初場所に来られた喜びを詠んだ2006年の皇后さまの歌だ。常に陛下を気に掛けているのだろう。連日聞く人格を無視するかのような「生前退位」の言葉に悲しみを感じていたとしてもおかしくない

 ▼両陛下は即位以来、人間としての象徴の活動がどうあるべきか模索してきた。国民の理解も深まっている。政治家や官僚は後れをとっていないか。言葉一つにもそれは表れる。


日本シリーズ

2016年10月20日 09時30分

 ある男がトウモロコシ畑をつぶして野球場を造ると、不思議なことに亡くなったはずの伝説の名選手「シューレス・ジョー」がそこでプレーしに現れる

 ▼W・P・キンセラの同名の小説(文春文庫)だが、これを元にした映画『フィールド・オブ・ドリームス』の方が多分有名だろう。男は観戦しながら思う。「野球はあらゆるゲームのなかでも最も完璧で、ダイヤモンドのように堅固で、真正で、純粋で、貴重だ」。ことしはとりわけ、この思いに共感する人が多いのではないか。「SMBC日本シリーズ2016」がいよいよ今週土曜日、22日から広島のマツダスタジアムで始まる。北海道日本ハムファイターズ対広島東洋カープ。勝負の神様も随分と粋な対戦を用意してくれたものだ

 ▼双方とも地域密着型の球団で、たたき上げの選手が目立つ。ファンも熱い。しかも日ハムは10年ぶり3度目、広島は32年ぶり4度目の日本一挑戦。どちらもしばらく遠ざかっていた。思い入れしてしまう要素がたっぷりある。盛り上がるお膳立ては整い、あとは開幕を待つだけと思っていたら、広島の黒田博樹投手の突然の引退表明ときた。大リーグの20億円オファーを蹴って広島に戻り、その「男気」が絶賛された黒田投手である。これでチームが燃えないはずはない

 ▼日ハムでやはり引退する武田勝投手の「俺のために優勝しろ」が、クライマックスシリーズで選手らの力になったのは記憶に新しい。日ハムには早く優勝を決めてほしいが、夢のようなゲームを長く見ていたい気もする。ぜいたくな悩みだが。


巨大空港

2016年10月19日 09時40分

 奇抜な発想で知られる作家筒井康隆の『現代語裏辞典』(文春文庫)に、「空港」の項の説明としてこうあった。「垂直離陸できる航空機ばかりになればただの空き地」。なるほどその通り。思わずニヤリとさせられたが、どうやら現実は逆方向に進んでいるらしい

 ▼『ニューズウィーク日本版』(10月11日号)の「未来の空港」特集によると世界は今、メガ・ハブ空港という巨大化競争の時代に入っているのだとか。現在はまだどこにもないが、年間1億5000万人以上の旅客処理能力を持つ空港を通称でそう呼ぶ。羽田の2倍の能力だ。同誌が「モンスター」と言うように途方もない規模である。近い将来、ドバイやイスタンブールで供用開始を予定しているという

 ▼そんな華々しい計画がある半面、世界の空港の4分の3は収益を上げていないというから驚く。黒字を目指して手を打ちたくとも地理的制約や増便の難しさ、施設拡張の限界、騒音など空港特有の課題が数多く目の前に横たわり簡単ではない。ところで、利便性の向上と魅力づくりが必要なのは、国内の地方空港も同じである。本道でも、新千歳と釧路、稚内、函館、旭川、帯広、女満別の7空港の運営権を一括で民間委託する取り組みが進む

 ▼先日も北海道経済連合会など道内経済4団体が国土交通省と道に、一体的運営で地域活性化の最大の果実が得られるよう提言・要望書を提出していた。つまり7空港を一つの巨大空港に見立てるわけだろう。楽しみである。どれだけの可能性がこの空港から未来に向け離陸していくのか。


熊本地震半年

2016年10月18日 09時39分

 拝啓 騒がしかった気候もようやく落ち着きを取り戻してきた晩秋の折、熊本の皆さんはいかがお過ごしでしょうか

 ▼あの震度7の大地震からはや半年が過ぎました。毎日の暮らしは、生活の糧は、そしてインフラは、順調に復興しつつあるのだろうかと気に掛かっています。東日本大震災の記憶もまだ生々しく残ることし4月、日本国内で再びあんな惨状を目にすることになろうとは、一体誰に想像できたでしょう。聞けば亡くなった方は、14日現在で震災関連死も含め121人に上っているとのこと。せめて被災後にけがや病気で亡くなる関連死がもっと少なければと悔やまれます。被害の大きさ、深刻さと同時に、被災者ケアの大切さも強く考えさせられたことでした

 ▼9カ所の避難所にいまだ188人の避難者がいることにも驚かされます。ことしは追い打ちをかけるように豪雨も相次ぎました。さらに復興に水を差す阿蘇山の爆発的噴火。軽々しいお見舞いの言葉もはばかられるほどの試練が続きますね。北海道もこの8月、上陸と接近合わせて6個の台風に襲われました。河川が氾濫して家屋や田畑が泥水にのまれ、交通網もズタズタです。亡くなった方もいます。甚大な被害でした。復旧には相当な時間とお金、労力が必要でしょう。あらためて身に染みています。牙をむいた自然は恐ろしい

 ▼今私たちは思いを等しくする者として一層願わずにいられません。熊本の皆さん頑張って。体調を崩しやすい季節の変わり目です。くれぐれもお体には気を付けて毎日をお過ごしください。    敬具


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