コラム「透視図」 - 北海道建設新聞社 - e-kensin - Page 120

年末ジャンボ宝くじ

2020年12月01日 09時00分

 井上陽水さんの時代を超える名曲『夢の中へ』(1973年)は、よく聞くと何を言いたいのか分からない歌詞だが、物が見当たらないときについ口ずさんでしまう不思議な魅力がある。ご同様という方も少なくないのでないか

 ▼「探しものはなんですか? 見つけにくいものですか? カバンの中もつくえの中も 探したけれど見つからないのに まだまだ探す気ですか?」。歌い出しの一節が効いているのである。探したいものは数々あれど、この時期筆頭に挙がるのはやはり〝運〟だろう。1等・前後賞合わせて10億円の恒例「年末ジャンボ宝くじ」が先週、発売になった。1等7億円の当選確率が2000万分の1といわれているから、かなり見つけにくい運であることは間違いない

 ▼真偽のほどは定かでないが、不景気になると宝くじの売り上げは逆に伸びると聞く。コロナ禍の中で経済の屋台骨が揺らぎ、収入の減少に悩む人が多い昨今である。いつにも増して一獲千金を狙いたい人は多いに違いない。NHK『ドキュメント72時間』で以前、高額当選が続出する堂前宝くじ店(旭川市、既に閉店)を紹介しているのを見た。客の一人に1000万円を当て倒産を免れた中小企業経営者がいたのを覚えている。「何事のおはしますかは知らねどもかたじけなさに涙こぼるる」(西行)の心境だったろう

 ▼ことしはできるだけたくさんの人が宝くじに救われ、その心境を味わえるといいのだが。陽水さんは「探すのをやめたとき 見つかる事もよくある話で」とも歌っていた。運は天に任せるしかない。


あすから師走

2020年11月30日 09時00分

 1月にこの新型コロナウイルスの存在が明らかになったばかりのころは、まさかここまで騒動が長引くとは考えていなかった。ほとんどの人がそうでないか。まさにコロナで始まりコロナで終わる1年である。早いものであすはもう12月だ

 ▼「電飾の光さざめく師走の夜」牛島淳吉。例年なら忘年会だクリスマスだと、過剰なくらい明るく輝く街である。ただ、外出自粛が要請されていることしは電飾も控えめだろう。他県に比べ感染拡大が著しい本道では、道が集中対策期間を来月11日まで延長。特に感染者の多くを占める札幌に関しては、市内全域の接待を伴う飲食店に休業要請までする念の入れようである。歓楽街には閑古鳥が鳴き、繁盛するのはコロナばかりとは何とも寂しい

 ▼ところが諸外国を見渡せば日本はまだましな方である。1日当たりの感染者数や死亡者数が日本より1、2桁多い国は先進国にざら。最も深刻な米国では感染者数が約16万人、死亡者数が1000人以上というから大変なことだ。米大手情報サービス会社ブルームバーグが最近、「COVIDレジリエンスランキング」を発表した。それによるとコロナ禍の今、最も安全な国はニュージーランドで、2位が僅差で日本だという。致死率の低さや充実した医療体制、民主的な措置が高く評価されたようだ

 ▼危険を叫ぶテレビだけ眺めていると、日本はもう終わったかのような気にさせられるが、客観的な指標ではかなり高く評価されているのである。自信を持ってこの場を乗り切り、来年の今頃は師を思う存分走らせてあげたい。


中国との関係

2020年11月27日 09時00分

 望まぬ行為に手を染めねばならないときが人生にはある。背に腹は代えられぬ、というわけだ

 ▼例えば給料日はまだ先なのに、生活費を全部使ってしまったとしよう。悪いことに家には食べる物が一つも残っていない。これはもう、満杯になるまで使わないと固く心に決めていたブタの貯金箱を割るしかなさそうだ―。まあ、この程度の小さなことは誰にでも経験があろう。結局は後になって後悔するのが常なのだが。政府がにわかに中国との協調ムードを高めている。日本を訪れていた中国の王毅外相は24日に茂木外相、25日に菅首相と相次いで会談。ビジネス交流の再開を宣言し、融和を演出した。表舞台を見る限り、日本側の対応は歓迎一色だ

 ▼新型コロナウイルスに痛め付けられた経済を立て直すには、多額の貿易取引が見込める中国との関係を改善するしかないとの判断だろう。やはり背に腹は代えられぬ、というわけか。ただしこちらは、いつ爆発するか分からない巨大な火薬庫のような貯金箱である。中国はこのところ国際的に孤立を深めている。ウイグルやチベット、モンゴルでの人権抑圧に加え、香港では一国二制度の約束を破り民主活動を弾圧。領土拡張の野心も変わらない。ウイルスの武漢発生を当初隠していたのも印象を悪くした

 ▼何より尖閣諸島沖では連日、中国公船が威圧行為を繰り返している。なのに24日の会談後の記者会見で、王毅外相が尖閣は中国の主権下にあると断言したのに、茂木外相はひと言も反論しなかった。他国はどう見たろう。大きな後悔につながらねばいいが。


川辺川ダム建設容認

2020年11月26日 09時00分

 土木学会が認定した「選奨土木遺産」の一つに柳原水閘(すいこう)がある。千葉県松戸市西部の坂川が江戸川に流れ込む合流点付近に造られた樋門で、1904(明治37)年に完成した

 ▼坂川は古くから逆川とも呼ばれ、増水時には江戸川から逆流した水で一帯がいつも氾濫被害に遭っていたらしい。そこで造られたのがこの水閘だ。増水時にゲートを閉め、江戸川との関係を切ることで被害を軽減できたのである。上流側通水部はれんが造り4連アーチが強度を確保しながら、美しさも兼ね備えて風景になじむ。施設ができてやっと住民の生活と農業は安定したのだった。地域の課題を土木技術が解決した好例だろう

 ▼こちらもその技術が役立てばいいのだが。熊本県の蒲島郁夫知事が先週、これまで反対していた川辺川ダムの建設を一転容認した。遊水地設置や堤防強化などを組み合わせた「脱ダム」治水を目指してきたが、遅々として進まず、昨年7月の球磨川氾濫でついに甚大な被害を出したためである。清流と、川と共にある暮らしを守りたい。その願いはよく分かる。ただ根本的治水対策もせず、毎年のように人命と財産が失われるのを見過ごすわけにはいかない

 ▼通常時は川をそのまま流し、増水時のみ水を調整する貯水機能のない流水型ダムを知事は構想しているという。土木技術の多くは標準化されているが、どこまで地域特性を考慮し、オーダーメードのように働かせられるかで真価が決まる。柳原水閘はそれを教えていよう。いざ建設となれば、川辺川ダムも後世に誇れる施設にしたい。


菅首相の力量は

2020年11月25日 09時00分

 米軍には目的を明確に定め決定的な戦力で最短の勝利を目指す「パウエル・ドクトリン」の原則があるそうだ。それを実行していたコリン・パウエル元統合参謀本部議長の名が冠された

 ▼作戦遂行の基本は〝熟慮の上で〟だそうだが奇襲など突発的事態の場合は変わるらしい。「決定的であろうがなかろうが、政治目的がはっきりしていようがいまいが、世論の支持があろうがなかろうが、行動しなければならない」。自著『リーダーを目指す人の心得』(飛鳥新社)でパウエル氏が説いていた。同書を愛読する菅首相はこの一節を今、あらためてかみしめているかもしれない。新型コロナウイルスの第3波に襲われ、難しいかじ取りを迫られている

 ▼ここまでは高い支持率を背景に、縦割り行政の改善やデジタル化の推進に一定の成果を上げてきた。長らく温めてきた政策を実行に移す攻めの展開ができたからだろう。たっぷり時間をかけて準備してきた技を披露したようなものだ。いわば勝って当然の戦である。そこに第3波の奇襲を受けた。守りながら有効な手も打つのでなければ負けは確実。先が読めない上に持ち手も少ない。ここをどう乗り切るかで、安倍氏の七光りでないリーダーとしての菅首相の本当の力量が測られよう

 ▼最近の様子を見る限りそれはあまり芳しくない。こと感染対策に関しては顔が見えないのだ。縦割りの弊害を訴えていたころの意気込みはどこへ行ってしまったのか。今は「世論の支持があろうがなかろうが、行動しなければならない」ときである。菅首相が前面に立たねば。


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