誰にでも1冊や2冊、子どものころにお気に入りだった本があるのではないか。小説家の角田光代さんにとってそれはスウェーデンの児童文学作家リンドグレーンの『長くつ下のピッピ』だったそうだ
▼その本を読んだ幼かったころの記憶を、エッセー「真に出会うと」にこう記していた。「だれよりもこの子と仲良くなりたい、この子のようになりたいと、幼き日に私は願った」。一番憧れの友だちだったのだろう。子どもが成長していく過程で、本が現実の出来事以上に大きな力になることもある。こちらの本もそんな力に満ちているのは間違いない。「小学生がえらぶ!〝こどもの本〟総選挙」で「最強の本」が決まり、こどもの日に発表になった
▼1位に輝いたのは『おもしろい! 進化のふしぎ ざんねんないきもの事典』(高橋書店)。昨年の第1回に続き2連覇というからどれほど人気が高いか分かる。子どものために購入し、既に家にあるという人も多いのでないか。5―7位もその続編が占めた。総選挙は全国の小学生に「今まで読んだなかで1番すきな本」を投票してもらうもの。今回は約25万人が参加したという。「ざんねんないきもの」は「オオアタマガメは頭が大きすぎて、こうらに入らない」など生き物のこっけいな生態を絵入りで紹介する本である
▼子どもたちは大いに笑いながらも、不利や失敗をものともせず力一杯頑張る生き物の姿に深く共感するらしい。多くの小学校で休校が延長された。せっかくの機会である。本を介してこうした「真に出会う」経験を増やせるといい。