コラム「透視図」

英国EU離脱

2016年06月27日 09時04分

 ▼イソップ物語には「ウサギとカメ」や「北風と太陽」などいろいろな話がある。誰もが記憶の引き出しに幾つか話をしまっていよう。その中に「カエルと井戸」はあるだろうか。こんな話である。一緒に暮らす2匹のカエルがいた。暑い夏に沼地が乾いたため新天地を求めて旅に出たそうだ。探し歩いているうち1匹のカエルが深い井戸を見つけた。「冷たくて気持ちよさそう。飛び込んでここに住もうか」

 ▼もう1匹のカエルは少し賢かったらしい。その問い掛けにこう答えたのである。「そんなに慌てるな。もしこの井戸があの沼地のように乾いてしまったらどうやって出るんだ」。行動を起こす前にもう一度熟考すべきことを教えるが、英国は今回、この賢いカエルより1匹目のカエルの考え方を選んだようだ。欧州連合(EU)離脱か残留かをめぐって国を2分する戦いを繰り広げた国民投票は、僅差だが離脱派の勝利で終わった。大方の予想を覆す結果に、驚いた人も多かったろう。

 ▼きのうはポンド売りのあおりを受けて円高が進み、日経平均株価も一時下げ幅が1300円を超えた。ただ最も衝撃を受けているのは当のEUだろう。こうなると先の伊勢志摩サミットで安倍首相が世界経済の現状について語った「リーマンショック前に似ている」の言葉が、何やら予言めいて思い出される。それにしてもこれほど英国内で移民制限と雇用難、反EUの声が強くなっていたとは。英国は重大な岐路に立った。さて飛び込んだ井戸は快適か、それとも乾いた不毛の地か。


沖縄慰霊の日

2016年06月24日 09時17分

 ▼47都道府県の中で片や北東の端、片や南西の際と最も距離が離れている地域なのだが、北海道と沖縄には共通点がある。それは何か。聞けばほとんどの人が「確かにそう」とうなずくだろう。答えは地元愛が並外れて強いこと。『週刊ダイヤモンド』がことし3月26日号で、ブランド総合研究所がまとめた「都道府県出身者による郷土愛ランキング」を紹介していた。それを見て再認識させられたのである。

 ▼「愛着度」の指標で北海道が1位、沖縄が2位だった。実際、就職や進学では地元志向が強く表れるとの話を周りでもよく聞く。沖縄もきっと同じだろう。きのうは住民の4人に1人が亡くなったといわれる太平洋戦争末期の沖縄戦から71年目の「慰霊の日」。平和祈念公園で行われた戦没者追悼式をニュースで見ながら、人も古里も徹底的に破壊された沖縄の悲しみを思うとともに、それを乗り越えてなお変わらぬ郷土愛を抱き続けている人々に少なからず感銘を受けたわけなのだ。

 ▼戦後も占領、米軍駐留と過酷だった。郷土愛を失わなかったのは北海道同様、おおらかさを育む土地柄故だろう。ただ基地問題に関しては日本人の多くがそのおおらかさに甘えていたのでないか。夏目漱石は『道草』に「一遍起こった事は何時までも続くのさ。ただ色々の形に変わるから他にも自分にも解らなくなる」と書いた。沖縄にとって基地は戦争や占領が形を変えたもの。沖縄の郷土愛が、多くのしかばねをも包み込んだものであることを忘れては、問題の解決などできない。


無差別殺人

2016年06月23日 09時17分

 ▼ニュースを見て、「またか」と嘆息した人も少なくなかったろう。「イオンモール釧路昭和」で21日起こった無差別殺人である。阿寒町の33歳の男が突然女性客らを切りつけたという。68歳の女性一人が刺されて死亡し、やはり女性ばかり3人が重軽傷を負ったそうだ。不幸にもその場に居合わせ、巻き込まれてしまった被害者のショックはいかばかりか。痛ましいことだが、この種の事件が後を絶たない。

 ▼容疑者の男には自分の人生を終わりにしたい願望があり、「人を殺して死刑になりたかった」旨の供述をしているらしい。事実とすれば身勝手極まる。「どんよりとくもれる空を見てゐしに人を殺したくなりにけるかな」(石川啄木)。生きていれば、ふとそんな気持ちにとらわれることもあろう。ただ、そこであらためて命の尊さに気付くのが当たり前の人間の姿である。悩みがあったとも伝えられるが、包丁を準備し商業施設で女性ばかりを襲う計算高さには卑劣さしか感じない。

 ▼思い出すのは東京の秋葉原で2008年、当時26歳だった犯人が7人の命を奪い、10人に重軽傷を与えた無差別殺傷事件である。共通するのは自分の中の空虚を、他の誰かの命で埋めようとする悪質で危険な態度だろう。わがままな破壊欲求をくい止めるすべは何かないものか。これも啄木だが、詩「拳」から一節を引く。「やり場にこまる拳をもて、お前は誰を打つか。友をか、おのれをか、それとも又罪のない傍らの柱をか」。他の誰でもない。打っていいのは「おのれ」だけだ。


第24回参院選

2016年06月22日 09時26分

 ▼漫画雑誌『週刊少年ジャンプ』(集英社)で長年人気を博している「こちら葛飾区亀有公園前派出所」(作・秋本治)がこの6月で誕生40年を迎えたという。ご存じ同派出所の両津勘吉巡査、通称「両さん」が破天荒な行動で次々騒動を巻き起こすドタバタ劇である。連載開始当時小学生だった読者が今、50歳前後になっているのだからその息の長さには驚くばかり。何を隠そう当方もファンの一人である。

 ▼時に世相を風刺したり、深いうんちくを傾けるのも魅力の一つ。1986年の作品には両さんが参議院選挙に立候補する「道楽党起つ」(コミックス51巻)の話があった。円高なのに外国製のおもちゃが安くならないことに両さんは「政治が悪い!」と怒り出す。義憤に駆られたまでは良かったが、有権者にいい顔をしようとすぐ悪乗りする。出した公約は「週休四日! 一日の労働時間三時間! バカンス二か月!」。さらに若者や主婦の支持も得ようとどんどん大風呂敷を広げる。

 ▼さて現実の各党の公約はどうなっているだろう。7月10日投開票の第24回参院選はきょうが公示日である。アベノミクスや消費増税延期への評価、憲法改正の是非といった辺りが争点の中心になろう。国政選挙で初めてとなる10代の若者たちの投票行動も気になるところ。安倍政権打倒を旗印にした野党共闘に対する有権者の反応も一つの見どころか。ただ選挙となると決まって増えてくるのが候補者たちの美辞麗句と大言壮語。両さんじゃないんだから、と一言申し上げておきたい。


夏至

2016年06月21日 09時08分

 ▼昼の長いこの時期になると、子どものころ暗くなるまで外で遊んでいて、親に叱られたことを思い出す。同じ経験を持つ人も結構多いのでないか。日の長さにだまされ、気付くともう晩ご飯の時間なのである。島崎藤村もこの時期がお気に入りだったようだ。随想「短夜の頃」に記している。「まだ私達が眠りから醒めないで、半分夢を見ている間に、そこいらはもう明るくなっていると考えるのも楽しい」

 ▼きょうは一年で最も昼の時間が長い夏至である。いつまでも明るいというだけで、少し得した気分になるから不思議なものだ。そんなちょっとした心のぜいたくを詠んだものだろう。こんな句に目が留まった。「明易やまだ使はずの今日がある」(佐藤節子)。季語「明易し」は夜明けが早いことをいう。早朝に起き出してみると、子どもが真新しいお絵描き帳をもらったときのような幸せと希望が心に満ちてきたに違いない。これも夏の朝ならでは。冬だとまず布団から出たくない。

 ▼札幌管区気象台によると本道の天気はしばらく不安定らしい。いわゆる「えぞ梅雨」なのだろう。こう雨続きのどんより暗い日ばかりでは毎日がたそがれ時のようなもの。せっかく長い昼を堪能できる夏至の風情もいま少しお預けである。それでも農作物にとっては恵みの雨。嫌がってばかりいられない。先日、深川で国道から見た水田の稲も雨の中、青々と輝いていた。「いま充電中梅雨の家に聞くショパン」(黒澤さち)。夏本番がそこまで来ていると思えば雨だれもまた良しか。


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