コラム「透視図」 - 北海道建設新聞社 - e-kensin - Page 206

きょうは立春だが

2019年02月04日 07時00分

 しばれる日が続く。札幌管区気象台の週間予報によると、今週の本道は冬型の気圧配置と低気圧の影響で平年より気温の低い日が多くなる見込みという。暦の上ではきょうが立春だが、本道の冬との戦いはこれからが本番である

 ▼「着ぶくれて世界を敵に回しけり」沼田美山。体の温かさを保つには、寒気の侵入をできるだけ防がなければならない。がっつり着込んで外の世界と隔絶するくらいの気構えは必要だろう。ただ、寒いのも悪いことばかりでない。寒さが厳しいからこそ感じられる喜びもある。温かい食べ物もその一つ。演歌歌手の千昌夫さんも名曲『味噌汁の詩』(中山大三郎作詞作曲)の冒頭でこう語っていた。「しばれるねえ。冬は寒いから味噌汁がうまいんだよね」

 ▼この季節に戸外で飲む熱々のお茶やコーヒーもまた格別である。あと忘れてならないのは、家族や気の置けない仲間と囲む鍋だろう。近頃は野菜も安いようだから、心も体も、ついでに懐まで温めてくれる優れ料理というわけだ。米国中西部がこのところ記録的な寒波に襲われている。ほぼ同じ環境にある道産子としては身につまされる思いだ。われわれが安心していられるのは官民が連携して雪への警戒を強め、機動的な除排雪体制を整えているおかげ。昼夜問わず作業に当たっている方々にはあらためて感謝するばかりである

 ▼「大鍋を囲んでみたき夜がある」五島治人。疲れたときには鍋を囲んで英気を養うのもいい。まだしばらくは冬将軍の強力な攻めが続く。どうか本当の春が来るまで負けないで。健康に、安全に。


戦後最長の景気拡大

2019年02月01日 07時00分

 タヌキは化けて人をだます動物としてつとに知られている。各地に伝承があるが、どちらかといえば少々間の抜けた話が多いようだ。こんな昔話を聞いたことがある

 ▼旅人が山奥で大入道に出くわした。いかにも恐ろしい姿だがよく見ると尻尾がある。察した旅人がさも怖そうに言う。「なんと大きい」。調子に乗った大入道はさらに大きく。旅人が演技を続けるとずんずん巨大化し、ついにはふっと消えてしまった。地面を見ると小さなタヌキが横たわっていて息も絶え絶えに一言。「これ以上は無理」。人もそうやすやすとはだまされない。さて、こちらの大入道はどうだろう。ずいぶんと大きくなったものの、やはり化かされている気がしないでもない

 ▼わが国の景気拡大期間が戦後最長の6年2カ月に達したというのである。政府が29日に公表した1月の月例経済報告で明らかになった。2002年2月から6年1カ月続いたこれまでで最長の「いざなみ景気」を超えたそうだ。つい眉に唾を付けたくなる。円安基調を背景にした貿易拡大や好調な企業収益、高い雇用率などがGDPの成長を支えているらしい。とはいえ伸び率は18年が1.2%(実質)。最高でも13年の2%だから物が飛ぶように売れ生活が一気に豊かになったかつての栄光の日々には遠く及ばない

 ▼消費税や社会保障の負担増が可処分所得を減らしているのも、成長の実感を薄いものにしていよう。待てよ、今回の統計不正で政府機関にはタヌキがたくさん住んでいると分かった。よく見ると成長率にも尻尾が付いているのでないか。


明石市長の暴言

2019年01月31日 07時00分

 一国一城の主であるがゆえの悲哀を描いた菊池寛の短編に「忠直卿行状記」がある。父の死により13歳の若さで家を継いだ越前少将忠直卿が乱心のため家国を失うまでを記した作品だった

 ▼この忠直卿、血筋も良く苦労知らずに育ったせいか、「高山の頂に生いたった杉の樹」のように「我意」が強い。「この世の中に、自分の意志よりも、もっと強力な意志が存在している事を、全く知らない大将であった」そうだ。気に入らないことを見聞きすると狂ったように暴言を吐き、周囲に当たり散らす。家老たちは「癇癪を知っている為に、ただ疾風の過ぎるのを待つように耳を塞いで俯伏しているばかり」だったという。今回の泉房穂明石市長の暴言騒動の報に触れその短編を思い出した

 ▼泉市長は道路拡幅工事に伴うビル立ち退き交渉が進展しないことに腹を立て、報告に来た市の職員に「(ビルに)きょう火付けてこい。燃やしてしまえ。損害賠償を個人で負え」などと口走ったらしい。忠直卿も真っ青である。死亡交通事故も起こる危険な箇所のため、市民の安全が脅かされ続けていることに我慢がならなかったようだ。聞けばこれまで庶民目線の先進的な取り組みを数々進めてきた実力派の市長であるらしい

 ▼いくら「われに正義あり」と思っても、また確かな実績があったとしてもあの暴言は許されない。菊池寛は先の小説に書いていた。家臣は「人間としての人情の代りに、服従を、提供しているだけである」。市長と職員が信頼でなく支配と服従の関係にあるとすれば、これほど不幸なこともない。


若者の活躍

2019年01月30日 07時00分

 おとといはサッカー・アジア杯アラブ首長国連邦大会準決勝「日本対イラン」戦の応援に、テレビの前で熱を上げていた人も多かろう。イランは対アジアチーム公式戦で約6年間、連続39戦負けなし。日本の勝利はかなり難しいとの下馬評も少なくなかった

 ▼ところが、終わってみれば日本が3―0で快勝。予想が外れてこんなにうれしいことはない。中でも堂安律、冨安健洋といった若手選手の活躍が目立っていた。堂安、冨安両選手はチーム最年少の20歳。成人したばかりだが堂安はオランダ、冨安はベルギーのチームで現在プレーしている。2ゴールを挙げた大迫勇也選手は28歳、原口元気選手が27歳。「サムライブルー」は平均約27歳と皆若い

 ▼一般社会ならまだ経験の浅い若造として軽んじられる年齢でないか。その彼らが世界のひのき舞台に立ち堂々と戦っている。意欲と才能のある若者に伸び伸び育つ環境と適切な指導、挑戦する機会を与えたらどれだけすごいことができるかを証明するものだろう。通常国会が28日召集され、安倍首相の施政方針演説が行われた。立ち向かうべき課題として少子高齢化や社会保障、デフレなどを示し各種対策を打つと約束した

 ▼それらも大切だが日本に必要なのはサムライブルーのように若者が存分に輝ける社会をつくることでないか。日本はいまだ多くの場で年配者が幅を利かす。もちろん経験には価値があるためそれは当然のこと。ただ若者にはもっと良い環境や挑戦する機会があっていい。若いスター人材が次々育つ土壌を用意するのも政治の仕事である。


さっぽろ雪まつり

2019年01月29日 07時00分

 雪国に生まれて雪合戦をしたことのない人は少ないだろう。敵味方に分かれて雪玉を投げ合うあの遊びである。ところで札幌にはかつて、それとはやや趣の異なる「雪戦会」という行事があったそうだ

 ▼旧制札幌一中(現札幌南高)で明治から昭和初期まで行われていた。両陣営がそれぞれ雪で堅固な城を築き、旗を奪い合う。激しい肉弾戦が繰り広げられ、雪も柔道着も血に染まったというから生半可な戦いでない。全国的に名を知られた伝統の催しだったが、今では知っている人の方が珍しいのでないか。平和を目指す国にはそぐわないとして、太平洋戦争終戦を機に取りやめとなってしまったのだった。若者たちが力を尽くして競い合うこの「雪戦会」を一つの原点として考案されたのが「さっぽろ雪まつり」である

 ▼1950年2月、大通7丁目広場で市内の中高生らが雪像6基を製作したのが雪まつりの始まり。会期は1日と短かったものの5万人が見物に訪れた。その雪まつりがことし70回目を迎える。先週、大通を横切る際、市民と陸上自衛隊が来月4日開会に向け一心に作業している姿が目に入った。この一大イベントは大勢の縁の下の力持ちに支えられているのだ

 ▼雪まつりは敗戦の衝撃が色濃く残る中、暗い雰囲気を一掃したいとの願いを込めて始められた。本道は昨年、胆振東部地震で土木・建築災害に加えブラックアウト、観光需要減退と幾重もの被害に見舞われた。いまだ傷痕は深い。ブラックに対するにはホワイト。長い伝統を誇る70回目の雪の祭典が復興の足掛かりになるといい。


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