コラム「透視図」

年度替わりに

2016年04月01日 09時23分

 ▼路傍の雪が消え、随分暖かくなってきたと思っていたらもう4月。きょうから2016年度である。新たな挑戦の1年を前に、かぶとの緒を締め直している人もいよう。ことしも年度初めに当たり、道を照らす至言を紹介したい。前に進む一助になれば幸いである。出光佐三「好況・不況があるからこそ人間が鍛錬され、真の経営者となって、事業の進歩がある」。逆境を嘆くよりも活用しろということか。

 ▼渋沢栄一「あまりにリスクばかり気にすると決断がつかなくなり、硬直しきって、弱気一辺倒に流れがちになる」。細心と大胆を調和させることこそ。松下幸之助「成功とは、成功するまで続けること。辛抱して根気よく努力を続けているうちに、周囲の情勢も変わって、成功への道がひらけてくる」。自信を持って堂々と歩みたい。宮本武蔵「何時にても、役にたつやうに稽古し、万事に至り、役にたつやうにしゆる事、是兵法の実の道」。いつでも力を出せるよう準備を怠りなく。

 ▼二宮尊徳「貧者は昨日のために今日勤め、富者は明日のために今日働く」。ドラッカー「問題は、明日何をなすべきかではない。『不確実な明日のために今日何をなすべきか』である」。未来を見ながら今の仕事に取り組む。古今東西の違いはあっても、同様のことを言っているのが興味深い。本田宗一郎「若い人はいいものだ。過去を持たないからいつも前向きの姿勢でいる」。若者こそ未来である。16年度も山あり谷ありだろう。ただ、そこに希望の芽が吹く1年にできるといい。


予算前倒し

2016年03月31日 09時01分

 ▼NHKの連続テレビ小説「あさが来た」をいつも見ている。感心させられるのは主人公あさの先見の明だ。石炭需要が高まる前に炭鉱を買い、金融が広がると見ると両替商から銀行にくら替え。さらには、大阪を恐慌が襲うと聞けば炭鉱を売って銀行の資本を増強し、保険会社の合併を進める。どこまで史実に則っているのかは分からないが、実在した人物がモデルだから、作り話ばかりでもないのだろう。

 ▼時局を読み、先手を打っていく。難しい事とはいえ、会社経営はもちろんのこと、政治や経済の分野でも大切なことである。2016年度予算が29日、成立した。安倍首相は同日開いた記者会見で、予算を前倒しして執行する考えを表明したそうだ。ドラマの中のあさではないが、日本経済が停滞から不況へ転落する前に、先手を打とうということだろう。中国や欧州をはじめとする世界経済低迷の日本への影響を緩和するためにも、機動的な財政運営で体力を強くしていくしかない。

 ▼きょうで15年度は終わりだが、新年度の早い時期からきめ細かな公共事業の発注が始まるのなら、建設産業界にとっても朗報だ。特に本道にとって春先から人と資機材の手当てができるのは経営の安定につながる。安倍首相は会見で、伊勢志摩サミットまでに世界経済の成長に貢献するための追加経済対策も議論していくと語っていた。手をこまねいていたら泥沼にはまりかねない。こんなとき、実在したあさ―広岡浅子ならどんな判断を下したろう。ちょっと聞いてみたい気もする。


衣替え

2016年03月30日 10時13分

 ▼きのう通勤途中にクロッカスの花が咲いているのを見た。春である。今週から本道も、昼間は2桁の気温が常態となりそうだ。そろそろ冬服から衣替えを、と考えている人も多いのではないか。この時期、つい口ずさんでしまうのがキャンディーズの『春一番』(1976年)だ。「泣いてばかりいたって/幸せは来ないから/重いコート脱いで/出かけませんか」。冬服を脱ぐと確かに気持ちは軽くなる。

 ▼衣替えといえばこれもそうだろう。道立文書館別館が北菓楼札幌本館として生まれ変わり、18日にオープンした。同別館は1926(大正15)年に建てられた歴史的建造物である。先週、見に行ったのだが、ジャイアントオーダーを擁する正面は威風ある当時の姿のまま。内部壁面はむき出しの赤れんがとコンクリート打ち放しで、過去と現代がここで出会っているよう。欧州の聖堂を思い起こさせる交差ヴォールト風の白い天井や、東西の壁全面を覆う巨大な本棚にも目を奪われた。

 ▼1階が店舗、2階がカフェと歴史資料室になる。基本デザインは建築家の安藤忠雄氏が担当したそう。役目を終えたかに見えたものに再び価値を与え、未来へつなげる好例だろう。さて衣替えの話題なら最近もう一つあった。こちらは「泣いてばかりいたって」支持が集まらないから、民主党という「重いコート」を脱いだらしい。民主党と維新の党の議員が合流し、27日に民進党を旗揚げした。政権交代の未来へつなげるという。気になるのは衣替えの衣がつぎはぎに見えることか。


いさりび鉄道

2016年03月29日 10時06分

 ▼渡島・桧山地方のおいしい物を数え上げれば枚挙にいとまがない。中でもイカそうめんときたら飛び切りの味覚だろう。透き通った身にコリコリの食感。ほんのりとした甘味。酒のさかなにぴったりなのはもちろん、ショウガじょうゆをかけ、炊きたてご飯にのせて食べるのも格別である。函館に勤務していたころは産地故のぜいたくを楽しんでいた。近所の店で新鮮なイカが手に入るのだからありがたい。

 ▼道南いさりび鉄道開業の報に触れ、そんなことを思い出していた。この地方でいさり火といえば、イカ釣り漁船の集魚灯である。北海道新幹線開業とともにJR北海道から分離され、並行在来線の江差線木古内―五稜郭間で運行を始めたローカル路線だが、この週末の出足は好調だったそうだ。経営を担う道や沿線自治体なども、ひとまず胸をなで下ろしているのではないか。とはいえ真価を問われるのはこれから。経営分離されたローカル線の多くは、苦戦を強いられていると聞く。

 ▼江差線に乗ったことはないが、車では何度もこの区間を走った。澄んだ海に豊かな表情の海岸線、清流、函館山の遠望が殊に美しい。車窓から風景を眺めながら、散歩気分で旅をするには絶好だろう。生活を支える住民の足ではあるが、観光資源としても十分期待できそうだ。「烏賊火燃ゆ沖煌々と一文字」(山口八重)。6月、イカ漁が解禁になると、いさり火が暗い夜の海を明々と照らし始める。道南いさりび鉄道も数多くあるローカル線の中で、輝く存在になってほしいものだ。


新幹線開業

2016年03月26日 09時10分

 ▼本道で官営鉄道の必要が叫ばれていた明治27(1894)年のこと。第4代北海道長官北垣国道と帝大工科大教授田辺朔郎との間で交わされた会話を、作家田村喜子が『北海道浪漫鉄道』(新潮社)で再現していた。北垣の鉄道に懸ける思いを聞いた田辺はこう疑問を投げ掛ける。「一千マイルの鉄道敷設が必要というのに、たった三十五マイルだけの予算を提出するというのは、ずいぶん消極的な話です」

 ▼北垣とて、十分な予算を獲得して一気に事業を進めたかったに違いない。ただ、帝国議会は北海道開拓に鉄道が急務であることを理解できずにいた。北垣は田辺の問いに、こう答える。「三十五マイルはまず手はじめだ。北海道に東西南北の大動脈を通す構想を実現させる突破口といってもいい」。大きなプロジェクトというのは、こうした将来を見通す目と熱意を持った人によって動かされていくものなのだろう。きょうまた一つ新たな突破口が開かれた。北海道新幹線開業である。

 ▼沿線各地はじめ本道は歓迎ムード一色だ。とはいえ無駄遣い、経済効果は薄い、といった批判があるのも事実。それなりに理はあろう。頭から否定するのでなく、成長の糧とできればいい。しかしきょうのところは遊び心も交え、アポロ11号で人類初めて月に降り立ったアームストロング船長の言葉をもじり、北垣長官に連なる道民の喜びを述べておこう。「これは一本の路線としては短い区間だが、北海道にとっては飛躍への第一歩である」。舞台の幕はようやく、開いたばかりだ。


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