ドラマや映画の銃撃戦でよくある場面だろう。頭上をひっきりなしに弾が飛び交う中、一人の男が生きた心地もないまま身を低くして我慢を続けている。その男と最近のサラリーマンがかぶって見えるのはたぶん気のせいでない
▼働き方改革を迫られ、年金はますます遠ざかり、税金は上がるが小遣いは減らされる。家に帰れば妻という厳しい上司が…。これだけ弾が飛び交えば、愚痴の一つや二つ言いたくもなろう。今回も秀逸な「ぼやき」がたくさん集まったようだ。先週、第一生命の「第32回サラリーマン川柳」優秀100句が発表された。作品を見てみよう。「再雇用昨日の部下に指示仰ぐ」白いカラス。定年延長で平社員に逆戻り。「給料もシニア割され半額に」再任用。仕事はあまり減ってないのだが
▼「生産性語る上司の非効率」悦。矛盾に耐えるのがサラリーマン。「休日に働き方の打ち合わせ」きの子。休日返上で働き方改革とは。「会議終え本音を言いに喫煙所」ほのぼの。ここからが本番だ。職場がダメでも家庭があるではないか。「よく切れるスマホの電池うちの妻」みらいむ。自分はさておき妻の充電は欠かすべからず。「母強しいいえ女性は皆強し」人生百彩。困ったときの妻頼み。「家にいて娘と会話ラインにて」ノア。そういえば最近顔を見ていないような
▼読んでいるうちにだんだんと寂しくなってきた。一つくらい喜びにあふれた句はないものか。「大安か上司出張妻不在」喜夢多来。このつかの間の解放感が何物にも代え難い。優秀100句全作品は同社のHPでどうぞ。