コラム「透視図」 - 北海道建設新聞社 - e-kensin - Page 25

元徴用工問題を寄付で

2023年01月13日 09時00分

 ひところに比べればずいぶん減ったが、全滅にはほど遠い状況のようだ。暴力団や反社会的勢力による役所や企業、個人への不当要求のことである。対応に苦慮した経験を持つ人もいるのでないか。要求が通るまでしつこく迷惑行為を繰り返し、脅したりすかしたり。嫌気が差して相手が折れるのを待つ

 ▼今は撃退のための基本的な心得が広く共有されている。毅然とした態度、信念と気迫、冷静な対応の3つである。実際の対応として最もしてはならない行為は、逃げ腰や諦めから暴力団などの言いなりに金品を渡してしまうことだという。解決するどころかくみしやすい相手と甘く見られ、際限なく新たな要求を押しつけてくるようになるそうだ

 ▼暴力団や反社会的勢力などに限らない。不当、不法な要求をしてくる者には、やはり同じ態度で臨むべきだろう。韓国が持ち出したいわゆる「元徴用工問題」もそうでないか。今度は日韓の有志企業から寄付金を募り、賠償を肩代わりさせようとの案を出してきた。日韓併合を最終的に解決する韓国への補償に両国が合意した1965年の日韓請求権協定に、その問題も含まれていたのはご存じの通り。ところが2018年に韓国大法院が日本企業に損害賠償の支払いを命じ、当時の政権もそれを放置

 ▼日本が協定に則り支払いを拒否すると韓国世論は沸騰、関係も悪化した。そこで現在の尹錫悦政権が寄付案を出してきたわけだ。どうしても日本から金と謝罪を引き出したいらしい。脅したりすかしたりである。日本は不当な要求をのまず、毅然と対応したい。


猛威振るう鳥インフルエンザ

2023年01月12日 09時00分

 国境に縛られることなく大空を自由にかけ、自分の行きたい所へ飛んで行く。昔から人は渡り鳥にある種の憧れを抱いていた。和歌や俳句の題材によく使われているのが、その一つの表れだろう

 ▼俳句では秋の季語になる。例えば松尾芭蕉。「日にかかる雲やしばしの渡り鳥」。日の陰りを感じてふと空を見上げると、渡り鳥の群れだったというのである。正岡子規にも「とりつくや日本の山へ渡り鳥」の句があった。俳句は一瞬の風景を切り取って見せるが、和歌には情感の込められたものが多い。古今和歌集に紀友則の一首がある。「秋風に初雁がねぞ聞こゆなるたがたまづさをかけて来つらむ」。雁の声が耳に届いた。いったい何の便りを運んできたのか、というのである

 ▼そんな風情をいつまでも楽しんでいたかった。渡り鳥が運んでくるもので最近多くの人が気にしているのは、鳥インフルエンザウイルスである。国内の感染拡大が止まらない。処分されるニワトリなどの数が過去最多を記録したそうだ。昨年10月に本道の厚真町と倉敷市で発生が確認されてから、異常な勢いで全国に広がっている。農林水産省のまとめによると、10日に宮崎県川南町の養鶏場でも新たに発生が確認され、処分される個体は1008万羽になったという。1シーズンで1000万羽を超えるのは初めてというから深刻な事態である

 ▼どの養鶏場も守りを固めてはいるものの、相手が自由に飛び回る渡り鳥では完璧を期すのも難しい。子規の「とりつくや日本の山へ渡り鳥」も、今は何やら恐ろしい句に聞こえてしまう。


110番

2023年01月11日 09時00分

 困ったときに頼れる人がいるというのは、本当にありがたいものである。先月発表された第31回全国小学生作文コンクール『わたしたちのまちのおまわりさん』(主催・日工組社会安全研究財団など)の入賞作品を読んで改めてそう思わされた

 ▼国務大臣・国家公安委員長賞を受賞した山梨県の山下英大君(小5)の作文である。1歳6カ月のころ、母親の運転する車に乗っていて急に熱性けいれんを起こしたそうだ。母親はすぐに119番しようとするも、あまりに気が動転していてつながらない。泣きながら近くの交番に駆け込み、居合わせた警官に救急車を呼んでもらったという。警官は救急車が来るまで寄り添い、励まし続けてくれたのだとか

 ▼本来の業務範囲を越えて親身に対応してくれる警官は多い。警察案件でなくとも困ったときに、つい頼りたくなる人もいるのだろう。近くに交番がなければ110番となるのは自然の流れ。その110番通報の内、およそ2割が緊急性のないケースだったそうだ。警察庁が10日の「110番の日」に合わせて公表した。それによると全国の警察が昨年1―11月に受けた110番は850万2927件。この19.2%に当たる163万501件が急いで通報するまでもないことだった。「酔って帰れないのでタクシーを呼んで」というものまであったらしい。さすがの警察もあきれたろう

 ▼ただ、中には先の母親のように困り果てて110番に助けを求める人もいる。警察もむげにはあしらえまい。警察相談専用電話「#9110」がもっと広まるといいのだが。


成人の日

2023年01月10日 09時00分

 はた目からは少しの悩みもなく能天気に毎日を過ごしているように見えても、実は心の中で嵐が吹き荒れている。若いころとはそういうものだろう

 ▼佐藤多佳子さんの小説『明るい夜に出かけて』(新潮文庫)にも主人公の青年がこう自問する一節があった。「自分を変えたいかな? どのへんを変えたいかな? ちゃんとしたいって気持ちはあるんだ。でも、どこに向かって〈ちゃんとする〉のか、よくわかんね」。青年は20歳。ある事情で大学を休学し、コンビニでバイトをしながら自分の歩むべき道を模索している。20歳といっても実際は大学や専門学校に通っている人、既に就職している人、フリーターの人、いろいろな人がいよう。ただ、試行錯誤を繰り返し、自分の歩むべき道を探しているところは同じでないか

 ▼「成人の日の眼の澄みや機械工」野村喜舟。きのうは成人の日だった。昨年春の改正民法施行で成人年齢は18歳になったが、この年代の若者が置かれている状況や思いに変わりはあるまい。総務省統計局によると、ことし1月1日現在の新成人は341万人。例年に比べかなり多いのは、対象年齢引き下げの過渡期のためだ。今回は18歳の112万人、19歳の113万人、20歳の117万人を合算している

 ▼全体では多く見えても、個別に見るとどの年齢も総人口の1%を切っているのが現状という。少子化の影響が色濃く出ている。岸田首相は最近、「異次元の少子化対策」を打ち出したが、掛け声だけで終わらせてはいけない。道を切り開く若者がいなければ日本の未来はないのだ。


岸田首相が賃上げ表明

2023年01月06日 09時00分

 デフレとの戦いを大看板に掲げた安倍元首相肝いりの経済政策「アベノミクス」の目標は、前年比プラス2%の消費者物価上昇率を実現することだった。単純な数字だが、具体的な姿を描けなかった人も多いのでないか

 ▼みずほリサーチ&テクノロジーズ・エグゼクティブエコノミストの門間一夫氏は、その具体像を「2%程度のインフレは当たり前という前提で賃金を決める習慣」が定着した社会だと解説していた。門間氏は2%物価目標策定に携わった元日本銀行幹部。『日本経済の見えない真実』(日経BP)で当時を振り返っていた。しかし2%の壁は思った以上に高い。ようやく越えたのは奇しくも安倍元首相が非業の死を遂げた去年だった

 ▼ところがそれは描いた具体像とはほど遠く、原材料や燃料が高騰したことによる物価高。賃金は当たり前に増えるどころか逆に切り下げ圧力にさらされる始末である。岸田首相が年頭記者会見で「インフレ率を超える賃上げ」を表明したのは時宜にかなっていた。とはいえ、素直に喜ぶ気にはなれない。この30年、世帯収入はほぼ横ばいなのに、税と社会保障を合わせた国民負担率は10%増え、2022年には46.5%に達したのである。これではいくら賃上げしても生活は苦しくなるばかり

 ▼しかも首相は新たな財源を問われると決まって増税増税だ。これでは国民からさらに絞り取るため、企業に賃上げを求めていると勘ぐられても仕方がない。長年の懸案を解決しようとの意気込みやよし。ただ、国民のふんどしで相撲を取るのは遠慮していただきたい。


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