旧ソ連でレーニンに次ぐ2代目の最高指導者となったヨシフ・スターリンは1924年から53年までその地位にあった。つまり73歳で死去するまでである
▼在任中に1000万人以上の「反体制分子」を殺害したとされるスターリンだが、34年に行われたインタビューでは恐怖政治についてこう話していた。「人民をおびえさせるだけで十四年間も政権を握ることが可能だと、あなたは考えるのですか。不可能です」。また「独裁者にはならないのか」との問いには、ソ連の指導機関には70人の委員がいると前置きし、「それぞれの人間が審議に参加するからこそ、われわれの決定は多少なりとも正しいものになるのです」と答えている。『インタヴューズ』(文藝春秋)に教えられた。うそをついたのか本気だったのか、いずれにせよ言行不一致も甚だしい
▼中国共産党が国家主席の任期を撤廃する憲法の改正を提案したとの報に触れ、内には全体主義、外には鉄のカーテンを敷いたスターリンを思い出した次第。改正が実現すると2期10年のタガが外れ、習近平主席に死ぬまで最高権力者でいる道が開かれる。共産党一党独裁の中国でもまさか今の時代にスターリニズムのようなことは、と思いたい
▼ただ政敵を排除し、後継者を育てず、言論弾圧を強める習氏の姿勢を見ると、杞憂(きゆう)とも言えない気がするのである。もし習氏にインタビューしたなら、やはり恐怖政治への不安など一蹴するに違いない。ところが毛沢東元首席の例を見ても分かる通り、歴史はそれと逆の答えを示しているのである。