コラム「透視図」 - 北海道建設新聞社 - e-kensin - Page 267

清宮選手が日ハムに

2017年10月28日 07時00分

 あまりにも出来過ぎているので作り話としか考えられない事が世の中にはまれにある。例えば米国の俳優アンソニー・ホプキンス氏のこんな経験

 ▼氏は出演する映画の参考にしようと原作本を買いに行った。ところがロンドン中を探し回ったのに一冊も見当たらない。疲れ果て帰ろうと地下鉄に乗ると、隣の座席にまさにその本が置き忘れられていたという。『「偶然」の統計学』(ハヤカワ文庫)で知った話である。北海道日本ハムファイターズの木田優夫GM補佐が26日のドラフト会議で、早実・清宮幸太郎内野手の交渉権を獲得した。高校生史上最多タイの7球団が競合した指名争いで抜群のくじ運を発揮したのである

 ▼このところドラフトで連敗が続く栗山英樹監督の代役として正式に「登板」が決まったのが前日。スポーツ紙によると、抽選箱に入れる手は友人の明石家さんまさんに助言を受け、利き腕とは逆の左手にしたという。つまり偶然と戦略と運が全てつながった出来過ぎの結果だったのである。一方の清宮選手も日ハムと縁があったようだ。早実中1年だった2012年の日ハム対楽天戦で、始球式を務めていたのである。もちろん偶然だが、清宮選手にしてみれば、ふと気付くと探していたユニフォームが今なぜか横に置いてある、というところだろう

 ▼ペナントレースの不振やボールパーク構想の停滞、大谷投手の大リーグ行きと明るい話題が少なかった今季の日ハムだが、最後に朗報が待っていた。楽しみなのは清宮選手の一軍での活躍である。こちらは偶然に頼るまでもない。


アテネとスパルタ

2017年10月27日 07時00分

 古代ギリシャで覇を競っていたアテネとスパルタの二つのポリス(都市国家)はどちらも軍事強国だったが、体制は対照的だった

 ▼アテネは市民が政治に参加する民主制、スパルタは一部の支配層による全体主義である。主要産業はアテネが商業と貿易なのに対し、スパルタが農業。軍人に求められるものも、アテネでは知恵と勇気、統率力といった英雄的資質なのに対し、スパルタでは規律と忍耐、服従だったそう。両国は数世紀にわたり幾度も交戦したが勝負は決まらない。紀元前5世紀のペロポネソス戦争でようやくスパルタが勝利を得た。ところが喜んだのもつかの間、アテネの貨幣経済と豊かな芸術文化に触れた市民に欲が出て社会秩序が乱れ、国は滅びてしまったのである

 ▼歴史はアナロジー(類推)で考えるべきという。このアテネとスパルタの史実を、今後の米国と中国に当てはめてみるのは乱暴だろうか。習近平総書記が中国共産党の第19回大会で、スパルタのような「強国路線」を打ち出した。習総書記は今後の指針となる政治報告で、中国は建国100年の21世紀中盤までに、「社会主義の近代化強国」として「世界の諸民族の中でそびえ立つ」存在になると宣言したそうだ

 ▼米国との協調も表明してはいるものの、尖閣諸島や南シナ海を見ると強大な軍事力を背景に圏域拡大を狙う野心があるのは明らかだ。武力的な交戦にはならずとも、いずれ自由社会の旗手米国と真正面から衝突することになろう。どちらが勝っても世界の混迷がより深まるだけなのは歴史も証明しているのだが。


やりがいある建設業

2017年10月26日 07時00分

 天分を発揮しやりがいを感じて生きている人は幸せだろう。絵本『天才こども建築家、世界を救う』(エクスナレッジ)は、あらためてそのことに気付かせてくれる

 ▼生まれてすぐ建築の才能に目覚めたイギー君が学校の遠足で島に渡った際、古い橋が崩れてしまう。皆が困っていると彼は有り合わせの材料で吊り橋を作り、無事帰ることができたという話。それを見て先生は思う。「つくることって、たいせつね」。先週の本紙に載った「私たちの主張~未来を創造する建設業~」作文コンクールの国土交通大臣賞受賞3作品を読み、その絵本を思い出した次第。いずれの作文からも、ものづくりに誇りとやりがいを感じ、生き生きと仕事をしている人の姿が真っすぐに伝わってきた

 ▼ジロー・工務店(江別)の大沢仁朗さんはこう書いている。「建設業界はまだまだ人の手が必要とされている。3Kがなんだ。それを上回るほどのやりがいがある」。30歳で大工に生涯を懸ける覚悟を決め工務店を開いたという。矢作建設工業(名古屋)の紀伊保さんは、全ての測量を担当した駅のホームに始発電車が入ってきたとき止めどなく涙があふれ、「俺…、感動している」。工事の完成がたくさんの人を感動させる建設業が大好きだという

 ▼新日本建工(高松)の宮本亜衣子さんは、「親方としてバリバリ仕事をしながら子育てもするという両立は大変なことだろうけど、ものすごくかっこいい」と将来の夢を描く。3人ともやりがいを感じ、心から楽しみ、向上を続けている。今でも、ものすごくかっこいい。


いつか来た道

2017年10月25日 07時00分

 誰でも過去を振り返りたくなることがある。殊に困難にぶち当たったときや、新たな挑戦を始めるのにためらいを感じているときがそうだろう。見慣れた景色、親しかった人を思い出すと騒いでいた心も落ち着きを取り戻す

 ▼北原白秋作詞の「この道」はそんな心情にぴったりの歌である。「この道は いつか来た道 ああそうだよ あかしやの花が咲いてる」。いつか来た道ならば、迷って不安になる気遣いはない。普段の生活でなら時に過去を振り返るのもいいが、政治で同じことをすると国が停滞する。衆院選が終わり各党の議席獲得数もきのう確定したが、野党からは早くも「打倒安倍政権」や「森友加計問題の徹底解明」といった見慣れた景色を懐かしむ声が出ているらしい

 ▼重要課題そっちのけで国政を足踏みさせた、最前までの政治劇がまたぞろ再演されるのかと思うとげんなりである。「いつか来た道」を再びたどるのは簡単だが進歩がない。野党再編でせっかく新しい構図ができたばかりなのに。北朝鮮への圧力強化、憲法改正、消費税の使途変更―。安倍首相は「この道」しかないと公約の実現に突き進むはずだ。安倍政権の信任を懸けて戦った選挙で大勝したのだから当然である

 ▼これに対し野党が相変わらず新たな挑戦をためらい、政権批判ばかりに終始するなら再編の意義は失われよう。ここは正面から政策論争を挑み、「安倍一強」に代わる新たな政治の形を描いて見せるべきでないか。それができなければ、やっと咲いた「あかしやの花」ならぬ当選の花もしおれる一方だろう。


政治家の表札

2017年10月24日 07時00分

 アパートであっても一軒家であっても、自分の家に表札を出さない人はまずいないだろう。しゃれた表札もたくさんあり、素材や書体に自分なりの工夫をこらす人も随分といるようだ。ただ、外に対し名前を明示する点では皆同じ

 ▼石垣りんに「表札」の詩があった。こう始まる。「自分の住むところには自分で表札を出すにかぎる。自分の寝泊りする場所に 他人がかけてくれる表札は いつもろくなことはない」。一夜明け、そのことをまさに実感した人が多かったのでないか。今衆院選を戦った候補者たちである。主義主張をかなぐり捨てて小池百合子代表の家に入り、「希望の党」の表札を掛けてもらった人は、とりわけ骨身に染みていよう

 ▼とはいえ小池代表の「排除」発言だけが敗因だったわけではあるまい。他人の表札を利用していると有権者に見抜かれ、信頼を失ったのである。ふたを開けてみれば自民党が単独で過半数を制する圧倒的勝利。解散当初は誰もこの結末を予想していなかったはずだ。自民党は支持率が低迷しても表札を変えることはなかった。立憲民主党も理念を譲らず筋を通す形で自ら新たな表札を出した。それが選挙で審判を受ける政治家のあるべき姿だろう。表札を見て希望さんの家を訪ねたのに中にいたのは別の人、では有権者をばかにしている

 ▼石垣さんは詩をこう締めくくっていた。「精神の在り場所も ハタから表札をかけられてはならない 石垣りん それでよい」。政治信念の在り場所にさえ自分で表札を掛けられない政治家に、国政を任せることはできない。


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