コラム「透視図」 - 北海道建設新聞社 - e-kensin - Page 337

伊勢志摩サミット

2016年05月20日 08時50分

 ▼ぐずぐずと肌寒い日が続くと思っていたら、今週から急に夏めいてきた。家から見える手稲山の緑も、日ごと頂上に向け勢力を拡大しているようだ。暖かい陽気に万物の命が輝き育つ。きょうから旧暦二十四節気の小満である。「夏めくや水田の水の匂ひして」(植木孝雄)。道内各地では田植えも本格化するころだろう。水田がどこまでも続く風景は、日本が「豊葦原瑞穂国」であることを思い出させる。

 ▼ちょうどいい季節である。本道でというわけにはいかないが、先進7カ国(G7)の首脳たちも「瑞穂国」の豊かな水田風景を目にする機会があるのでないか。26、27の両日、三重県で開かれる伊勢志摩サミットまで1週間を切った。2008年7月の北海道洞爺湖サミットから8年ぶりの日本開催である。最大のテーマは、減速する世界経済を再び成長軌道に乗せること。安倍首相は財政出動を含む提案を用意していると聞くが、各国首脳の足並みはそれほどそろっていないようだ。

 ▼テロ対策、北朝鮮問題、防災。議題は山積みである。風光明媚(めいび)な開催地だけに各国首脳も景色を堪能できればいいが、そんな暇はあるのかどうか。ただ、伊勢神宮訪問は日程にあるそうだ。政教分離原則があるため参拝はしないものの、日本の文化について理解するには良い機会だろう。日本の文化といえば和歌もその一つ。ぜひ覚えて帰ってほしい一首がある。「集めては国の光となりやせむわが窓照らす夜半の蛍は」(長慶院)。G7で集めた英知を、必ず世界の光に。


悪竜退治

2016年05月19日 09時21分

 ▼凶暴な竜を退治する伝説は世界中に数多い。古代ローマにも聖ジョージが悪竜を倒す英雄物語があったようだ。寓話(ぐうわ)集『魔法の糸』(実務教育出版)で知った。聖ジョージは騎士だったのだが、平和な世の中のため活躍の場を見つけられずにいたらしい。国中をくまなく歩いてみたものの、見えたのは畑仕事に精を出す男たちや家事をしながら歌う女たち、元気にはしゃぎ回る子どもたちばかり。

 ▼騎士であることに誇りを持ち、戦いたいのにその仕事はない。聖ジョージもさぞかし困ったろう。今風に言えばアイデンティティーの喪失ということになろうか。元プロ野球選手の彼も、似たような悩みを抱えていたのかもしれない。覚醒剤取締法違反に問われている清原和博被告のことである。17日に東京地裁で初公判が開かれた。検察側は「引退後も注目される存在でありながら、犯行に及んだ」と論告。罪状認否で清原被告は「間違いありません」と、起訴事実を認めたという。

 ▼野球に関しては天才肌で、小学生のころからそれ一筋でやってきたというから、膝の故障でプロ野球の仕事ができないとなればつらかったに違いない。自分の存在に自信が持てない毎日でもあったろう。当然のことだが、それは全く言い訳にならない。ところで聖ジョージはその後、騎士だけができる仕事を見つけるため長い旅に出る。そしてついには、とある国を苦しめていた竜を倒し人々を救うのである。清原被告も心の中に巣くった悪い竜を退治することだ。剣ならぬバットで。


ことばの日

2016年05月18日 08時57分

 ▼洋楽を観賞しているとき、ふとした瞬間から外国語なのに日本語で歌っているようにしか聞こえなくなることがある。そんな錯誤を逆に楽しんでしまおうというのがテレビ朝日の深夜番組「タモリ倶楽部」の「空耳アワー」だ。視聴者が見つけてきた曲を毎回紹介している。例えばマイケル・ジャクソンの「スムース・クリミナル」は英語の曲だが、「パン!茶!宿直」と聞こえる部分があるといった具合。

 ▼同音の言葉の意味を置き換える言葉遊びの一つだろう。「マドンナ」を「まあ、どんな」にする類いである。きょうは「ことばの日」。それでこんなことを思い出したというわけ。ちなみにことばの日も「五、十八」の語呂合わせだ。日本人は昔からこの言葉遊びが好きだったようで、川柳や謎掛け、しりとりはもとより、「着たきり雀」「恐れ入谷の鬼子母神」といった地口もお手のもの。平仮名を1回ずつ全て使い、意味の通る文にした「いろは歌」は遊びの傑作と言ってもいい。

 ▼言葉遊びの名手といえば作家井上ひさしもその一人。英文学者高橋康也が共にバリ旅行をした折のことを随筆に書いている。遅々として進まないバスに皆がいら立ってきたとき井上氏はこう言ったそうだ。「こういうのをセンチメートル・ジャーニーって言うんですね」。一気に場が和んだらしい。昨今は揚げ足取りだ、言葉狩りだ、暴言だ、と言葉の周りがどうにも窮屈だ。井上氏流の粋な一言がほしいものだが遊びの伝統やいまいずこ。これでは「幸福」も「降伏」するしかない。


リーダー論

2016年05月17日 09時11分

 ▼本紙の読者には、経営幹部や部下を率いる立場の人が少なくないだろう。組織をまとめ上げるのに日々頭を悩ませているに違いない。第一生命のサラリーマン川柳に以前、こんな手厳しい一句があったのを覚えている。「社の行く手社長ひとりが通せんぼ」(狂介)。社会経済の状況を読み、手を打ったものの空回り。批判ばかりが聞こえてくる。上に立つ者の苦労は、なかなか理解されないもののようだ。

 ▼書店ではタイトルに「リーダー」と付く本につい手が伸びるのでないか。最近、そのテーマを扱ったある新書が11万部を超えたと聞き読んでみた。アイドルAKB48グループ元総監督高橋みなみさんの『リーダー論』(講談社)だ。今25歳だが、300人以上のメンバーをまとめ上げてきたという。その努力と実践には感心させられた。リーダーという肩書は皆が言うことを聞いてくれるツールでなく「みんなの目を厳しくさせるツールだ」。そんな一言にも強い責任感が垣間見える。

 ▼さて、それでは16万人以上の職員を抱える組織の、67歳のリーダーの責任感はどの程度のものだろう。舛添要一東京都知事が13日、記者会見で政治資金の私的使用疑惑について釈明した。いわく、会計責任者が―、法的には―、単なる間違いで―。弁舌こそ巧みだがどうにも言い訳にしか聞こえない。高橋さんはリーダーの条件にも触れていた。「言っていることと、やっていることを一致させる」。舛添氏なら多分こうだ。「やっていることを、無理やり一致するよう言いくるめる」


発表会には

2016年05月14日 09時00分

 ▼学芸発表会といえば小学校の一大行事である。子や孫の活躍を毎年楽しみにしている、またはしていた、という人も多いのでないか。演劇や合唱、展示。幼い出来だが一生懸命さが胸を打つ。「子がわれかわれが子なのかわからぬまで子を抱き湯に入り子を抱き眠る」(河野裕子)。そんな赤ん坊だった子が舞台で立派に役を務めている。子どもにとっても親御さんらにとっても成長を実感する機会だろう。

 ▼子どもたちが練習に励んだ成果を見ることができるのはうれしい。ところが、相当な練習を積んだのだろうと想像はできても、どこか気持ちの悪さが拭えない発表会もある。つい最近も目にした。北朝鮮の第7回朝鮮労働党大会と祝賀行事の大パレードがそれだ。大会は36年ぶりに開かれたという。金正恩氏の党委員長就任を発表し、偶像化をさらに進めるのが狙いだったらしい。見え透いた筋立てで、小学生には悪いが拙い演劇をやゆする「まるで学芸会」の言葉がぴったりだった。

 ▼金委員長は今回、核保有国であることを殊更強調した。交渉に使えるカードは、もはや核兵器のみと考えてのことだろう。「わらをもつかむ」とはこのことだが非常に危険だ。折しもオバマ米大統領の広島訪問が決まった。計ったのかどうか金委員長の「核武装」カードに対し、「核なき世界」と「日米関係深化」カードで切り返した格好になる。つまり相手にせずだ。手前勝手な筋書きではそっぽを向かれるだけ。発表会には国際社会が拍手喝采するような台本を用意した方がいい。


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