書類の作成や整理、パソコンの操作、自動車の運転など、仕事では常に目を使っています。とくに根を詰めて仕事をこなすと、目に強い疲れを感じるようになります。いわゆる眼精疲労です。
それが積み重なると、肩こり、めまい、頭痛など症状が現れます。下手をすると、高血圧の原因となり、脳卒中や心筋梗塞の危険性が高まります。眼精疲労を侮ってはいけません。しかし、なぜ、目を使いすぎると疲れてしまうのでしょうか?
目は、鼻、耳、舌と同じ感覚器です。感覚器は体の周りの環境の状況を察知して、脳へ伝える役割を持っています。でも、鼻や耳や舌を使いすぎたので疲れた、ということにはなりません。目のしくみだけ特別になっているためです。
実は、目のしくみには、いくつかの筋肉がかかわっています。眼球を動かすための外眼筋、瞳孔を拡げる瞳孔散大筋、瞳孔を縮める瞳孔括約筋、目のピントを調節する毛様体筋などです。
お分かりのように、筋肉は使いすぎると疲労します。目を使いすぎると、これらの目の筋肉に、徐々に疲労がたまってきます。とくに毛様体筋は疲れやすいようです。この筋肉が疲れると、目のピントが合いにくくなり、目がかすんできます。
さらに、目の疲労を解消するために血液が目に集まって充血したり、熱感が出たりするのです。こうした目の状態は精神的、肉体的な負担になるので、顔、首、肩の筋肉の緊張を引き起こし、肩こりや頭痛などを引き起こすのです。
眼精疲労が起こると、仕事の効率は大いに低下します。ですから、疲れを感じたら、すぐに目を休めることが必要です。一番効果的なのは、窓の外の遠くの景色に目をやることです。人の目は遠くにピントが合っているときに、特に毛様体筋が完全に緩む状態になるからです。
また、ピントが合いにくい状態を続けると、毛様体筋はピントを合わせるために緊張し続けることになるので、大きな負担です。合っていないメガネは眼精疲労のもとです。とくに、40歳以降の方は、多かれ少なかれ老眼が進行しています。老眼を矯正しないでいると、目に常に負担をかけていることになります。無理をせず、老眼鏡の使用をお勧めします。中年で血圧が高めのあなた!老眼鏡で血圧が下がるかも!
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)