デスクワークやリモートワークは言うに及ばず、外回りの営業や作業現場、工場内など、仕事のありとあらゆる場面で、パソコン、タブレット、スマートフォンなどの情報端末(VDT)が使われています。したがって、ディスプレーを凝視している時間が非常に長くなっています。そうすると目を酷使することになり、疲れ目、目の乾燥、かすみ、ぼやけなどの症状が出ます。いわゆる眼精疲労の状態となるわけですが、さらに悪化すると目の痛み、充血、視力低下というさらに深刻な症状が現れます。
情報端末を凝視し続けることが原因と思われ、情報端末症候群と呼ばれています。特にディスプレーを凝視し続けると、瞬きの回数が減り、涙が乾燥しやすくなり、目の表面が傷ついて、目の痛み、ゴロゴロ感が出ることもあります。
眼精疲労は目を休めることができれば、いずれ回復するのですが、仕事となれば、なかなか休めることができず、勤務時間中、ずっとディスプレーとにらめっこということになりかねません。さらに、仕事以外でもメール、LINEなどで連絡を取り合ったり、動画視聴や通販などを利用したりして、結局、ディスプレーを一日中見続けている人も多いようです。
そうなると疲労は蓄積し、全身に影響が出るようになります。頭痛、肩こり、めまい、吐き気、さらに高血圧など身体的症状や、倦怠感、イライラ、不安、不眠、抑うつといった精神的症状が現れます。こうした症状は眼精疲労とは印象として結び付きにくいので、気が付かずに不調を抱えている場合も考えられます。
情報端末症候群の予防としては、とにかく、しばしば目を休めて、連続して凝視しないように心掛けることです。目を休めるときは、手元を見ないで、なるべく6mぐらい遠くのものをぼやーっと眺めることです。時間は20秒ぐらいで十分といわれています。
また、目の疲れを取るために、温かいタオルなどを目元に当てることも効果があります。疲れ目用の目薬もあります。特に目の乾燥を防ぐには効果的でしょう。
それでも症状が取れない、出やすいといった場合、眼鏡やコンタクトをつけている人は、それを調整し直す必要があります。老眼を放置しているのもよくありません。全身症状を伴っている場合は、眼科の先生に一度相談してみてください。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)