年度替わりが近づいてきました。卒業、退職、転職があって、送別会が始まります。そして4月になれば入学、就職があって、歓迎会となります。コロナ禍も収まってきましたので、宴会の回数は増えるでしょう。こうした楽しい宴会でも、酔いが回ってつぶれてしまう人が出てしまいます。つぶれる人は、お酒に弱い人、という結論になりがちですが、そうではありません。そもそも、本当にお酒に弱い人は、自分から進んで飲んだりはしないからです。ポイントは飲むペース、スピードです。
一気飲みは一番よくありません。若手が周りにあおられて一気飲みするのは、もうアルコールハラスメント。先輩たちは厳しく罰せられるべきです。若手が進んで一気飲みをしようとすれば、先輩たちは止めなければなりません。自己責任と放置しても、責任はあるのです。大学でもこうしたトラブルは厳しく処分することになっています。
一気飲みは、なぜ危険なのでしょう。これはアルコールの吸収速度と、肝臓での分解速度が関係します。一気飲みをすると、大量のお酒が胃の中に注ぎ込まれます。水分や食べ物と違って、アルコールだけは胃の粘膜から直接血液中へ吸収されます。したがって、血液中のアルコール濃度は一気に上昇し、脳に大量のアルコールが流れ込みます。
肝臓でのアルコール分解は時間がかかり、一気に飲んだ分を分解するのに2、3時間以上を要します。こうなると、酔いは一気に回り、脳の機能は低下し、注意力や判断力はなくなり、意識が低下し、手足が動きにくくなってきます。二回目があると、嘔吐、意識消失など重大な状態になりかねません。
このように一気飲みの行為自体が、非常に危険なのですが、一気に酒を飲むことは強さの象徴のように扱われ、大相撲の優勝力士は大杯のお酒を一気します。そもそも乾杯は、杯を飲み干して、杯を乾かすという意味ですから、一気飲みを奨励しているようなものです。この考え方を変えないといけないのですが…。
宴会後半で、お酒が回って、判断力が低下し、誰も要求していないのに一気飲みを始める人もいます。この場合は、すでに酔っているわけですから、ますます危険です。悲しい事故を回避するため、お互い気を配りましょう。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)