ようやく新型コロナウイルス感染症の流行は収束しつつあります。厚生労働省はマスクの着用について、個人の判断に任せるとしました。しかし、戸外でマスクを着用している人が圧倒的に多い状態です。マスクを着けるか、外すか、迷っている人や、周りの様子を見ている人が大多数というわけです。そこで、改めてマスクについて考えてみました。
マスクは、呼吸するために常に空気を吸い込んでいる鼻腔(びくう)を守るものです。空気中の微細なほこり、粒子を除去します。もし、空気中に細菌が浮遊していても、マスクに引っかかって、鼻腔に入ることはありません。もちろん、鼻だけでなく口も覆われますので、口腔(こうくう)内にこうした細菌が入ることもありません。
細菌よりはるかに大きい花粉は、ほぼ完全に遮断できますので、正しく装着すれば、花粉症の対策法としては効果抜群です。しかし、ウイルスに対してはこうはいきません。
ウイルスは細菌より圧倒的に小さい粒子で、不織布マスクの穴よりウイルスの直径が小さいため、ウイルスはマスクをすり抜ける確率が高くなり、ウイルスの侵入を完全に防ぐことは不可能です。しかし、新型コロナウイルスは感染者が吐き出す飛沫(ひまつ)の中に存在し、ウイルスだけで浮遊することはほとんどないことから、事情は変わってきます。
飛沫自体は不織布マスクの穴より大きく、吐き出された飛沫のほとんどはマスクに捕らえられて、周りに広がりません。また、飛沫周りからかかっても、マスクを通過できないので、マスク越しに飛沫を吸い込むことも起きません。そこで、新型コロナウイルス感染拡大を防ぐ有効な手段としてマスク着用が推奨されたのです。
飛沫が空中を漂っているうちに小さくなり、いわゆるマイクロ飛沫となります。このマイクロ飛沫に対するマスクの防御力は低下します。そこで、マイクロ飛沫を排除するため、換気が重要になります。
結論を言うと、感染者あるいは無症状感染者は、周りの人を感染させないためにマスクが必要です。基礎疾患がある人や高齢者と面会するときは、自分が感染している可能性を考えて装着するべきです。
しかし、現在の感染レベルでは無症状感染者が周りに存在する確率は極めて低いので、換気がよい戸外でマイクロ飛沫によって感染する確率はほぼゼロでしょう。そろそろマスクを外しても、大丈夫ですよ。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)