肥満は体に脂肪が蓄積することで起こります。ただ、脂肪が主に蓄積する部位によって二つの形式があります。一つは皮下脂肪蓄積型といって、体全体に広がる皮膚の下に存在する脂肪組織に脂肪が蓄積するもので、単純肥満とも呼ばれます。もう一つの形式は、お腹の中の腸の周りにある脂肪組織に脂肪が蓄積するものです。この脂肪組織を内臓脂肪と呼ぶので、内臓脂肪蓄積型といいます。いわゆる「ポッコリお腹」になります。
この形式で肥満となることを悪性肥満とも呼びます。なぜ「悪性」と呼ぶのかというと、高血圧や動脈硬化など異変を伴うことが多く、放置すると糖尿病など生活習慣病となり、脳梗塞、心筋梗塞、腎不全など深刻な病気に進展すると考えられているからです。
現在、人が肥満であるかどうかは、BMIという数値を割り出すことで分かります。BMIは体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で計算でき、25以上であれば肥満と判定します。
しかし、その肥満が内臓脂肪蓄積型かどうかは、精密な検査が必要です。そこで、日本において肥満の人の中に内臓脂肪蓄積型肥満がどのくらいの割合でいるのか、調査が行われました。40ないし50歳代の男性153人を調査した日本肥満予防協会によると、BMI25以上の肥満の人の84%が内臓脂肪蓄積型だということが分かりました。
私としては予想以上に多い割合と感じました。BMIが25以上の中年男性なら、内臓脂肪蓄積型と疑った方がいいというわけです。だとすれば、放置すると深刻な生活習慣病になる危険性が高いのです。
同時に、内臓脂肪蓄積型になった人がどのような生活習慣を持っていたのかについて調べています。食事の質が良くなく、日常生活での身体活動が不足しているというのです。
食事の質の悪さは「白米を食べるが玄米や雑穀は食べない」「大豆製品を食べない」「野菜が嫌いである」などです。身体活動の低下は「立ち仕事をしない」「階段を使わない」「家事・掃除をしない」「休日に外出しない」などが指摘されています。
BMIが25以上の中年男性の方、これらの生活習慣に心当たりはないでしょうか。もし、気が付くことがあれば、今すぐにでも改善に取り組みましょう。内臓脂肪が蓄積しただけでは、まだ手遅れではありませんから。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)