説明するまでもなく、皆さんおなじみの米菓、柿の種です。スーパー、コンビニ、どこへ行っても常に多数陳列されています。それも、多くのメーカー製品が並んでいて、味もさまざま、激辛から、やや辛くしょうゆ味が利いているものや、むしろ甘いものまで、驚くべきバラエティーです。ピーナツが一緒に入っているのは、とくに柿ピーと呼ばれて、一つの分野を形成しています。本当に大人気の柿の種です。
用途は、定番のおやつ、そしておつまみです。柿の種がこれほど広がったのは、1980年代にビール業界で起こったドライ革命がきっかけだったとする説があります。ドライビールは、アルコールが濃い目で、苦味はそれほど強くなく、すっきりとした印象です。その口当たりに柿の種が非常にマッチしたとか。
私はドライ革命により、本当の意味でビールに開眼したと言って過言ではないので、もろに影響を受けたグループに属するのでしょう。柿の種はおつまみとして大発展したのです。
世界でも柿の種はスナックとして人気となり、さまざまな国で発売され、売れているそうです。ところが、アメリカ合衆国では売れ行きがイマイチなんだとか。豪快なアメリカ人に、小さな柿の種は、せわしくて合わないのでしょうか?いや、どうも、柿の種がおつまみとして発展したことと関係がありそうだと、私はにらんでいます。
アメリカ人は食事以外でお酒を飲むときに、おつまみというものをあまり欲しがりません。お酒を飲むときは、ひたすらお酒だけ飲んでいます。ビールはのどが渇いたときの水代わりのようです。
一方、パブで地ビールを飲んでいる人は、一気にではなく、チビチビと飲んでいます。ガタイの大きな人がチビチビと飲んでいるのも、ちょっとおもしろい光景でした。このシチュエーションに柿の種の出番はなさそうです。まずは、おつまみ文化を広めるのが先かもしれません。
おつまみに栄養のことを持ち出しては粋ではありませんが、柿ピーは栄養的に有用だと考えられます。ピーナツなどナッツ類は、肝臓に対して保護的に働くと指摘されていて、お酒による肝臓へのダメージを軽減させてくれるといわれています。ならば、ビールのおつまみに柿ピーは悪くありません。ただ、調子に乗って飲み過ぎてはいけませんよ。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)