新型コロナウイルス感染症はかぜの一種であるので、恐れる必要はないと考える人がいます。特にオミクロン株は軽症が多いから、かぜのようなものだという人もいます。ちょっと待ってください。こういう人たちは、そもそもかぜがどんなものであるのか、知っているのでしょうか?
かぜは、正式にはかぜ症候群と呼ばれます。鼻、のどといった息の通り道、これを上気道といいますが、ここに病原体が取り付いて炎症を起こし、鼻水、鼻づまり、くしゃみ、咽頭(いんとう)痛、咳(せき)、痰(たん)、さらに頭痛、発熱といった症状を示す状態を指します。
原因の8割はさまざまなウイルスによるもので、他の細菌などの病原体によるものが2割といわれています。症状は2、3日続くと自然と軽快します。しかし、かぜ症候群の症状は、他のさまざまな疾患でも見られるので、発病した当日には見分けがつかないことが多いのです。
代表的なのはインフルエンザですが、これは発熱が強く出て、全身症状もあり、かぜより長引く傾向があります。高齢者や子どもがかかると、全身状態が悪化して、肺炎を引き起こすこともあります。また、発熱が続いて、かぜだと思っていたら、実はがんや白血病を発症していたこともあります。咳が出て、しばらくしても治らず、喘息(ぜんそく)になったという場合もあります。
昔は「かぜは万病のもと」といっていましたが、かぜと他の病気を見分けるのは、かなり難しいというのが本当のところです。したがって、かぜは軽いものと考えること自体危険なことで、われわれ医師の間では厳に戒められているのです。
こうして考えると、新型コロナ感染症の症状自体は、かぜ症候群に含まれるといえます。しかし、他のかぜ症候群は数日で軽快しますが、新型コロナでは肺炎に進行しやすく、致死率も圧倒的に高いのです。何せ、かぜ症候群だけでは死なないのですから。
というわけで、新型コロナウイルス感染症は、かぜ症候群に含めず、別な疾患として扱わなければならないのです。かぜは軽いものと考えること自体、危険なのです。ましてや、かぜと新型コロナを比べること自体、ナンセンスなことです。コロナはかぜだと言っている人は、むしろコロナ感染の危険性が高いのです。気を付けてください。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)