見えない脅威 コロナに臨む

 国内外で猛威を振るう新型コロナウイルスは、道内経済にも大きな影を落とし先行きは不透明だ。

 本道を支える観光業はインバウンド需要が冷え込み、飲食業は不要不急の外出自粛が響く。農業や漁業は消費低迷の打撃を受けている。その中で建設業は何ができるか。

 長年、地域の経済と安全を支えてきた地方建設業に感染拡大の影響と対策を聞き、見えないウイルスと見えない先行きに備える視線を追った。

見えない脅威 コロナに臨む(1)荒井建設

2020年04月27日 16時00分

事業継続へ対応要項を策定

 旭川市の荒井建設は、国内での新型コロナウイルス拡大の兆しを察知して策定した「新型コロナウイルス対応要領」を基に、2月から全社を挙げて対策に当たっている。「未知の経験で答えがない」と話す現状にあっても、いつ起こるか分からない自然災害から地域を守る建設業として事業継続できるよう「やれることをやる」姿勢を貫く。

 同要領は、新型インフルエンザへの要領が既にあり迅速な策定となった。顧客、社員、協力会社、それらの家族を守るため被害の最小化と会社の社会的機能維持が主眼。2段階制で、現在のレベル1は感染防止を図る第1段階だ。対人距離の保持、手洗い、咳エチケットなど基本徹底で予防に努める。レベル2は感染者発生の状態で、拡大防止策が盛り込まれている。

 同社の取り組みは事業継続における初期対応の重要性を示す。荒井保明社長は、早期対応の一例に道が実施した「緊急事態宣言」を評価。北海道経済は「宣言で打撃を受けたのは確か」と関連企業が温泉地や市街地で宿泊業を営む立場として実感がこもる。「しかし大規模なまん延は防いだ。健康時に事業を中断・縮小するのは心苦しいが、その分立ち直りは早い」と警鐘の有効性を認める。

 「建設業も遅れて今後影響が出る」と気を引き締める。社員の感染、専門業者や資機材の不足、民間設備投資の冷え込み、工事の中断、現金給付支援に圧迫される公共工事と不安は限りない。工事中止が続き先行きが見えなかった終戦時を乗り越えた同社も「終息が見えない面で、過去に例のない恐ろしさ」と警戒する。

 未知の状況下、「自分たちを信じ、地道にやるべきことを早め早めにやるしかない」と話す。今後、地域全体に感染が広がれば要領にはレベル3を追加設定。輪番制の出勤などで「地域の建設会社として機能維持と感染拡大防止を両立する。自然災害に備えた体制維持は最低限していかなくては」と使命感がにじむ。

 現状、建設業の人手不足は変わらないとみるが、「建設業がこの状況で影響が少ない、緊急時にも比較的安定した業種と見なされていけば人が戻る機会にもなり得る。手堅い業種として選ばれていくかはわれわれの努力次第」と困難の先の未来を見つめる。(旭川支社・門間康志記者)

(北海道建設新聞2020年4月16日付10面より)


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