危機感共有、市に緊急要望書
新型コロナウイルスの感染拡大によって、富良野市の基幹産業である観光業に生じた影響が、建設業にも波及している。那知組(本社・富良野)は、市内ホテルの資材庫などを建設する予定だったが、宿泊予約のキャンセルが相次いだことで、建設も先延ばしとなるなど、収束の見えない状況に危機感を募らせる。
国内有数の観光地として知名度を誇る同市だが、国の緊急事態宣言による不要不急の外出自粛、密集、密閉、密接の「3密」回避といった感染防止対策によって、市内宿泊施設は予約のキャンセルが続出している。
民間建築を主体に事業展開する同社は、ことし、市内ホテルで格納庫や資材庫の建設に着手する予定だった。しかし、ホテル側も集客量の大幅な減少によって今後の経営が見通せないといったことから、建設は約1年先延ばしとなった。
個人住宅の建築について平沢幸雄社長は、「自身の勤め先が今後どうなるか分からない中、新たに家を建てようとする人は現れにくいだろう」と負の連鎖を懸念する。
同社は過去、2016年に南富良野町で発生した空知川の氾濫といった自然災害の復旧に携わってきた。しかし「目に見える被害でも復旧には数年かかる」「今後、安全宣言が出たとしても、風評被害などを考えると、まちに元のにぎわいが戻るにはかなりの時間がかかるだろう」と事態の深刻さを訴える。
ただ一方で、事態が落ち着きを見せたときに速やかに事業展開できる体制を構築しておくことが重要と説く。「今回受けたダメージを取り返す責務がわれわれ建設業にはある」とし、これまで官民一体となってまちをつくり上げてきた地元建設業としての使命感がうかがえる。
平沢社長は富良野建設業協会の会長も務めていることから、協会各社との協力体制強化にも臨んだ。市に、公共事業の早期発注や適切な工期設定など5項目を盛り込んだ緊急要望書を提出し、各社が一体となって未曽有の危機に対応する考えを強調した。
「自社も含め、協会員が元気でいることでまちに活気が生まれる」とし、「みんなで痛みを分かち合い、少しでも多くの事業を展開することで地域に貢献したい」と気概を示す。(旭川支社・五十嵐 亘記者)
(北海道建設新聞2020年4月24日付12面より)