明日を見いだす 建設業若手経営者の挑戦

 建設業で30代、40代の経営者が続々と登場している。

 足元では少子高齢化、ITの発展で社会が大きく変化する中、コロナショックの発生で経済は混乱のさなかにある。不透明感を増す新時代を担う経営者たちは、これまでどう歩み、これから何を目指すのか。

 北海道建設新聞は、北海道経営未来塾(長内順一塾長)の協力を得て、同塾で学んだ建設業の若手経営者7人を取材した。連載で紹介する。

明日を見いだす 建設業若手経営者の挑戦(2)イトイ産業 菅原大介社長

2020年06月11日 12時00分

投資の連鎖で恩返しを 地域に足りないもの 事業化し還元

菅原大介社長(42)

 「地域の人からイトイがここにあってよかったと思ってもらえるようにしたい」と話すイトイ産業の菅原大介社長。学生時代から抱く地元に恩返ししたいという思いから、地域に足りないものを補う新事業に投資して、その事業から出た利益をまた地域内に投資する「インベストメント・チェーン」(投資の連鎖)を実現しようとしている。

 同社には2003年に入社。仙台営業所で営業に励んでから、05年に本社の土木部門に所属。現場代理人を務めるが、手探りで作業を進める日が続いた。「大学では土木を専攻したが、現場で学ぶべきことはたくさんあった」。準備が追い付かず、現場に置いていかれる局面もあったが、発注者と先輩に鍛えられ成長した。自身の経験を基に「経験の浅い社員にも、サポートはするからやってみようと言っている」と話す。

 12年には11年に起きた東日本大震災の復旧工事に下請けとして向かった。宮城県の海岸で堤防を新設した。「資材がなかなか入ってこなかった。生コン2m³を手に入れるのに、2カ月前に予約しなければならなかった。緊急性を求められたし、工程管理に苦労した。今までで一番大変だった」。北は北海道、南は沖縄から日本全国の作業員が集結して復旧に当たった。苦労した分、竣工した時の喜びは大きかった。

 14年6月、副社長に就いた。北洋銀行から勧められたのをきっかけに、北海道経営未来塾に申し込み、第2期から参加することに。「ずっと現場にいたし、こういう地域にいると、経営について学べる機会はあまりない」。勉強できる絶好の機会と捉えた。

 社長就任は18年6月。創業70周年、設立50周年となる記念の年だった。本社に配属となった05年から事業を継ぐ意識をし始めていたが、実際に継ぐと「祖父の代から続く会社。感慨深く、誇らしかった」と話す。

 今後の課題として人材不足を挙げる。「量も質も不足している。技術力だけでなく、社会人としての行動をしっかり取れる人間性の育成が大事。そうでないとこれから求められる業界にならない」と強調。「利他の精神を持って。困っている人がいたら当たり前に助けられる人間になってほしい」と思いを込める。

 利他の精神は経営者像にも通ずる。未来塾で学んだ吉田松陰の「地を離れて人なく、人を離れて事なし」という言葉を胸に、目指す姿は地方創生企業。地域に不足しているものを事業化し、その利益をまた地域に還元する。「例えばパン屋さんの起業を支援して、出た利益を今度は自転車屋さんに使う。そうすると、イトイになら仕事を与えてもいいと思ってもらえる」と述べる。

 「昔は地元の人々にお祭りなどでよくしてもらったため、地域に恩返ししたい」と笑顔で話す。社内でのスキージャンプチーム結成も地域活性化につながると考える。「しっかり地元にお金を使うことで、北海道が魅力と可能性ある場所になる」と期待を込める。

(旭川支社・沓沢奈美)

イトイ産業
 本社・士別市朝日町中央4025。創業1948年、設立68年。2018年にイトイ産業と介護事業の北秋、再生エネルギー事業のあんぐらエナジーの3社で構成されるイトイグループホールディングスを設立。グループの資本金は1000万円、従業員数85人。

菅原大介(すがわら・だいすけ)
 1978年5月12日生まれ、旧朝日町(現士別市)出身。東北工大建設システム工学科卒業。2003年にイトイ産業に入社。14年6月に副社長、18年6月に社長に就任した。

(北海道建設新聞2020年6月2日付3面より)


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