明日を見いだす 建設業若手経営者の挑戦

 建設業で30代、40代の経営者が続々と登場している。

 足元では少子高齢化、ITの発展で社会が大きく変化する中、コロナショックの発生で経済は混乱のさなかにある。不透明感を増す新時代を担う経営者たちは、これまでどう歩み、これから何を目指すのか。

 北海道建設新聞は、北海道経営未来塾(長内順一塾長)の協力を得て、同塾で学んだ建設業の若手経営者7人を取材した。連載で紹介する。

明日を見いだす 建設業若手経営者の挑戦(4)小鍛冶組 小鍛冶洋介社長

2020年06月13日 12時00分

未来見据え現場に立つ 人材育成最重視 個々の成長促す

小鍛冶洋介社長(43)

 小鍛冶洋介さんは、オフィスにいない社長だ。スポーツ用品メーカーのミズノと共同制作した紺のユニホームをまとい、時間の許す限り現場に顔を出す。作業状況を知るのはもちろん、顧客や取引先と話して生の情報を得る。一方で10代の新人にも声を掛け、小さな悩みに耳を傾ける。

 明るく丁寧な態度は、相手が誰でも変わらない。「私は社長職のバトンを継いだだけで何も偉くない。取引先や従業員に支えられて事業をやらせてもらっている以上、人を大切にするのが当然」と言い切る。

 社の創業は1948年で、自身は2016年に4代目社長に就いた。だが大学4年までは入社すら想像しなかったという。「祖父の始めた事業だが、父は次男で、私も次男。卒業後は金融機関で働くつもりで就職活動をしていた」。いくつかの面接が順調に進んでいたが、突然、父で3代目社長の卓也さんから入社を求められる。

 学生時代は野球一筋。専攻は経済学で建設とは縁がなく「自分でいいのか」との迷いがよぎった。だが、少年時代、街の工事現場で小鍛冶の文字が入った建設機械が動くのを見て誇らしかった記憶がよみがえった。会社のことを「東北以北最大のトビ・土工集団」と報じる記事を目にしたこともあった。金融業も魅力的だが、建設業なら地元札幌の発展に直接貢献できる。程なく迷いは消えた。

 2000年に入社すると同時に、取引先でもある日立建機に出向。茨城で建機についてゼロから学び、翌年に北海道支社に転勤して道内各地を訪ねた。特別扱いはなく、一人の若手従業員として得意先回り、機械の修理などに明け暮れた。03年に小鍛冶組に戻るが管理部門には行かず、7年間現場で汗を流した。

 専務取締役に就いた10年から、本格的に経営に関わるようになる。当時はリーマンショック後の不況下。さらに民主党政権下で建設業界に逆風が吹き、事業は以前より苦しくなった。採用活動ができず社員が少しずつ減り、総数は50人を割っていた。会社が苦境を切り抜け、長く残るためには何が必要か。小鍛冶さんは、大半が年上の社員一人一人と意見交換した。その中で、「若い人を入れ、個々が成長できる会社にしたい」と信念を伝えた。

 経営者として最重視するのが人材育成だ。社長就任を機に、体系的な若手教育プログラムの「小鍛冶組アカデミー」、資格取得の学習経費助成など、社員向けの策を次々と打ち出した。新卒採用のため専務時代に高校を回り始めたときは反応が薄かったが、こうした制度をアピールするうち、ここ数年は安定的に5―7人が入るようになった。知名度アップと地域貢献を兼ねて野球、スキーなどスポーツの協賛にも取り組む。

 新卒採用に外国人技能実習生の採用も加わり、社員数は今年100人を超えた。業績も拡大。社長就任前に10億円台後半だった年商は、昨年は27億円まで伸びている。

 「一族経営からの脱却」を明確な方針としてうたう。「縁あって入った社員が組織の頂上を目指せないようでは、会社の大きな発展は望めない」。100年目の会社の姿を描きながら、今日もユニホームに袖を通す。

(経済産業部 吉村慎司)

小鍛冶組
 本社・札幌市東区中沼町13、創業1948年、会社設立1966年、資本金5550万円、社員数102人

小鍛冶洋介(こかじ・ようすけ)
 1977年4月21日、札幌市出身。2000年札幌学院大卒、小鍛冶組入社と同時に日立建機に出向。10年小鍛冶組専務取締役、16年に社長就任。

(北海道建設新聞2020年6月4日付3面より)


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